第22話 言い訳と再調査
メリアと街道に出たのち、ダレンの東門まで戻ってきた。何故か、東門には、カルロスや冒険者が多数待っていた。
『帰ってきましたにゃ』
街門に入るときのルールである冒険者カードを門番に見せながら・・・
『ありゃどうなっているんだ。説明してくれ』
カルロスがネオに向かって言った。
『立ち話もなんですから、宿に戻って“あじの干物”食べてから・・・』
『何を言ってる。今すぐギルドまで一緒に来てくれ。すぐにだ!!』
カルロスは真っ青になったまま待機させてあった馬車にネオとメリアを乗り込ませ、自分も同じ馬車に乗ってギルドに向かわせた。
『大丈夫ですにゃ。危険はありませんからにゃ・・・たぶん』
『おい、最後の言葉が気になるんだが・・・』
ネオとカルロスのやり取りを、想像外の出来事から再稼働したメリアは微笑みながら眺めていた。
・・・
『ここでいいだろう、聞きたいものは全員聞け』
カルロスはそういうと、ギルドの酒場で一段高くなっているカウンターに立っていった。
ネオは、カルロスの後ろに立っていた、その横にはメリアも・・・。
(せめて座らせてほしいにゃ・・・)
ギルドの酒場は、即席の説明会場になった。カルロスがそうするほど、街の人々が心配しているのだろう・・・。領主であるダレン伯爵こそいないが、どう見ても伯爵家の人間も来ている。ギルドの職員のほとんどと、こんなにいたのかというほどの冒険者で溢れていた。
『・・・といいことで、ダレンの街は安全ですにゃ』
とにかく、安心させる必要がありそうだったので、細かい話は省略して、
・ワイバーンにはローラシア山脈にある家(巣)に帰ってもらった
・山は、全体が古代遺跡で、外部に対して攻撃するような機能はない
だけ話した。ダンジョンの話とかすると面倒だからである。
『山の頂上が赤く点滅しているようだが・・・』
カルロスが暗くなって気が付いたらしい・・・。
『あれは、山の頂上の位置を教えるための照明で、何も心配はありませんにゃ』
『何故そう言える』
伯爵家の人らしい感じの人が聞いてきた。
『それは、あの山の中にそういう説明が書いてあったからにゃ』
実は、これは真っ赤な嘘である。ネオは、熊本で高い建物についている赤い点滅する照明を見ているから知っているだけである。ここで、そんなこと言っても信じてもらえないだけでなく、ネオ自体が無事でいられるかという問題になってしまうからである。
『ではあれは何の古代遺跡なのだ』
伯爵家が食い下がってくる。
『まだ、全ては解らないのにゃ。周辺を攻撃しないことだけ確認してきただけだからにゃ』
それから、1時間ほど、色々な質問をされたが、何とかダンジョンの話をせずに切り抜け、ようやく解放してもらった。
何とか“海神亭”までたどり着くと、
『ただいまにゃ』
と中に入る。1階にいた全員がネオを見た。
『心配はないのにゃ』
ネオが叫ぶと、大部分の人は、安心したのか、食事や作業に戻ってくれた。
ほっとしていると、服の下の方を引っ張られた。
『まだごはん食べてないんでしょ。席について』
コレットというこの少女は、昨日、ネオがこの宿で最初に話した少女であった。
空いているテーブルに着くとすぐに食事が来た。カレイのような魚の煮つけであった。
『それと、これは宿からのサービスよ』
コレットが隠すように持ってきた皿には、“あじの干物”が焼きあがっていた。
・・・
翌朝、宿に1台の馬車が止まった。中から出てきたのは、カルロスである。朝食中のネオを見つけるとネオに近づき、
『至急、ギルドまで来てくれ』
『せめて、朝食後に・・・』
ネオと同席して朝食を食べていたメリアはそのまま馬車でギルドに連れていかれたのであった・・・。
・・・
『昨日はご苦労だった』
カルロスは朝食中に連れてこられた2人に行った。
『こんなに慌ててどうしたのにゃ』
『実は、今回の件で、首都から調査団がくることになった。おそらく、明日には出発するだろうと思われる。』
『3日後にはダレンに到着するにゃ』
『そういうことだ』
何をカルロスが言いたいのかが解った。あの古代遺跡が何をするものか報告する必要があるということだ。
『昨日は人が多すぎたから、説明してないこともあるのにゃ』
『やはり・・・』
カルロスはネオが何か隠しながら話していることに気が付いていたらしい。
『伯爵からも、今日中に説明に来てほしいと言われている』
『にゃんと!』
『当然だろうが・・・伯爵の領地なのだそ。ここは・・・』
仕方がないので、カルロスに、ダンジョンのことを説明した。
『なに・・・訓練用ダンジョンだと!!』
『ギルドマスターは、ダンジョンのことはご存知ですよにゃ』
『もちろん知っている』
『では、ダンジョンの最奥にあるレベルアップ神のことは?』
『聞いたことがある』
『訓練用ダンジョンは、人間のレベルアップをさせるため、古代文明が作ったそうですにゃ。そして、ダンジョンの最奥にしかいない、レベルアップ神がいるらしいのですにゃ』
『なんだって!!』
カルロスは思わず叫んでいた。ダンジョンの最奥にいるレベルアップ神のところに到達できれば、今までの経験値がレベルに換算されるという仕組みも知っている。しかし、今残っているダンジョンは、今の人間がいくら頑張っても、最奥に到達することなど到底不可能な強さであったのだ。なので、公式には今の人間でレベルアップ神にたどり着いた人間はいない・・・。
『ならば聞くが、ネオ、お前はどうしてレベル15なんだ』
『知っていたのかにゃ』
『当り前だ。冒険者カードにレベルの記録に残るからな』
『レベル1以外見たことがなかったので、信じることが出来なかっただけだ』
『にゃるほど』
『だが、お前は、この街に来た時点で、既にレベル15だった』
『そうにゃ』
『どうしてレベル15になれたのだ』
『ダンジョンでレベルアップしたからだにゃ』
『なに!』
『あるダンジョンの10Fまで行って、レベルアップしてもらったのが今の姿だにゃ』
『信じられない・・・ダンジョンって10Fまであるのか・・・』
『他のダンジョンは知らないにゃ』
初回特典で、各階ごとにいたとはとても言えない・・・。
『で、シメ山にもダンジョンがあるというのだな』
『訓練用にゃ』
どれくらいの実力があれば踏破できるか検討が付くか?
『わからないにゃ』
しばらく、カルロスは考えていたが、
『頼む、今から至急シメ山のダンジョンに入って中の状態と攻略レベル、レベルアップ神の有無を調べてくれ』
『伯爵への説明はどうするのにゃ?』
『俺が何とかする。だから、調査団が着く前に調べてくれ』
『それと、ダンジョンのことは極秘だ。これは、各国の軍事バランスを壊す事件になる可能性がある』
『どういうことにゃ』
『訓練用のダンジョンで鍛えて、レベルアップした兵と、レベル1の兵が戦場で闘ったら・・・』
『にゃるほど・・・』
ここまで黙って聞いていたメリアが、気を失って倒れた。ことの重大さが解ったらしい・・・。
『メリアを連れていきますが、よろしいですにゃ』
『なんでだ』
『俺の相棒だからですにゃ』
『わかった』
初回特典があるかもしれないからとはいう訳にはいかなかった。そんなことが知れたら、きっと大事になってしまう。だから、メリアで試して、場合によってはメリアをレベルアップさせる予定である。
・・・
馬車を走らせ、防具屋に駆け込んだ。
『この子用の防具を一式くれ』
防具屋にあった防具の内、メリアでも装備できそうなものを用意させ、馬車でシメ山に移動する。防具は馬車内で装備した。
『ネオさん。防具だけでは足りないのでは・・・』
メリアはそういってネオを見つめている。アイテムボックスから爬虫類型人型生物が持っていた剣を取り出し、
『俺はこれを使う』
そう言ってショートソードをメリアに装備させた。
『メリアは魔法の適正はあるのか?』
メリアは首を横に振る
『わからない。調べたことがない』
以前、シルバットに聞いた限りでは、適正を持っている人は、なんとなく使えてしまうので、その能力に気が付くと言っていた。だが、中には気が付かず、偶然、適正のあった魔法発動の真似をして事故になることがあるという・・・。
今回、魔法はやめておこう。偶然見つけでもしなければ・・・。
・・・
シメ山の近くは、ギルド雇われた冒険者と伯爵兵士立ちが、立ち入りを禁止すべく、見張っていた。なので、カルロスにネオとメリアに追加調査をさせるという書類を書かせ、それを持ってきている。街道のシメ山に近い場所で馬車を降りると、早速兵士がやってきた
『ここは立ち入り禁止になっている』
『これをどうぞ』
カルロスに書かせた書類を見せる。
兵士は、書類の扱いを相談し始めた。時間がないので、メリアを抱えて、ダンジョンの入り口と思われるとこまで走っていった。後方で何か言っているが、追い付けるわけがないので放っておく。
・・・
土の中から光が漏れているところまで来たところでメリアを少し下がらせ、
『ホーリーボール』
ちょっと気合の入った大きさのボールを打ち込む。
予想通り、周囲の土がはじけ飛んだ。古代遺跡の部分に破損らしきものはない。
(さすが古代遺跡・・・)
見えた入り口にメリアを連れて近づくと、どこからともなく声がした
『ネオ、よくやった。後4か所あるからよろしくね』
(あいつ・・・)
新人の神様である。どうもメリアにも聞こえていたらしい。
『今のは誰ですか?』
『今のが、新人の神様だにゃ』
『ええ~!!』
メリアが絶叫していた。
追手が来ると面倒なので、早速中に入る。
わざとメリアを前にして・・すると・・・
なんだかメリアの様子がおかしい。しばらくするともとに戻った
『ネオさん。急に脳内にファンファーレが鳴り響いて・・・』
『“ダンジョンの封印は解けました”っていわれたんだろうにゃ?』
『どうしてそれを?』
『再開第1号だからにゃ』
予想通りだった。稼働し始めても石板に映るダンジョンに魔物は1体もいなかった。だから、誰か訓練を始めないと出てないと思ったのだ。
最初はゴブリンが2~3体出てきた。メリアには少々きついと思われたので、ホーリーボールで動けなくした後、止めをショートソードで刺してもらった。たいして広くないと思っていたダンジョンは、意外と広かった。
『これで50匹です』
1時間としないうちに50匹のゴブリンを倒した。とんでもない効率である。ただ、このダンジョンの魔物は倒しても魔石は残らなかった。訓練用だからだろうか・・・。
(これなら、魔石目当ての冒険者は来ないな・・・)
2時間後、ようやく、1Fのダンジョンを踏破して2Fに上がる階段を見つけた。ダンジョンのマッピングはしてあるので、こちらも問題ない。少なくとも、アイテムが落ちていたり、ドロップ品が出てきたりすることは1回もなかった。
『150匹も倒しているのに・・・』
メリアは不満そうであるが、これはどうにもならない。
階段に近づいてみると、階段のすぐ前に石像が現れた。
『再開初回特典!!』
変な声が聞こえてきた。
『メリア、近づいてさわってごらん』
メリアが石像に近づくと、メリアの体が光に包まれる
『え、なになに・・・』
しばらくすると光は収まった。
『何か言われなかった?』
するとメリアははっとしながら
『ダンジョン1Fを初めて制覇した勇者よ。褒美にいままでの経験値をレベルに変換してやろう。お前はレベル3になったぞ・・・ハハハ って言われました』
(あの阿保神が・・・)
『それが初回特典という奴だにゃ』
『えっ!!私が貰っていいの?』
『メリア以外、このダンジョンではもらえないと思うにゃ』
・・・
2Fに上がると、スライムとコボルトが出てきた。レベルアップの効果なのか、メリアは1人でコボルトの3匹組も倒している。正直、ネオとしてはマッピング作業しかすることがなくなった。
『メリア、随分強くなったように見えるにゃ・・・』
『はい。今なら盗賊もやっつけられそうです』
(そうかもしれない・・・にゃ)
2時間後、3Fに上がる階段と、石像を見つけた。
『再開初回特典!!』
また変な声が聞こえてきた。
『レベル5になりました』
(これって、俺の時と同じペースだにゃ・・・?!)
・・・
3Fに上がると、ゴブリンとコボルトが出てきた。ゴブリンはさびた剣を握っている。
レベル5になった影響か、剣を持ったゴブリンもコボルドもメリアの相手ではなくなっていた。
『信じられない~!!』
などと言いながらメリアがゴブリンとコボルトを倒している。たった1日だぞ・・・。
(見ている方が信じられない~っていいたいにゃ)
3Fは思ったより狭かった。
少し広いところに出たと思ったら、
ゴブリン、スライム、コボルトが横一列にならんでいる。
『ダンジョン卒業試験!!』
新人の神様の声が響いた。
(あいつ、ふざけてんのかにゃ)
3体はボスキャラらしく、今までより動きが早かった。メリアも結構苦戦している。が、最後は3体とも袈裟がけで倒してしまった。
3体を倒した後、石像に近づいたメリアを光が包んだ。次に瞬間、メリアが消えた、
『あっ!』
思わず声を上げてしまった。そう、ダンジョンをコンプリートすると、ダンジョンの外に飛ばされたのを思い出した
(そんなところまで同じなのかにゃ・・・)
しばらく様子を見ていたが、5分もしないうちに3体は復活した。3体に近寄ってみると、いきなり攻撃をしてきた。ちょっと後ろに跳ねて、
『ホーリーアロー』
『ホーリーアロー』
『ホーリーアロー』
矢3本で始末した。慌てて石像に近づくと、体が光に包まれる。
『レベルアップ対象ではありません。』
(ええ~)
気が付いたら、ダンジョンの入り口に倒れていた。横を見ると、メリアがまだ倒れている。
『10歳とは思えないなあ~』
などとつぶやいていたら、メリアの顔が赤くなっていくのが解った。
『気が付いていたにゃ・・・』
『だって、うれしかったんだもん~!!』
そう言って俺に抱き着いてきた。
(やっぱり、まだ10歳だった・・・)
・・・
結局、街道に出たときには、兵士たちにも事情が通っていて、帰りの馬車まで用意されていた。あまりに疲れていたので、そのまま”海神亭”にいってもらい、ギルドには明日報告するということになった。
メリアのレベリングが成功・・・でもメリアが最後レベルがどこまで上がったんでしょう・・・。
次回は9/3の予定です。




