第152話 魔石確保
もう1話書いてしまいました。
『シャールカ様から伝言です』
ラオカ村にゴンドア航空局の職員がやって来た。ラオカ空港から来たのであろう。相変わらず、一日数便の飛行機の相手をしているだけらしいこともあり、空いた時間は暇らしい。
応対に出たネオは
(また・・・何か面倒でにゃければいいのだがにゃ)
心の中で思いながら
『内容は何にゃ?』
ネオの言葉にゴンドア航空局の職員は手紙と思われるものを差し出した。
『この手紙を読んでほしいとのことでした』
そう言うと、職員は空港に引き返していった。
(忙しいのかにゃ)
ネオはその姿を黙って見送ったのである。
・・・
しばらくすると、メリアが畑から戻って来たので、ネオは、手紙を見せると、
『早く内容を確認したほうがいいです』
と言って、手紙を奪い取った。
メリアが開封して読み始める・・・
=シャールカの手紙=
ネオとメリアへ
BE36が増えたこともあり、燃料を作る元となる魔石の在庫が足りなくなってきている。冒険者ギルドなどへも要請しているが、魔物の数そのものが減っていることもあり、十分ではないのが現状だ。かといって現状、パラストアの南にあるダンジョン・・・今はアミアのダンジョンと言われている場所を公開するのは危険だろうと考えている。そこで、この大陸最大戦力であるネオとメリアに、再びマスターダンジョンに入ってもらい、異常がないか確認するとともに、魔石を確保してきてほしい。
ネオとメリアがマスターダンジョンに入ることは、警備のゴーレムには説明済みなので、そのまま行ってもらって問題ない。ラオカ空港には、燃料加工用の魔石保管を指示しておくので、マスターダンジョン踏破後は、ゴンドア航空局の職員に魔石を渡してくれればよい。悪いが他に頼めるものもいないのでな・・・よろし頼む。なお、間違ってもマスターダンジョンのスイッチを切ったりしないように。
シャールカ
『マスターダンジョンの様子を見に行ってほしいみたいですね』
『魔石確保要員ではにゃいのだがにゃ』
メリアとネオそう言ってため息をついた。彼らの能力をもってすれば、1人でもマスターダンジョンの最奥まで行くことは簡単である。おまけに、時間経過がおかしいダンジョンなので、ダンジョンの外の基準で言えば、時間も殆んどかからない。まことに都合のよいダンジョンなのであった。
『仕方がにゃいから、久しぶりに新人の神様でも見に行ってきますかにゃ』
『そうですね。たまには体を動かした方がいいですね』
ネオをメリアはピクニックにでも行くかのように準備を始めた。
・・・
『ちょっと空港まで行って来るからにゃ』
『多分、夕方までには帰ってくると思うから』
ネオとメリアが久しぶりに冒険者の装備を付けて出かけるのを、不思議そうに見送るロクに
『シャールカからの依頼にゃ』
とネオは一言だけ言った。
ラオカ空港の南、滑走路の先にある詰め所、警備隊詰め所ということになっているここは、マスターダンジョンの入り口監視用ゴーレムの詰め所である。見た目は、他の警備ゴーレムと違わないのだが、その能力は比較にならない。ネオとメリアも本気で戦わないと危ないレベルである。
『シャールカから頼まれたのにゃ』
『マスターダンジョンの様子を見てくるようにとのことでした』
ネオの言葉にメリアが補足する。警備ゴーレムはネオとメリアをしばらく見た後、
『失礼しました。本物のネオ様とメリア様でした』
そう言って頭を下げた。
『今まで、ダンジョンからは、ゴブリンが数匹出てきた以外、魔物は出てきておりません』
(ゴブリンが出てきたのかいにゃ)
ネオは、この世界に来て間もないこと、ここでゴブリンに襲われ、仲間を失っていたことを思い出したのであった。
(そういえば、彼らの墓参りもしてにゃいな)
空港を作るとき、彼ら3人の墓は、周辺の土ごと、この警備ゴーレムの詰め所の一角に移され、ゴーレムたちによって管理されていたのである。
『久しぶりに墓参りをするのにゃ』
彼ら3人・・・オスター、シルバット、ロイドには身寄りがいなかったので、墓参りをするものはいなかった。尤も、場所が場所だけに、したいと思う人がいたとしてもまず不可能なのだが・・・。
3人の墓に手を合わせるネオ、
(今は、平和になったのにゃ。今からダンジョンに入ってくるのにゃ)
心の中で呟いたネオは、
『行くのにゃ』
メリアに言った。
・・・
『変わりませんね』
そう言いながら、剣でゴブリンを叩いていくメリア。ただの単純作業と化していた。
『そうかにゃ。数が多すぎる気がするのにゃ』
鬱陶しいほど次から次と現れるゴブリンに
『ホーリーウインド』
ネオはダンジョンの幅一杯に三日月の刃を飛ばした。
メリアが魔石を回収していく。
(掃除機でも作ってもらって、魔石を回収でもするかにゃ)
ネオは1つずつ拾っていくメリアを見て思うのだった。
各階周り、異常のないことを確かめながら進んでいく、魔物の量は明らかに以前より多かった。
『定期的に誰か入らないといけないのでしょうね』
メリアも途中で気が付いたらしい。勝手知ったるダンジョンを休むことなく進み、10階まで降りてくると、
『土竜が3匹になっているのにゃ』
『ですね。面倒ですね』
10階のボスであるはずの土竜が何故か3匹になっている。
『さっさと倒しましょう』
そう言って、メリアはトカゲ剣1をもって土竜に挑んでいく、
(せっかくにゃので、メリアの好きにさせるかにゃ)
ネオは、土竜が逃げないよう、ホーリーアースで囲んだのであった。
・・・
『遊びすぎじゃ』
土竜を倒すと見慣れた石像が現れた。現れるなり、小言を言う新人の神様に
『そっちだって、3匹もボス出しておいて何を言うのかにゃ』
ネオは思わず反論したのである。
『誰も、ダンジョンに来ないのでな、段々増えてしまったのじゃ』
新人の神様も言い返す。
『では、定期的にダンジョンに入らないといけないのですか?』
メリアが真剣になって聞いた
『そうじゃ。アミアにあるダンジョンもたまには入ってもらわない困るのだが・・・』
本当に困ったような声を出す新人の神様に
『わかったにゃ。シャールカに言っておくのにゃ』
ネオは思わず答えてしまった。
『で・・・とりあえずお仕事を・・・メリアよ。だいぶ経験値がある。お前のレベルは25だ』
次の瞬間、メリアの体が光に包まれ、消えた。
(ここの部分は変わらにゃいのな・・・)
ネオは思っていると
『うん・・・お前の経験値はメリアより多いな・・・何か気に入らん。お前のレベルも25にしよう』
『にゃんで!』
新人の神様の言葉に叫んだネオであったが、次の瞬間光に包まれた。
・・・
『お帰りなさいませ』
ダンジョンの入り口にネオは移動していた。メリアも隣にいる。警備ゴーレムは驚くこともなしに声をかけてきた。
『回収した魔石は職員に渡せばいいのかにゃ』
ネオの言葉に
『はい。そうしてください』
警備ゴーレムは淡々と答えた。
飛行機の燃料は、魔石が原料であるこの世界・・・。飛行機の数をを増やすということは、必要な魔石も増えるということで・・・。
そして、ネオとメリアはレベル25になってしまったのでした。でも、未だA級なのです。S級は本人の了解が必要とのことで、ネオとメリアは”意味がない”と断っていたのです。