第125話 ニジマスの大発生と大豆、サツマイモ
しばらく、不定期更新とさせていただきます。
空港の準備はほぼ終わり、街道とのアクセス道路も、ネオがBE36が出来るのを待っている間にホーリーアースによって出来上がってしまうとやることが無くなってしまった。シャールカは一旦、サマランドに戻ってしまい、次回は、出来上がったBE36と一緒に来るとのことであった。
『この大豆と芋を植えてみるのにゃ』
ネオはそう言って、ラオカ村・・・元々のラオカ村の敷地内に畑を作り、波高からシャールカが受け取ったサツマイモと、同じく波高から受け取った大豆を植えてみた。一晩水に付けた大豆は何となく膨らんで見えるが、本当に発芽するのかはよく解らなかった。
『きっとうまくいきますよ』
メリアにそう言われ大豆を蒔いていくネオ。今のところロディア国からは何も連絡がなかった。
(あいつら本気だと思っていないのかにゃ)
ネオもメリアもロディア国には対して期待していなかった。
(家畜でも連れてきてくれるといいのだがにゃ)
廃村には、誰もいない家と、盗賊ですら襲うことがないほどなにも無い家畜小屋が残されていたのである。
・・・
『ネオさん大変です!』
大豆の芽を確認しながら、1つ1つ土をかぶせていたネオにメリアがやって来た。どうやら空港から走って来たらしい。レベル15にも関わらず、よほど焦っていたのか、息が上がっていた。
『どうしたのかにゃ?魔物でも現れたかにゃ』
大豆に土を被せる作業を止めてメリアを見ながらネオが言った。
『池に魚がいっぱいです』
『にゃんだって!』
慌てて池に向かうネオと、それを追いかけるメリアであった。
・・・
『にゃんと・・・』
池に来てみると、ニジマスが群れを作って泳いでいた。どうみても100匹以上いそうである。波高から受け取ったニジマスを放流してから僅か数日にも関わらず・・・どう考えてもおかしい。
(いくらにゃんでもこんなに急には増えにゃいはず・・・)
何か原因があると見て周辺を見渡すと、何やら光り輝くものが池の中に見えた。
(あれが怪しいにゃ)
ネオは、水中にある光り輝くもの目掛けてダイブした。
『えっ!』
その様子に驚くメリア・・・。だが、ネオは水中に入ることなく、謎の水玉に囲まれて浮いていた。そして何かの気配を感じて振り向くと
『久しぶり』
何と新人の神様であった。驚くメリアに
『ネオは慌てすぎなのでな』
と水玉の中いるネオを一瞥してから
『この池で魚が大量繁殖するように細工したのだ。安心せい。増えすぎることは無いようにしておる。魚の数は一定になるように細工したのでな。魚には影響はない。存分に食べるがよい。だがなこの池しか効果がないから、この魚を他所に持って行っても、急には増えないからな』
新人の神様は、メリアに言いたいことを言うと、満足して消えてしまった。と同時に、ネオを覆っていた水玉が割れ、
『にゃ!泳げにゃいのだ』
と溺れだしたネオをメリアは慌てて助けるのであった。
・・・
『初めに説明してくれればいいのににゃ・・・』
メリアから新人の神様が言っていた説明を聞いたネオは思わず呟いた。
『まあ・・・これで魚は十分確保できましたし・・・空港の警備はゴーレムがしてくれるので、やることがないですね』
メリアは、ようやくラオカ村でゆっくり過ごせると思ったらしい。
『大豆とサツマイモの栽培をするのにゃ』
ネオとメリアがラオカ村に戻っていった。
・・・
周辺の土地を開拓してブジェから持ってきたジャガイモとトウモロコシを植えたあと、やることが無くなってしまったネオは、角ウサギを数匹狩ってロディアにやって来た。
『久しぶりだにゃ』
『ご無沙汰しています』
ネオとメリアが挨拶した先は、ドワーフのミラがやっている店である。冒険者の装備でお世話になった懐かしい店であった。
『いらっしゃい・・・ネオじゃないか!メリアも一緒か』
ミラの大きな声が響いた。
ネオは角ウサギをミラに渡すと、
『ありがたいねえ・・・』
と大事そうに抱えて店の奥に一旦消えた。しばらくして戻って来たミラは
『今日は何の用だい?』
すっかりいつもの調子に戻っていた。
『ようやくラオカ村に戻ってくること出来たのにゃ』
『ラオカ村に住むことが出来そうなのです』
ネオとメリアが言うと
『じゃあ・・・これからは角うさぎが食べれるのかい・・・嬉しいね』
上機嫌である。
(よほど、角うさぎが好きなのかにゃ)
ミラのあまりに嬉しそうな顔を見ながらネオは思っていた。
『そういや、ラオカに空港ってもんが出来るらしいじゃないか?飛行機とかいうもので荷物を運ぶとアミアまで1日で着くとか・・・本当かね?』
『本当だにゃ』
ネオが答えると、ミラは急に真剣な顔になって
『誰かアミアに行って、ジャガイモとトウモロコシを手に入れてきてくれないかね』
ネオに頼み込むように言ってきた。
『何かあったのですか?』
その様子を見たメリアが心配そうにいうと
『実はね。ドワーフの里から連絡があって、最近、魔物が採れなくなってしまったらしいのさ。このままだと食うものに困りそうだというので、麦とか急いで送ったんだ。そしたら・・・』
ミラは言葉詰まった。
『もしかして麦を栽培しようとしたのかにゃ?』
ネオの問いに頷くミラ。
『だがね。土地が痩せていて実がならなかったそうだ・・・このままではドワーフの里が滅んじまう・・・聞けば、アミアでは、痩せた土地にジャガイモを植えて栽培していると聞きつけてね。何とか手に入れたいんだよ』
ミラの切実な訴えを聞いたネオとメリアは、お互いに顔を見合わせてから、
『ドワーフの里からラオカ村にジャガイモとトウモロコシの栽培を習いにきたらいいのにゃ』
この際、ラオカ村でドワーフに栽培方法を教えることを提案したのだった
(労働力も確保できるしにゃ)
ネオとメリアはロディア国にはあまり期待していなかったのである。
『それはどういうことだい』
事情を知らないミラは目を見開いてネオを見た。
『ジャガイモとトウモロコシの栽培を始めた所なのです。一緒に栽培して覚えてもらえば、ドワーフの里に持ち帰ってからもうまくいくと思いますよ』
ミラの勢いに驚いているネオに代わって、メリアが答えた。
・・・
数日後、3人のドワーフがラオカ村にやって来た。
ネオとメリアを見つけると、3人は、駆け寄ってきて
『ミラの姐さんに言われてやってきました。ロクといいやす』
『同じくリクといいます』
『同じくレクといいます』
なんと、ロクは男であったがリクとレクは女の子であった。もっとも、ネオやメリアよりかなり年上のはずであるが・・・。空き家のなかで、比較的状態のよい家を選んでもらい、メリアの家に来てもらって説明を始める。
『ネオといいますにゃ』
『メリアです』
まずは、メリアから村のことを説明してもらう。何せ、元々ラオカ村にいたのは彼女だけなので、ネオには説明しにくい部分があった。
その後、ジャガイモの種芋が保管してある場所に移動して
『これがジャガイモにゃ』
ネオがドワーフの3人に見せる。何故か3人とも怪訝な顔をしている。
(これは一回食べさせないと解らなにゃいか・・・)
そしてネオは、服のポケットにしまっておいたトウモロコシの種を見せる。
『これがトウモロコシだにゃ』
こちらは、3人ともただ、物珍しそうに見ていた。
メリアもドワーフ3人の様子から同様に思ったのか
『私は、食事の準備をしますので、ネオさんの説明をきいてください』
と言って台所に消えていった。
・・・
ネオは、ドワーフ3人を畑に連れ出した。まだ小さな目が出たばかりのジャガイモとトウモロコシを珍しそうに流れるドワーフ3人に、
『これから、さっきのジャガイモとトウモロコシを栽培してもらって、その種を持ち帰ってもらうからにゃ』
ネオがそう言うと、3人は目的を思い出したのか、
『はい!』
『はい!』
『はい!』
と返事を返してきた。
・・・
この日の夕食はメリアが作った、ジャガイモとトウモロコシの料理となった。
トウモロコシの粉で焼いたパン、コーンスープ、蒸かしたジャガイモに、コロッケという取り合わせとしては多少疑問が残るものであったが・・・。
『美味いです!』
『美味しいわ!』
『いくらでも食べれそう・・・』
ドワーフの3人は山のように盛られたコロッケを平らげていく・・・
(昔、波高がコロッケを大量に食べる魔人のお話をしていたような・・・)
ドワーフ3人を見ながら、妙なことを思い出したネオであった。
・・・
『もう食えない』
『お腹いっぱい』
『幸せ~』
ドワーフ3人が床に転がっていた。一人あたり10人前は食べている。
『お前たち、いつもこんなに食べるのかにゃ?』
心配になったネオが訪ねると、ロクが起き上がり、
『実は、最近腹いっぱい食べたことがなかったのです。いつもは、人間の3倍くらいです』
ロクの言葉に、
(こいつら大食いだったのにゃ)
顔をしかめるネオであった。
ドワーフの特徴は後日出てきます。
彼らは、ミラを頼って、ドワーフの里から出てきた3人でした。なので、数日でやってきたのです。