第163話 収納袋大作戦
結局、ゴンドアの輸送問題が解決していなかったので、この世界なりの解決をすることにしました。
『シャールカ様!』
今日も、サマランドの王宮にセバスチャンの声が響く・・・。
『今日は何だ?!』
恒例行事と化した出来事に、少々飽き気味に答えるシャールカ・・・。
『大陸内の輸送が限界です。何か早急に手を打たないと・・・』
『またそれか・・・』
セバスチャンの訴えに頭を抱えるシャールカ・・・。トラックは安全保障上NGと決めたシャールカに打つ手がなかった。
セバスチャンに答えようがないシャールカはサマランドの王宮に逃げ出し、サマランド空港からプリンセスシャールカ号に乗って離陸・・・フライトプランも入れずに離陸したプリンセスシャールカ号は、ラオカ空港に向かって飛んでいた。
(困った時のネオ頼み・・・)
プリンセスシャールカ号は、ラオカ空港に無事着陸。シャールカは、空港職員に後を任せ、ラオカ村に駆けていった。
・・・
『誰か走ってきますねえ~』
『そうだにゃ~』
『あんなことをするのは・・・』
『一人しかいにゃいにゃあ・・・』
砂煙を巻き上げ、空港から街道も無視してラオカ村に爆走する人をメリアとネオは眺めていた。やがて、
『ネオ~!メリア~!』
ネオとメリアにとって聞きなれた声が聞こえてきた。そして、2人の予想通りの人物が目のまえに現れたのである。
手を振って近づいてくるシャールカに
『また、仕事から逃げてきたにゃ』
ネオは容赦なく言いきった。
『ネオ。せっかく訪ねてきたのに、そんな言い方はないと思うぞ』
シャールカは頬を膨らませ両腕を腰に据えている・・・が、どう見ても本気で怒っているようには見えない。
『まずは、部屋に入ってから・・・』
メリアに促され、ネオをメリアの家に入っていくシャールカであった。
・・・
発酵させて、紅茶みたいな感じにしたお茶と、ジャガイモを薄くスライスして水洗いし、油で揚げたお菓子・・・ポテトチップスもどきを嬉しそうに飲食するシャールカをネオをメリアは眺めながら
(こりゃ・・・かなり重症かも(にゃ))
ストレスいっぱいのシャールカを、残念なものを見るような目つきで見ているのだった。
『で・・・なにがあったんですか!』
メリアの一言に、シャールカのポテトチップスもどきを食べる手が止まる。メリアは、子供を叱る母親のようにシャールカを見つめた。
『実はな・・・』
シャールカは、大陸の輸送システムが限界近い状態であることをネオをメリアに伝えたのだった。
しばらくの沈黙の後、
『にゃあ・・・確かシャールカは収納袋を持っていたはずだにゃ?』
ネオが思い出したように言った。デコルのダンジョン3Fで使っているのをネオは思い出したのだった。
『あっ!』
シャールカは何か思い出したように自分の収納袋から魔石を取りだした。ヒャッケラキアの魔石である。おそらく、デコルのダンジョンで手に入れた魔石だと思われるそれを手に持って、
『すっかり忘れてた』
とヒャッケラキアの魔石を眺め始めた。
(こいつ、収納袋にいつもダブレットを入れていたはずにゃ・・・どうして、収納袋の存在を忘れていられるのにゃ?)
『その収納袋を沢山作れないのかにゃ』
ネオはシャールカに向かって言った。
『収納袋は本部の生産ユニットに製造ユニットがあった。1枚/日くらいなら作れるぞ・・・但し、魔石はそれなりに必要だが』
『だったらそれを商人に売り出して、輸送時に使わせたらよいのではないでしょうか』
メリアが常識的なことを言った。
『いや。それは出来ない。収納袋は物を隠しておくことも出来る。商人に対して税を課している街は多い・・・というよりほとんどだ。その中身がわからなくなるということは、街の徴税に重大な支障をきたすのだ』
シャールカが急に真面目に話始めた。どうやら、彼女なりに考えた上で、意図的に収納袋は普及させていないらしい。
『コンテナを用意して、BE36に収納袋を装備させて、このコンテナを積みこめばいいのにゃ』
『コンテナ?』
『何だそりゃ?』
ネオの言葉に、メリアは不思議そうに首を傾げ、藁にもすがりたいシャールカはネオに身を乗り出した。
『熊本空港にいたときにゃ。飛行機の中から銀色の箱が何個も出てくるのを見たことがあるのにゃ。それをコンテナというのらしいのにゃ。決まったサイズの頑丈な箱で、その中に荷物を詰めて飛行機で運んでいたのにゃ』
ネオの説明を聞いていたシャールカは
『つまり、同じ大きさの箱を沢山用意して、輸送したい荷物を商人たちに詰め込めせ、空港でBE36に設置した収納袋に入れて運ぶのか?』
確認するようにネオに言った。
『そうにゃ!』
胸を張りながら自慢げに答えたネオに
『なんでいままで黙っていた!』
シャールカは、問題のあっけない解決方法を知って、ネオに八つ当たりをし始めた。
『いままで、忘れていたのにゃ』
なんでシャールカが怒っているのか理解したネオは、思わず言い返したものの・・・
『ネオさん。もう少し早く思い出してほしかったです・・・』
メリアの一言を聞いてガックリと項垂れた。
・・・
飛行訓練センターの格納庫を使って、BE36に収納袋を設置する工事は順調に進んだ。と同時に、本部ユニットが作成し、シャールカから世界各国に配布されたコンテナの図面をもとに、各国は規格に合致するコンテナを作り始めた。そして、コンテナはそれを必要とする商人に販売され、コンテナの輸送に適したように、改造された馬車の生産も始まった。結果、各空港には、商人達が輸送を希望する荷物が積まれたコンテナが山積みされることになり、それを受け取った、空港職員がBE36の収納袋に行先別に積んでいくことになった。コンテナ輸送が始まって1ヶ月もすると、各空港の搭載待ち貨物はほぼなくなり、毎日、定期的に飛ぶBE36によって、全て遅延なく運ばれるようになった。
(なんで・・・こんな簡単に解決してしまうの・・・あんなに困っていたのに・・・)
シャールカの納得しきれていない気持ちを秘めながらも、問題が解決したことにほっとしていた。
(これで、民に腹いっぱい飯が届けられる・・・)
そして貨物輸送に余裕の出来たBE36の一部は、人を乗せて各地で輸送を始めた。
『シャールカ様!』
今日も、サマランドの王宮にセバスチャンの声が響く・・・。
『各地から空港設置の依頼が再び殺到しています!』
BE36での大量輸送が出来てしまったことにより、生産拠点を抱える街が、再び空港の設置を陳情してきたのだった。
次は・・・あるのでしょうか・・・。
新しい小説を書く予定なのですが、中々進んでおりません。
(作者が怠惰なだけともいう・・・)
JA4169は、今日も元気に熊本で飛んでいます。
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