第137.5話 シャールカの呟き(その1)
おまけを1話書いてしまいました。
『シャールカ様!』
セバスチャンがサマランドのシャールカの執務室に駆け込んで来た。
『ドワーフの里への食料支援をせよとのご指示ですが、場所が分かりません』
1,000㎏の麦をドワーフの里に送るように指示したシャールカの命令を見て、駆け込んで来たのである。
『それならば問題ない。20㎏ごとに袋に詰め、パラシュートを付けてくれ』
息が上がったセバスチャンを無視するように、書類を見始めるシャールカに
『い・・・一体どうされるのですか』
セバスチャンはシャールカの指示が理解できていなかった。
『今回の支援は、全て、プリンセスシャールカ号からドワーフの里への食料投下によって行う。場所は私が知っているから問題ない』
そう言ってから、書類に目を通すのを一旦やめ、脇に用意させた植木鉢に目をやった。窓ぎわに置いた植木鉢からは、セバスチャンが見たことのない草、大豆が生えていたのである。
『シャールカ様自ら運ばなくてもよいのではないので・・・』
ようやく息が整ったセバスチャンが反論しようとするのをシャールカは遮り、
『私は、ドワーフもゴンドアの民だと思っている。私が眠っている間、人はドワーフのことをほとんど忘れていたのであろう・・・彼らが武器や防具、簡単な魔道具を作ってくれていることを・・・。そして、彼らの里は危機に瀕している。ゴンドアの民を救うのは私の使命である』
そう言って、一瞬セバスチャンを睨む。
『うっ・・・シャールカ様の民を思う気持ちは尊い・・・が、時に病的でもあるのが問題なのだが・・・』
セバスチャンの呟きはシャールカには聞こえなかった。
『出来るだけ早く、ラオカ空港に1,000㎏用意させろ、用意出来次第、私がラオカ空港から運ぶ』
シャールカの言葉にセバスチャンはうなだれながら、
『ですが、ネオ様とメリア様には地上の討伐を指示されたのでは?誰が、機内から投下作業をするので・・・』
セバスチャンは、何とかシャールカに操縦を止めてもらいたかったのである。万一のことを考えて・・・。
『ははは・・・大丈夫だ。パイロットゴーレムを連れていく。あいつ等には、食料投下作業がインストールされているからな』
なんと、非番のパイロットゴーレムを動員する予定であった。
(これは、何も言っても無駄だ・・・)
セバスチャンは諦めるしかなかった。
・・・
セバスチャンが寂しそうに出ていった後、タブレットを取り出してラオカ空港の全自動調理ユニットのメニューを見ていたシャールカは、あることに気が付いた。
(調味料・・・?調味料もこのユニットで作れるのか)
そこには、シャールカの知らない調味料の名前が書かれていた。
味噌・・・必要材料:大豆、塩、米麹(米があれば時間が掛かるが作成可能)
醤油・・・必要材料:大豆、小麦、塩
(確か、飛行訓練センターでネオが作ってくれた雑煮に入れていた黒い液体を醤油といっていたような・・・)
そして、加工できる食品という蘭を見つける。そこには
豆腐・・・大豆、塩
納豆・・・大豆、稲藁
(稲藁ってなんだ・・・なになに、米を作るときの茎や葉の部分のこと。馬などの食料にもなる)
タブレットの解説蘭を調べていくシャールカ・・・大豆から色々なものが作れることを理解するのであった。更に、食堂のメニューに、豆腐を使った料理が沢山出てくることを発見。納豆は、そのまま米と食べるものらしいことも理解したのである。
(これは、米の産地であるインゴニア王国に作らせるのがよいだろうな・・・)
彼女にとってゴンドアとは、大陸全体であり、その全てが幸せに暮らせることが彼女の使命だと思っているのであった。
(結局、ゴンドアの王族であることを忘れることは出来なかったな・・・)
小さいとき、王宮のこと、王族の役目が面倒で大嫌いだった彼女にとって、こうやってゴンドアの発展を願うことは、王族であることを再認識させることでもあった。
シャールカにとって
民の幸せ = 腹いっぱい食べられる
なので、民の食事が豊になることは、シャールカの目的になっています。
続きは何時か書くとは思います・・・たぶん。