第140話 ドワーフの里
『お世話になりました』
『また、来るがよい』
メリアが長老と挨拶をしていると、同行することになったワイバーンが、奥さんになにか言っている。昨夜は、持ってきたオークを使ってささやかな宴会が開かれた結果、3匹のオークは全てワイバーンたちの胃袋に収まってしまったのであった。
『かあちゃ~ん!』
離れたくないらしいワイバーンが奥さんに泣きついている。その様子を見た長老が、
『みっともない姿を晒してんじゃない!』
と一喝する。雷でも打たれたかのように全てのワイバーンが硬直したように動きを止めた。
(すごいにゃ)
その様子をネオは感心しながら見ていたのである。
・・・
ネオ達4人は、奥さんのワイバーンと2人ずつに別れて乗り込んだ。ドワーフの里までは、地上を歩くと大変らしい。
『ばいばいにゃ』
ネオの言葉の直後、2体のワイバーンは離陸した。手を振るネオにワイバーンたちは翼を振って答えてくれた。
『ドワーフの里は、峰を超えたらすぐだ』
10分としないうちに、ドワーフの里に到着したのである。
『じゃあ、しっかりね』
『ああ・・・おふくろの命令だからな・・・』
ワイバーンの奥さんは、それだけ言って直ぐに帰っていった。子供たちがいるからであるらしい。
その姿を名残惜しそうに見ているワイバーンを放置して、
『早速、ドワーフの里に挨拶なのにゃ』
ネオは、リクとレクに先導してもらい、メリアと共にゆっくりと歩いていく。
ワイバーンがやってきたこともあって、里からも誰か出てきた。
『一体なにがあった・・・ってリクとレクか?』
『ガロ。久しぶり』
『ジャガイモを持ってきた』
リクとレクが、やって来たガロという男に言った。
『ということは、この村でも作物が育ちそうか?』
『ラオカ村ではうまくいった』
『こっちではやってみないとなんとも・・・』
ガロの問いにリクとレクは冷静に答えている。ここまで話して、ようやく、ガロはネオとメリアに気が付いた。
『この里に人間が来るのは珍しい・・・』
ガロは珍しそうにネオとメリアを見始める。
『こら。ネオ様とメリア様に失礼だろう・・・』
リクの言葉にレクが頷いている。
『これでも、ドワーフの里では敵なしのガロ様だぞ』
リクの言葉が気に入らなかったらしい。何を思ったのか、腰に刺していた剣を振り上げ、ネオに襲い掛かって来た。
『遅いにゃ』
振り下ろした剣を右手で摘まんだネオ。ガロの剣は全く動かない・・・。それでも、力を緩めないガロに、ネオはそのまま剣を折ってしまったのであった。
『えっ!』
状況が理解できないガロ。その時、後ろから、明らかに老人と思われる男がやって来た。
『馬鹿者!』
手にして杖でガロの頭を叩く。ガロは気絶したのか、その場に倒れてしまった。
老人は、倒れたガロには目もくれず、ネオに近づくと
『儂は、この里の長老をしているガリと申す。この馬鹿が失礼した。すまん』
そう言ってネオに頭を下げたのであった。
・・・
ワイバーンとネオたち4人はガリの家に移動した。ワイバーンは大きさ的に厳しかったので、外で待ってもらうことになったが・・・。
『改めて、この里の長老をしているガリと申す』
『ネオなのにゃ』
『メリアです』
長老の言葉にネオとメリアが言葉を返す。家の外からワイバーンが首だけ家の中に入ると
『俺は、ワイバーンの長老からこの2人と一緒にヒャッケラキア放伐をすることになった』
と話掛けた。
『わざわざ、ありがとうなのじゃ』
ガリは頭を下げた。
『リクとレクがここに戻るに同行しただけにゃのだ』
ネオはそう言うと、リクの方を向いた。
『長老。ネオ様とメリア様は、先日、空から麦を送ってくれたシャールカ様のご友人です』『そして、私たちにシャガイモとトウモロコシの栽培を教えてくれました』
リクの説明にレクが補足するように言った。
ネオは、アイテムボックスから、ジャガイモとトウモロコシの種を取り出した。
リクはそれを指さしながら、
『これが、今、アントラニア王国の草原を開拓して作られ始めたジャガイモです』
『こっちの袋がトウモロコシの種になります』
レクがリクの言葉を補うようにトウモロコシの種が入った袋を指さした。
その姿に驚く長老・・・
『では、お前たちはロディア国で栽培を習っていたのじゃな』
長老の顔に笑みが見えた。
『はい。この種芋を畑に植えれば、約3ヶ月で収穫できます』
その言葉に、長老は再び顔を曇らす・・・。
『それはありがたいのじゃが・・・先日、空から送ってくれた麦では3ヶ月も持たん・・・』
ドワーフの里の食料事情は深刻だったらしい。
そのとき、ワイバーンが再び家の中に首を突っ込んで来た
『何か来たぞ』
話を一旦やめて、皆で外に出てみると、上空には、プリンセスシャールカ号がいたのである。そして、ドワーフの里の真上まで来た(正確にはその少し手前)で袋を投下し始めたのである。前回のことを皆知っているので、里のドワーフたちは、我先に、落下してくる袋に向かって走っていった。
『あれはもしかして・・・』
ガリは言い掛けたところで
『シャールカだにゃ』
ネオの言葉に、隣にいたメリアが頷いた。
『1000㎏用意すると言っていたからにゃ。200㎏ずつこうして持ってきているのにゃ』
そう呟くネオに、
『何と・・・ありがたい。神様のお告げの通りじゃ』
ガリが気になることを言った。
(あんにゃろ・・・)
ネオは思わず舌打ちするのだった。
シャールカの食料支援を、自分のお告げにしてしまう新人の神様?
次回は未定です。