第151話 湖畔の名物
短いです(眠い)
『ねえ・・・あれって魚の群れじゃない』
湖面を指さしながら、コレットが叫んだ。ネオがシャールカの指示で10匹放流したニジマスのことは知っていたが、湖を泳ぐ魚を見たのは初めてだった。そして、どう見ても、10匹放流しただけでは説明がつかない大きな群れが泳いでいたのである。
『試しに魚釣りでもしてみるか』
宿を再開する際、倉庫にあった釣り竿を持ち出してきたのは、マレットであった。
コレットは母であるマレットから釣り竿を受け取ると、パンを焼いたときの麦粉の残りを練って、針の先に着け、池の中に仕掛けを投げ込んだ。そして、コレットが手に持っていた釣り竿は、1分としないで大きく撓ることになった。
『おっきい~。釣れたよ!』
嬉しそうにいうコレットを見て、
(私もやってみよう)
マレットもコレットの隣で魚釣りを始めるのだった。
・・・
『今日は魚?』
以前ほどではないものの“冒険者の宿 湖畔”は宿泊者で繁盛していた。宿からの湖が大変いい眺めだったのである。アミア市民が観光で1泊していく・・・ついでに初級ダンジョンで、ゴブリンの魔石を大量ゲットしていくのが流行りだしていたのである。酷いときは、冒険者が誰もいない・・・すべて観光客という日まであるくらいである。そんな中、コレットとマレットによって沢山釣れてしまったニジマスは、宿の夕食としてムニエルになっていたのであった。
『シャールカ様のお話だと、ここは魚料理が有名だったらしいのです』
宿泊客にムニエルを提供しながら、コレットが言った。見慣れない料理に戸惑いながらも客は口に入れると、
『美味い!』
『なにこれ、美味しい』
『1000年前はこんな美味しいものを食べていたのか?』
口々にムニエルを褒める声が広がった。一部、勘違いも発生したようなのだが・・・。
夕食の提供後、
『ねえ・・・何故、あんなに沢山魚がいたのかわからないけど、お客様の反応は良かったし、宿のメニューに追加しましょうよ』
コレットが彼女の両親に言った。母であるマレットは黙って頷いている。移転当初、浮かない顔していたコレットの父も、あまりの繁盛ぶりに今では前向きであり、この魚も新たな宿の名物とすることに賛成だったのか
『わかった。でも、宿で魚を提供するときは、コレットが魚釣りをしないといけないよ』
と言って破顔した。
『ええ。宿の名物のため頑張ります』
コレットもやる気に満ちていた。
・・・
『にゃあ・・・シャールカさんにゃ』
プリンセスシャールカ号が夜のラオカ空港に居た。その貨物スペースには、ニジマスの入った水槽があった。連夜、ラオカ空港からパラストアまで移送していたのである。20日連続で行われたので、200匹ほど移送されていた。
『ここまでして、湖にニジマスを増やす必要があるのかにゃ』
ネオが不思議そうにシャールカに尋ねた。
『湖でニジマスが増えれば、パラストア・・・じゃなかったアミアの民がニジマスを食べることが出来るようになるだろう・・・』
シャールカは、湖で魚が捕れればアミアの人たちの食料になると確信していたのであった。
そう、彼女の目標である
“民が腹いっぱい食べられる世界を作る”
に繋がっていたのである。
ニジマスって生命力が強いそうです。むやみに放流してはいけない魚らしいです。
次回は未定です。