第141話 ドワーフへのお土産
やっぱりドワーフときたら・・・
『ところでガロは放置しておいていいのかにゃ?』
ネオが思い出したように言った。
『大丈夫じゃ。今頃、麦と一緒に回収されているだろうに・・・』
ガリは淡々と言った。
『そんなことより・・・シャールカ様は1000㎏も麦をくれるのか』
ガリにとって、里の食料確保が最優先らしい。
『シャールカは、言い始めたら誰にも止められにゃいから、間違いなく1000㎏は送ってくるはずにゃ』
ネオの言葉に、あからさまにホッとするガリ。
『それならば、3ヶ月は待てるのじゃ』
ガリは安心したのか、床にへたり込んでしまった。
『長老様。商業ギルドに預けておいたお金で食料を購入してきました』
レクがそう言って、ネオの方を見る。
(ここで出すとするかにゃ)
ネオは、アイテムボックスから、リクとレクがロディアで購入してきた肉や野菜を取り出した。
『これが、リクとレクが調達した分にゃ』
これだけでも、目の前にいる長老が見えなくなるくらいの量があった。
『こんなに沢山・・・後から派遣した5人の滞在費は大丈夫なのか?』
長老は5人が心配になったらしい。
『大丈夫。ロクさんが、ラオカ村で開拓しながら5人を指導してくれている。住むところも食べるものにも困らない』
リクが答えた。
『半年もすれば、5人が食料をもって里にやってくるはずにゃ』
ネオは、ロクに出来た食料は、自分たちの分以外はドワーフの里に送ってよいと言っておいたのである。ゆえに、ロクは5人を使って、出来るだけ沢山の食料を生産使用と考えていたのであった。
『きっと、ミラさんも様子を見に来てくれるでしょうし・・・大丈夫でしょう』
メリアもロクを信用しているようであった。
『そうか・・・これだけあれば、3ヶ月は肉も節約すれば何とかなる・・・と思うのじゃ』
ガリは目の前の肉と野菜の山に安心したらしい。
『それで、ミラから預かったのがこれにゃ』
ネオは酒の入った樽を取り出した。
これには、長老以外のこの場に居たドワーフ全てが樽に目が集中していた。
『こんなに沢山・・・この里では久しぶりじゃ』
この場にいた全てのドワーフたちの目が輝いていた・・・
(にゃんか怖いにゃ)
『今日の宿泊費がこれにゃ』
ネオは、ガロータの手前で仕留めたオーク2匹を取り出した。
『今日は宴会じゃ!』
ガリの声がドワーフの里に響いた。
・・・
ドワーフ総出でオークを解体し、調理していく。リクとレクが狩ってきてもののうち、日持ちがしない野菜などは宴会で使ってしまう気であるらしい。
『野草なら少しは手に入るしな・・・』
いつの間にかガロまでもが作業をしていた。
(みんな嬉しそうだにゃ)
ネオは少しだけシャールカの気持ちが解ったような気がした。
・・・
『皆、よく聞いてくれ。今日もあったが、ゴンドアの姫様が我らを支援してくれているそうだ。今回までの分を含め1000㎏もの麦を届けてくれるそうだ』
長老の声に、歓声が上がる。
『更にじゃ。リクとレクがシャガイモとトウモロコシの栽培を学んできてくれて、シャガイモの種芋とトウモロコシの種を持って帰ってきてくれた』
長老の説明に
『それって、アントラニア王国の開拓地で作っている、あれか?』
最前列で聞いていたドワーフが言った。
『そうだ。我々は、この地でジャガイモとトウモロコシの栽培が出来ることになったのだ』
長老の言葉に、今度は静かになってしまった。そして、
『これで腹いっぱい食べられるね・・・』
『お腹空かなくてよいのね・・・』
『食料が作れるなんで・・・夢なのか・・・夢なら覚めないでくれ』
呟くように色々な声が聞こえてきた。
『そして、今回、シャールカ様のご友人であるネオ様、メリア様が、リクとレクといっしょに里に来てくれた。今日のオーク(肉)は、お土産なのじゃ』
長老の言葉に、再び歓声があがる。
『そして、これ・・・ロディアに住む我々の同胞・・・ミラからの酒がある!』
長老の言葉にドワーフたちのテンションは最高になった。
『今日は宴じゃ!飲むぞ~』
長老のこの一言で、宴会は始まった。
皆、食料不足で厳しい生活をしていたためか、目の前の肉を必死に食べている。多すぎるのではと思っていたオーク肉の料理であったが、ものすごい勢いで無くなっていった。
(すごい食べっぷりだにゃ)
ドワーフのパワーに圧倒されるネオとメリアであった。
・・・
里にあった来客用の家は多少大きめに出来ていたこともあって、ワイバーンも寝ることが出来た。ドワーフたちの宴会は酒が無くなるまで終わりそうにないため、長老に断って、ネオ、メリア、ワイバーンは先に寝ることにしたのだった。
『こんなにドワーフたちが困っていたとは知らなかった・・・』
ワイバーンは呟いた。それを聞きつけたメリアが
『でも、シャールカが助けると言ってくれたおかげで何とかなりそうです』
そう言うメリアは少し寂しそうだった。
(はて?なんで寂しそうなのか・・・)
ワイバーンはラオカ村が廃村になった経緯を知らなかった。
当然の展開になっています。
ワイバーンは、細かいことは無神経というか、気にしていないのです。村が無くなるくらいは誤差のうち・・・。
次回は未定です。