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ネオー間違って異世界に送られた猫  作者: OPPA
第14章 後日談・・・
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第155話 サマランド空港名物ゴンドア航空局ビール

サマランドのお話がないので追加してみました。

『シャールカ様!』

サマランドの王宮にセバスチャンの声が響いた。もはや、恒例の出来事なので誰も気にも留めない。

『聞こえているぞ』

シャールカも毎度のことで、あまり気にしなくなっていた。


『サマランドの民から不満が出ております』

セバスチャンから意外な発言があった。大増産した麦は、BE36を使って大陸中に販売されているため、量が倍増したにもかからず、価格は維持できていた。つまり、収入が2倍になったのである。当然であるが、人々の生活は豊かになり、結果、魔道具の販売や服などの生産、販売も飛躍的に伸び、国内は明らかに豊になっていた。魔物の肉は供給がほとんどなくなったが、オスニア国から共有される肉や乳製品がその代わりとなり、人々の暮らしを支えていたのである。


『どういうことだ!』

シャールカは、読んでいた書類から目を離し、セバスチャンに睨むように見る。


『人々は豊になりました。オスニア国では酪農と胡椒、インゴニア王国では野菜と調味料、アントラニア王国ではジャガイモとトウモロコシ、ロディア国ではニジマスが現れたと聞いています』

セバスチャンはそう言って、息が苦しくなったのか、一旦言葉を切った。


『それは間違いない。皆、頑張ってゴンドアを豊にしてくれているぞ』

シャールカには何か問題があるようには思えなかった。むしろ、ロディア国にニジマス以外にはラオカ村の大農場(ネオとメリアの農場)くらいしかないことを気にしていたくらいである。


『新生ゴンドア・・・旧バルディカ領には、新しいものがございません』

セバスチャンは力の限り声をだしたらしく、その場にへたり込んでしまった。


(ああ・・・なるほど・・・確かにな・・・)

シャールカはようやくセバスチャンの言いたいことが理解出来た。麦の大増産には成功したが、他の国のような、今までなかったもの・・・新時代を感じる新しいものがこの地域だけなかったのである。

『サマランドに何か新しいものが欲しいというのだな』

『左様でございます』

シャールカの言葉に、返事をするセバスチャンであった。


『解った。何かないか探してみよう』

そう言うと、シャールカはダブレットを取り出した。


・・・


シャールカの持っていたタブレットは、ゴンドア王国の本部に保管されていた、生産ユニット、建設ユニットの情報が追加されていた。生産ユニットでは、ゴンドア王国が繁栄していた当時の色々な生産ユニットが保管されていたのである。しかし、今の時代には、あまりにオーパーツ過ぎて公開出来ないものでもあった。

(本部の生産ユニットを一部でも稼働させてみるか・・・)

生産ユニットは、時間と動力さえ確保できれば、大陸のどこでも同じコピーを建設ユニットによって作ることが出来るとのことであるのだが、サマランドには、動力となるものがない。魔石を大量に消費することで代替することは出来るが、数が増えてしまったBE36の燃料生産に回しているため、そのような余裕はなかった。


それでも、何かないかとリストを見ていくシャールカ・・・。ふと、ある装置に目が止まった。それは、僅かな魔石で動く生産ユニットで、単独でも存在できるものだった。

(これはお父様を思い出す・・・)

シャールカの父が好きだったお酒・・・ビールの生産ユニットであった。これは、基本的に麦を原料とするため、サマランドには最適である。今もこの世界にはエールがあるのだが、シャールカは、昔、父が言っていた言葉を思いだす。

『このビールという酒はな、ホップというものを混ぜることで独特の苦味が出て最高に美味いのだ』


シャールカは、今でこそ酒も飲むが、炭酸ガスの入ったお酒に当時は興味がなかったため、気にもしていなかったのである。ちなみに、ホップは、ローラシア山脈の西側に生えている野草の実であり、地元では、パンに混ぜて食べていたこともあったそうだったのだが、最近では誰も見向きもしないと聞いていた。


(麦とホップを使ってビールを作るか・・・父が喜びそうだな)

シャールカは、本部からヘリコプターをサマランドに派遣するように指示するのだった。


・・・


『シャールカ様。ようこそおいでくださいました』

司令ゴーレムの出迎えを受け、呼びつけたヘリコプターで本部に降り立ったシャールカは、生産ユニットの保管エリアに向かった。そして、ビールの生産ユニットは程なくして見つかったである。どうみても、目立つところに置いてあるそれは、彼女の父が、何か誘導させているのでは感じさせるほど、不自然に目立つように置かれていた。


『この生産ユニットは初めからここに置かれていたのか?』

司令ゴーレムに確認すると


『先王様(シャールカの父)からのご指示で、1台コピーしてあった物です』

よく見ると、シャールカが見つけたビールの生産ユニットは、転移魔方陣の上に置いてあった。


『先王様からは、設置場所が決まり次第連絡すると言われ、転送先に設置する魔方陣も用意していたのですが・・・』

司令ゴーレムはここで言葉を詰まらせた。


『転送する前に異界の神に乗っ取られたのか?』

シャールカの言葉に、

『はい・・・申し訳ございません』

司令ゴーレムが小さな声で答えるのだった。


よく見ると、大きさ的には決して大きくない。どんなに頑張って生産しても、1日100リットルも作れるかどうかというくらいである。

(これは、父が自分用に作らせたのかもしれない・・・)

ビールというお酒が好きだった父ならあり得ると思っていたシャールカであった。


・・・


シャールカは既に用意されていた転移先に敷く魔方陣を受け取って、収納袋にしまったシャールカはサマランド空港に戻った。ヘリコプターなので王宮でもよかったのだが・・・あえて空港にしたのである。出迎えたゴンドア航空局の職員に、

『食堂に設置するものがある。付いてこい』

そう言うと、ターミナル2Fの食堂エリアに移動した。


(ここは空き家か)

食堂のエリアに何もない・・正確には、テーブルと椅子は奥にまとめて置いてあった。シャールカはその空間の存在・・・使われずに放置されている状態に愕然としていた。サマランドの空港は麦の出荷と他国からの輸入貨物の取り扱いが主であったため食堂の需要はなく、使われていなかったのである。それでも、護衛用のゴーレムは配置され、調理スタッフのゴーレムも3体あったのである。


(このゴーレムが使えないかな)

そんなことを考えつつ、厨房予定地の一角に魔方陣を敷いた。その様子を黙ってみているゴンドア航空局の職員に、


『よいか、今から生産ユニットを1つここに持ってくる』

そう言うと、魔方陣に魔石をセットした。


1分後、ビールの生産ユニットが転送されてきた。その姿に驚くゴンドア航空局の職員に、調理スタッフのゴーレムを1体起動させるように指示すると、装置を覗き込んだ。

収納袋に入れてある魔石を生産ユニットにセットすると、自動的に動き出した。どうやら、セルフチェック機能があるらしい。


『シャールカ様。ご命令を』

振り向くと、調理ゴーレムが頭を下げていた。


『お前は、この生産ユニットが扱えるか?』

シャールカの問いに、

『確認いたします』

と調理ゴーレムは言った後、数秒動作が停止した。


『お待たせしました。只今、そちらの装置の使用方法、メンテナンス方法の知識をインストールさせていただきました。材料さえあれば、この装置を使って1日100リットルのビールが作れます』

調理ゴーレムは答えた。


『よし。任せた。ゴンドア航空局の職員の指示に従い、材料が揃い次第生産を開始せよ』

シャールカは調理ゴーレムに指示を出した。


『シャールカ様。お願いがございます』

調理ゴーレムが話しかけてきた

『なんだ』

シャールカは調理ゴーレムが話しかけてくるとは思っていなかったので、反射的に応えてしまったのだが


『仲間の2体も起動させてほしいのです。3体で連携して動くようにプログラムされているので・・・』

調理ゴーレムは、申し訳なさそうに、停止している2体のゴーレムを指した。


(3体で1組なのか・・・)

『解った。あと2体も起動させてくれ』

シャールカは、あっけにとられているゴンドア航空局の職員に指示を出した。

『それと、材料の麦とホップを取り寄せてくれ。水はここにもあるはずだが、ゴーレムの希望するように確保してくれ』


こうして、サマランド空港名物、ゴンドア航空局ビールが誕生したのである。慌てて、空港に出入りしていた商人に材料の手配を頼む職員。1ヶ月後、サマランド空港で販売され始めたビールは人づてに伝わり、貴重なビールとしてゴンドア大陸にその名を知らしめることとなった。


なお、後日、話を聞いたセバスチャンが、サマランド王宮で絶叫したのはシャールカの予想範囲内であった。

地ビールの誕生でした。


ネオ :最近出番がにゃいなあ~

メリア:ラオカ村で平和に暮らせていいじゃないですか

ネオ :そうだにゃ


次はあるのか???です。


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