第143話 偵察のはずが・・・
もう1話書いてみました
『そのゴーレムたちは・・・』
やって来たシャールカにネオは途中まで言い掛けた言葉を飲み込んだ。
(建設ユニットに作らせたレベル20のゴーレムだにゃ)
ネオでもこのゴーレム100体に襲われるとパラライズなしには勝ち目がないレベルである。壁に設ける門の見張りにしては、過剰戦力であった。
『ネオ、建設ユニットが頑張ってくれてな。レベル20のゴーレムを100体用意してくれたのだ』
ゴーレムは、シャールカに絶対の忠誠を尽くすらしく、シャールカの指示以外のことをしそうになかった。
『4か所に門を作る。そこに守備として15体のゴーレムを配置する。そして、それとは別に、森に入る人間の護衛に5体配置する』
『つまり、門1ヶ所に20体のゴーレムですか・・・強すぎませんか』
シャールカの説明に、呆れながらメリアが答えた。
『いや、ヒャッケラキアを1匹たりとて通すわけにはいかないからな。こいつらは、通信機能があって、パラストアの管制システム経由で連絡がとれる。何かあっても、すぐわかるのだ』
『姫殿、たくましくなったのう・・・』
ワイバーンは目を細めた。
『いや。なんとしてもヒャッケラキアを殲滅し、この大陸を護るという気持ちしかないぞ』
シャールカはそう言って胸を張る。間違いなく本音なのではあるが・・・
(己の危険性に気が付いていない)
ワイバーンは危ないものを見る目でシャールカ眺めていた。
・・・
早速、4ヶ所の門を設置することにした一行は、門の予定か所にくると、ネオが壁の一部を壊し、それを囲むように新たな壁を作り、最後に大きな扉を作った。ゴーレムの詰め所をもいえる小屋も土魔法で作り、万一の長期戦にも備えている。正直、扉は無くてもあまり関係なさそうなくらいの防衛力なのだが・・・。配置するゴーレムに
『1匹たりとて、ヒャッケラキアを通してはならん。何が何でも防げ!よいな』
シャールカの指示に頷く20体のゴーレムであった。
・・・
3日後、4ヶ所の門の設置とゴーレムの配置が終わったところで、
『私は、パラストア空港に20体のゴーレムと駐在する。3日後に討伐を開始してくれ』
そう言い残すと、20体のゴーレムと共にパラストア空港に向かって移動していってしまった。
『あの速度なら明日には着くにゃ』
走るだけなら、100km/日は可能なシャールカに、疲れを知らぬゴーレム・・・。あまりに強力であった。
『3日間どうします?』
メリアはネオに尋ねた。3日の待機など考えもしてなかったのである。
『食料調達を兼ねて偵察をするのにゃ』ネオは森の中に入っていった。
・・・
ネオが魔物の様子を感知し始めると、妙なことが判明した。
『魔物が逃げていくのにゃ』
ネオたちが歩いていく方向から魔物たちが避けるように移動していく。結果としてゴブリン1匹会わないという異常な状態であった。
『おかしいにゃ。いままでこんなことなかったのにゃ』
首を捻るネオに、
『ワイバーンと一緒に森に入ったら、皆逃げるのでは?』
メリアはそう言ってワイバーンを見た。
(我は、森をゆっくり歩いたことなどなかったからな・・・でも、我に近づいてくる魔物はヒャッケラキアしか記憶がないな・・・ということは、避けられている?!)
メリアに言われ、魔物が逃げる原因かもしれないと思い始めたワイバーンであった。
『すくなくとも、このあたりにヒャッケラキアはいにゃいな』
ネオはそう言うと、
『ホーリーアース』
とローラシア山脈に向かって発動させた。
山の斜面が削れた先に・・・
『あれはにゃんだ!』
謎の空洞を見つけたのであった。
・・・
『明らかに人工的なものですね』
メリアは現れた空洞を見ていた。
『我には何か絵が描いてあるようにみえるぞ』
ワイバーンが翼で示した先には、大きな壁画があった。
『これはなんでしょう・・・飛行機の絵のようですが・・・何故か穴のようなものが沢山描かれています』
それは、大きな飛行機の絵であった。不思議そうに眺めるメリアであったが・・・。
(これは旅客機・・・大型の飛行機だにゃ)
熊本に住んでいたころ、機体の側面に沢山窓がある大きな飛行機を見ていたネオは、この絵が元の世界にある大型旅客機の絵であることを理解できたのである。
空洞は、更に奥に繋がっていた。
『奥に行ってみるのにゃ』
しばらく歩いていった先に、広い空間と呼ぶべきところに出た。そして、何故かネオに向かって敬礼するゴーレムを見つけたのである。警戒しながらゴーレムに近づくと
『ようこそいらっしゃいました。私はゴンドア王国軍。回転翼部隊所属、R44です』
ネオに敬礼したまましゃべったのである。
(ゴンドア王国のヘリコプターがこんなところにあったのにゃ!)
『俺はネオだにゃ』
ネオが答えると、
『存じております。先ほどシャールカ様の端末とリンクが取れました』
R44と名乗ったゴーレムが表情を変えることなく答えた。
((どういうことなのにゃ~))
ネオは心の中で叫んでいた。
・・・
『こちらへどうぞ』
ゴーレムに言われるまあ、奥に行くネオたち・・。ワイバーンも
『こんなところがあるなんて聞いていないぞ・・・』
何やら呟いている。
連れていかれたのは通信室と書かれた部屋だった。
目の前の石板に映像が現れた。
『ネオ!驚いただろう・・・ハハハ』
そこには、パラストア空港に向かう途中のシャールカが、ゴーレムたちに担がれてながら運ばれている姿であった。
変なものを見つけてしまいました。
次回はいつか書きます(他にやらないといけないことがあるので・・・)。