第120話 返却
2話追加します。
『こんなところに居いたのかにゃ』
サマランド空港の端にある、プリンセスシャールカ号の格納庫に機体を格納すべく、ネオが格納庫を開けた途端、目の前に建設に使われたトラック、ゴーレムが停止状態で集まっていたのである。
(こいつらがいると、飛行機を入れられないにゃ)
格納庫を埋め尽くす彼らをどうするか思案していると、シャールカがテストパイロットのゴーレムと共にやって来た。
『彼らを返してやらないといけないな・・・確か、こちらからの転移は出来ないのだったな』
シャールカは、イパラ要塞の地下から移転した先にある、建設ユニットで聞いた説明を思い出していた。
『仕方がない。今からパラストアに行くぞ!』
シャールカが嬉しそうに言った。
・・・
プリンセスシャールカ号の操縦席にはシャールカ、右席はテストパイロットのゴーレム、後席にはネオとメリアが乗った状態で、サマランド空港を離陸した機体は、東に向け、パラストア空港に向かって飛行していた。
『ローラシア山脈を越えないとパラストア空港のVORを受信できません。高度を9000ftまで上げてローラシア山脈を越えてください』
右席のテストパイロットのゴーレムに指導されながら、シャールカは高度を上げていく。フライトプランはシャールカが持っているタブレットから入力していたので、パラストア空港にも情報が伝わっている。
『パラストア空港は、現在、給油設備が復旧しておりませんので、お帰りの際は飛行訓練センターに寄られることをお勧めします』
サマランド空港では、駐機場の指定されたスポットにBE36が止まると、自動的に給油される仕組みになっている。しかし、他のパラストア空港にはそのような設備はなかったそうで、給油用の車両と作業用のゴーレムがいたそうだ。それらは、今は存在していない(おそらく1000年前に消滅したと思われる)ので、燃料の補充が出来ない。飛行訓練センターであれば、整備ゴーレムが対応してくれるとのことであった。
『使われている燃料ってどんなものなのですか?』
後席で話を聞いていたメリアがゴーレムに聞くと
『詳しいことは解りません。飛行訓練センターとサマランド空港へは、建設ユニットから転送で補充できるようになっております。原料は魔石だと聞いております』
どうやら、何等かの方法で、魔石を液化して燃料にしているらしい。
(たしか、波高はAVGASとか言ってたにゃ)
熊本空港に居たころを思い出すネオであった。
・・・
パラストア空港に無事着陸後、3人と1体は3Fの転移魔方陣に来ていた。
『ホーリートランス』
ネオが唱えると、パラストア空港にある魔方陣が起動した。
次の瞬間、天井から明かりが降りそそぐ。イパラ要塞の地下に移動したのである。
さて、さっさと建設ユニットに移動するぞ。そう言ってシャールカは通路への扉を開ける、
扉の前にいた兵士達は突然の出来事に驚きながらも
『こ・・これはシャールカ様!ようこそイパラへ』
慌てて1人が連絡に走っていった。
『出迎えは不要だ。ちょっと建設ユニットに行ってくると南東伯に伝えておいてくれ』
シャールカはそう言うと、行き止まりの壁に向かって歩き出した。
現れた魔方陣に魔石をセットした後、テストパイロットのゴーレム、ネオ、メリアが転移魔方陣の範囲に入ったのを確認して魔石をセットした魔方陣に手をかざすと、3人と1体は、その場から姿を消した。
・・・
『いらっしゃいませ。シャールカ様』
前回同様、ゴーレムが挨拶してきた。恐らく前回対応してくれたゴーレムと同じ個体だろうと思うが・・・
(見た目ではわからんにゃ)
見た目ではゴーレムの識別ができないネオであった。
『ああ・・・今日は確認と相談があってきた』
シャールカは特に気にもせずゴーレムに話しかける。
ゴーレムは、用意した椅子にシャールカ、ネオ、メリアを座らせ、テーブルの反対側に移動した後、
『ご用件を伺わせていただきます』
そ言って一礼したのである。
『まずは、サマランド空港の建設大儀であった。出来には満足している』
『ありがとうございます』
シャールカの言葉に答えるゴーレム。
『今日は、プリンセスシャールカ号のフェリーをしてくれたゴーレムを返却に来たのと、建設してくれたゴーレムと資材をどうしていいかの相談に来た』
シャールカの言葉に納得したゴーレムは
『わざわざありがとうございます。テストパイロットのゴーレムはこのまま引き取らせていただきます。次回のBE36生産時に再利用させていただきます』
ゴーレムの回答に頷くシャールカ。テストパイロットのゴーレムはその会話を受け、シャールカに一礼した後、奥にあるBE36生産エリアに帰っていった。
『空港建設時の資材とゴーレムですが、現在の技術ではこちらから引き取る方法がありません』
『格納庫が埋まってしまって邪魔にゃのだ』
ゴーレムの言葉にネオが返答する。
『それでは、お手数ですが、あの魔方陣を格納庫前に広げていただき、こちらに返送するユニットを乗せて発動させていただけないでしょうか』
そう言うと、ゴーレムは、1つの巻物のようになっているシートを指さした。
『真ん中に魔石をセットしていただければ、1分後に発動します』
(にゃるほど・・・資材を送り込んだ魔方陣の逆なのにゃ)
ネオは、ゴーレムから魔方陣のシート受け取って、アイテムボックスに収納した。
『サマランドに帰ったら、早速送り返す』
『了解しました』
シャールカの言葉にゴーレムが返答する。
『でだな・・・もう1つ空港を作ってほしい』
シャールカが言葉を続けた。
もう1つの空港・・・シャールカの野望が動き出します。