第16話 ダンジョン9Fと10F
ダンジョンの章最終回です
『ふぁ~よく寝たにゃ』
何か同じことを言っているような・・・気がしたにゃ。何日も経つはずにゃのに、どういう訳か、腹も空かなければ、のども乾かない。どれくらいの間眠っていたのかもよくわかっていなかった。
(とにかく、終わらせるのにゃ)
休憩所を出ると、すぐそばにある階段を降りていった。
・・・
9Fは何もない空間であった・・・いや、正確には、人が一人立っており、その隣には机がある床は一面、謎の鏡面仕上げされた何か、壁はなく見渡す限りのどこまで続いているか解らない空間に見えた。
(どう見ても、あの人のところに行くしかないにゃ・・・)
ネオはゆっくり近づき、声をかけようとしたとのとき、
『よく来た。今から試験を開始する!』
『はにゃ?』
次の瞬間、火の玉が飛んできた。慌てて右に跳び避ける。
『私を倒さないと10Fには行かす訳にはいかない』
よく見ると、ローブのようなものを着た見た目30代くらいのおじさんである。
『にゃらば・・・倒すまでにゃ』
『ホーリーボール』
とりあえず、ローブ男に放ってみたが、あっけなくよけられてしまった。
『この程度では・・・』
ローブ男が何やらぶつぶつ言っている。
(普通に攻撃してもダメそうだにゃ・・・)
『ホーリーアース』
ネオは自分の目の前に壁を作った。少し横にずれてから同じように壁を作る。
ローブ男は、相変わらず、ファイアーボールやファイヤーアローをネオに向かって放ってきたが、十分躱せるものであった。だが、ネオの攻撃もローブ男に簡単に躱されてしまう。このままでは埒が明かなかった。
『・・・これでよしっとにゃ』
壁でローブ男に見えないところで穴を掘っていた。ローブ男が動かないのを確認した後、3Fで手に入れた剣(爬虫類型人型生物が持っていた剣)を手に取り、走りながら、やや上目掛け、
『ホーリーアロー』
を3つ放った。
3本の矢は大きく弧を描きながらローブ男の周囲に落ちていく。その間に、ネオは接近していった。
『覚悟にゃ!!』
そう言って、ローブ男に切りかかったが、あっけなく避けられた。
『その程度でやられることはない』
ローブ男は余裕があるのかネオを見ながら笑っている。
ネオは、それでもかまわず、
『ホーリーアロー』
を打ちながら、ローブ男を壁のある方向に行くように追っていく。
『壁に追い詰めるつもりだろうが、この程度の壁は簡単に超えられるぞ』
そういいながら、矢を避けているローブ男・・・。壁まで来たところで、軽く飛び越えて見せた。飛び越えた先に掘ってあった穴に難なく着地したのであった。
『ホーリーアース』
ネオは、矢を打つのをやめ、土壁でローブ男を囲った。
『ハハハ・・・この程度閉じ込められるわけがないだろう・・・』
そういいながら、ローブ男が天井を突き破った瞬間。
『ホーリーウインド』
三日月の刃はローブ男を襲う、空中に跳躍したタイミングだったため、よけきれず、ローブ男は上半身と下半身に分離した。
『ホーリーアロー』
ネオは続けざまにローブ男の上半身めがけて矢を放つ。心臓に矢が突き刺さった。
『合格だ』
男はそれだけ言い残すと、消えてしまった。
『魔石がにゃい!』
いなくなった後をネオが探しても、魔石は見つからなかった。
慌てて周囲を見渡すが、何もない。
(合格っていってたにゃ)
・・・
しばらく警戒していたが、何も出てこない。このフロアには、机があるだけである。仕方がないので、見に行ってみると、1枚の紙があった。
=合格証書=
あなたは、ダンジョン9Fの試験に合格したことを証明します。
10Fの土竜への挑戦を認めます。
新人の神
(なんにゃ?)
新人の神様が書いたもののようであった。
ネオが紙をとろうとしたとき、突然、紙が燃えだし、灰も残さず消えてしまった。
『神だけにかみはやらん』
どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
(何言ってるんだかにゃ!!)
『10Fへの階段を開いたよ・・・あと少しだよ!!』
新人の神様の声がネオに聞こえてきた。
・・・
8Fへの階段の対角の位置に10階に降りる階段はあった。
(気に入らないが、さっさと終わらせようにゃ・・・)
ネオは階段を降りていくと、そこは広い草原のようなところだった。
(あれが土竜かにゃ・・・)
視界を遮るものがないところに、明らかに巨大な物体はそこには居た。どうやら“もぐら”ではないらしい・・・。非常に小さいが翼がついており、どちらかというと、翼が退化した竜といった感じである。
(大きすぎて、穴を作っても効果は無いにゃ・・・。おまけに鱗が頑丈そうで、剣も魔法も通りそうにないにゃ・・・)
そんなことを考えていると、突然、土竜が潜り始めた。
(もぐらだったのかにゃ?)
地面が揺れる。その振動がだんだん大きくなってきた。地面が膨らんだ瞬間、ネオは左に跳ねた。直後に土竜が、ネオのいたところから口を開けて飛び出してきた。
(タイミングを間違ったら奴の胃の中だにゃ・・・)
ネオはどうしようかを考えているうちに再び、土竜が潜り始め、土の中から接近してきた。
(ワンパターンみたいだにゃ)
地面が膨らんだ瞬間、再びネオは跳ねた。が、今度は、土竜が掘った穴の方に跳ねた。ちょうど、土竜が掘っていったあとは、陥没していたので、土竜が飛び出した瞬間、やや下からの角度で狙い撃ち出来る状態であった。
『ホーリーボール』
あまり威力の無いホーリーボールが土竜に当たるが、鱗に遮られ、ダメージはなさそうである。
一方、土竜は、攻撃されたのが面白くないのか、すぐにネオの方に向かって土の中を掘り進んできた。
(呆れるほどのワンパターンだにゃ)
地面が盛り上がってきた瞬間、ネオは後ろに跳んだ。直後に飛び跳ねる前にネオがいるころに土竜の口が襲い掛かる。その時、
『ホーリーウインド』
土竜の腹めがけて、威力最大の攻撃をかけた。貫通はしないものの、土竜の腹に大きな傷が出来た。土竜は我を忘れて、ネオに向かって突進している。掘り進むのは辞めたようだ。
右に跳ねたネオは土竜の目を狙って
『ホーリーアロー』
を打ち込む。土竜の左目に命中した矢は土竜の左目を潰すことに成功した。痛みを感じるのか、土竜が前脚で目を抑えてのたうち回っている。
チャンスとばかり、土竜の腹に向かって
『ホーリーアロー』
を連打していく・・・。
3発受けたところで土竜は起き上がる。残った右目でネオを捕えると、突進してきた。
『ホーリーアース』
ネオは土竜の手前に土竜の脚の高さ半分くらいの壁を作った。
(うまくいくかにゃ~)
我を忘れていた土竜は、ネオの作った壁に前脚をひっかけてしまい、そのすぐ先にあった自らが掘った陥没個所にひっくり返った状態で倒れてしまった。
(うまくいった!!)
『ホーリーウインド』
『ホーリーアース』
『ホーリーウインド』
『ホーリーアース』
『ホーリーウインド』
『ホーリーアース』
と立て続けに腹に攻撃した結果、土竜の腹は内臓がむき出しの状態になった。
(なかな死なないにゃ)
のたうち回っている土竜の首めがけて、
『ホーリーウインド』
を放ったところ、首の鱗のない部分に命中。首が半分とれた状態になり、土竜は動かなくなった。
(終わったかにゃ・・・)
ネオが確かめようとし近づいたその時、土竜の前脚がネオに向かって飛んできた。
(まだ生きてたにゃ・・・?)
慌てて左に避けると、
『ホーリーウインド』
を土竜の首めがけて放つ。
今度は、土竜の首が完全に胴体から離れた。
(今度こそ大丈夫にゃろ・・・)
・・・
土竜は魔石を残して消えていった。
(でっかい魔石だにゃ)
ネオが魔石を回収したとき、どこからともなくファンファーレが鳴り響いた。
『ダンジョン踏破おめでとうございます。初回者特典をドロップします』
土竜のいたあたりに、大きな鱗が落ちていた。
(よくわからにゃいが、回収しておこう)
ネオは鱗をアイテムボックスにしまったとき、目の前に見慣れた石像が現れたのを確認した。
ネオは光に包まれた。
『ダンジョンを初めて踏破した勇者よ。褒美にいままでの経験値をレベルに変換してやろう。お前はレベル15になったぞ・・・ハハハ』
最後は謎な笑い声と共に、レベル神と思わる石像は消滅し、ネオを覆っていた光も消えた。
『これでチュートリアルは終了じゃ。石像のあったところを掘ってアイテムを回収しなさい』
ネオは石像のあったあたりを掘ってみると、土の中からボタンのようなものが現れた。
『それを押すのじゃ』
言われるままにボタンをネオが押すと全てが光に包まれた・・・。
・・・
ネオが目を覚ますと、そこは、ダンジョンの入り口であった。どう見ても夜である。
(地上に戻ってきたんだ・・・)
アイテムボックスを開くと、そこには、ダンジョンで手に入れた剣とたくさんの魔石があった。
(夢じゃなかったのにゃ・・・)
急にのどが渇いたネオは、崖の上にある井戸に行こう崖を上り始めた。ちょっと足に力を入れて、飛び跳ねると・・・。
(にゃんと・・・?!)
ちょっと跳ねたつもりが、一気に崖の上まで飛んでしまった。
(レベル15って凄いんだにゃ・・・)
・・・
ウォーターマウンテン(村)の井戸で水を飲んだネオは、もう一度、3人の墓に向かった。
(また来ちゃったのにゃ・・・。強くなったみたいにゃ。これから旅に出るにゃ)
そう心でつぶやくとそのまま集落を迂回するように街道に出た。
(今からロディアに行く気もしないからにゃ・・・)
ネオは西に向かって歩き出した・・・・。
次回は8/29の予定です。