第119話 サマランド空港
飛行機が出来たら、飛ばしたくなって、ついもう1話書きました。
(異常なペースになってしまってますが。。。)
『このあたりがよろしいかと・・・』
セバスチャンは地図を見ながらシャールカに言った。ここは、サマランドの街のすぐ西側。このあたりは、畑もなく、広い荒地が広がっていた。ゴンドア北西部には珍しい、痩せた土地だったのである。麦がろくに育たないこの土地を耕作するものはいなかったのである。
『ネオ・・・あれを広げてくれ!』
シャールカはセバスチャンに頷きながら、連れてきたネオに指示をした。
『まったく、猫使いが荒い・・・にゃ』
不満そうに作業するネオに
『これが終わったらラオカ村の開発支援をしてくれると約束してくれましたし・・・』
メリアはネオをなだめるように言いながら作業をしていく。そう、サマランドに移動する途中、メリアはシャールカにラオカ村の復興と開発に協力することを約束させていたのである。
そんなメリアを見てシャールカの口元は僅かに上がるのであった。
(南西部にも空港が必要・・・新たに作るのであれば、ロディアの近くにしないといけないだろう・・・。マスターダンジョンの警備と村・・・いっそのこと、あの村の跡地に空港を作ってしまえばよい・・・ゴーレムの警備にマスターダンジョン入り口も監視させれば・・・更に、ネオとメリアが近くに村にいる・・・我ながら完璧だ!!)
妄想に浸るシャールカであった。近くに空港を作ってほしいとメリアが思っているとは思えないが・・・。ラオカ村周辺に広がる草原とマスターダンジョン近くに流れる川・・・開拓村を作るには適していたのである。ただの開拓村にする気がシャールカにないだけであった。
・・・
広げた魔方陣にシャールカが魔石をセットすると、魔方陣が光りだす。慌てて、シャールカが魔方陣の外に出た、直後、ゴーレムとトラックのようなものが転移してきた。
『本当に来たにゃ』
『あれは何でしょう。見たことがないものです』
メリアは、トラックを見たことがなかった。正確には、ネオ以外なかったのだが、トラックという未知の存在に気が付いたのがメリアだけだったのである。シャールカは叔父である南東伯が用意したいろいろな設備に感覚麻痺を起こし、セバスチャンはそんなシャールカの周りに起こる異常な出来事に感覚麻痺を起こしていたのである。ネオは・・・
(にゃんだ。トラックだにゃ)
この世界あるはずの無いものなのに、元の世界で見た記憶があるので、そのまま受け入れていたのである。
ゴーレムは、シャールカを見つけると、ゆっくりと移動し、臣下の礼をとった。
『シャールカ様。この地に空港をご所望と伺い、参上いたしました』
その様子にシャールカはやや顔を引き攣らせながら
『大儀!早速、空港を作ってくれ』
その後、ゴーレムとシャールカ、ネオ、メリア、そしてセバスチャンで会議を行い、空港の配置を検討した。
セバスチャンは、その内容を記録していったのである。
=打ち合わせメモ=
・滑走路は1000m×30mとし、南北方向とする。
・ターミナルは貨物用も用意し、将来は、貨物機による食料等の輸送が出来るようする
・整備工場を作り、飛行訓練センターで行っている、日常整備を可能とする
・駐機場は最大10機とし、ターミナルから少し離れたところに、“プリンセス シャールカ号” の格納庫と整備ゴーレムを配置する
・ターミナルビルは滑走路の東側に設置し、サマランドまで専用の街道を整備する
セバスチャンがメモを読み直している間にも、魔方陣からゴーレムと四角建物のような何かが次々と転移してくる。それを、ゴーレムがトラックに乗せ、ターミナル予定地に持ってくると、土魔法で整地して後に建物を積み上げていく・・・。
(積み木のようだにゃ・・・)
その日の夕方には、ターミナルビルの外観が出来上がってしまった。
『ネオ・・・驚いたか!ゴンドアでは、建築はこうやってユニットをつなげて空港を作っていたのだ』
シャールカは知っていたらしい。
『もしかして、訓練所も・・・かにゃ』
思わず聞いてしまったネオであったが
『そうだ。もっとも魔法で結合させて変形させたそうだから、原型はとどめていないけどな・・・』
シャールカはドヤ顔である。
『では、転移魔方陣もあったのですか?』
メリアが不思議そうに聞いてきた
『いや。あれは知らない。以前はパラストアから運んだのだ』
さりげなくとんでもないことういうシャールカ・・・。
『昔はトラックもあったのかにゃ?』
忙しく魔方陣とターミナルビルの間を行き来するトラックを指さしながらネオがシャールカに向かって言った。
『あんなものは知らん。初めて見た。空港建設時は、大量の荷車で運んだと聞いている。・・・ネオ、あれはトラックと言うのか?』
その返事に驚きと呆れが混ざったネオの複雑な顔が出来上がっていた。
(トラックはどこから来たのにゃ?)
・・・
7日後、サマランドの西に立派な空港が完成した。
サマランドを始めとする新生ゴンドアの王国関係者を招いて式典が行われたのである。
管制官はまだ誰もいないので、ゴーレムによる管理方式となっていた。
パラストア空港に似たターミナルビルは、1Fがインフォメーション、2Fが売店、3FがVIP待合室と展望デッキになっており、その上に管制塔がそびえている。違うのは、運営管理が全てゴーレムであることくらいであったのだが・・・
『・・・』
『・・・』
『・・・』
『・・・』
『・・・』
訪れた人々は、自分たちの今までいた世界との、あまりの違いに声も出なかったのである。
案内ゴーレムによる、空港見学会が行われ、人々はゴーレムに引率されて空港の中を回り、その設備・・・照明や食堂(予定地)、売店(予定地)・・・そして水洗トイレに驚愕するのであった。
ゴーレムによる見学会が終了したころ、ターミナル内に
『まもなく、プリンセス シャールカ号がサマランド空港に到着します。皆さま、展望デッキにお集まりください』
恐らく案内ゴーレムと思わる放送があった。どこからともなく聞こえた声に人々は驚いていたが、それでもパーティ会場になっていた3Fの展望デッキに空港内を見物していた人々がやってきた。
そして、東の空から飛んでくるBE36を見つけると人々指さして
『あれが飛行機というものなのか?』
『こっちに向かって来ているみたいだが・・・』
『ここにいて大丈夫?』
やがて、やって来た飛行機は空港の上空を旋回したのち、滑走路に着陸した。
『あれは、私が操縦したかった・・・』
シャールカは機体を見ながら呟いた。
そう、サマランド空港の開港に合わせ、飛行訓練センターでテストフライトを終えた
“プリンセス シャールカ号”が届けられたのである。飛行訓練センターまで移動する時間が無かったので、テストパイロットのゴーレムによる飛行であった。
・・・
飛行機は駐機場の真ん中に停止した。中からゴーレムが出てくる。
待っていたシャールカの前まで移動すると臣下の礼をとったのち
『プリンセスシャールカ号の納品に参りました。全て問題ございません。お受け取りください』
ゴーレムはそう言ってBE36の鍵をシャールカに献上したのであった。それを仰々しく受け取ったシャールカは、
『ここにサマランド空港の開港を宣言する!』
と叫んだ。
パーティ会場から移動してきた人々は、初めて見る飛行機と、シャールカの勢いに圧倒され、よくわからないまま拍手をするのだった。
・・・
(ふう・・・こっそり支援するのは難しい・・・)
彼によって滅した神が残した世界の遺物を使って、イパラ要塞の地下に古代文明再興のためのユニットを用意した異世界の神・・・。だが、彼の知識は、飛行機と空港の設備に偏っていた。
何時か続きは書くとは思います。でもそれは、明日かもしれないし、1年後かもしれない・・・。
最後に出てきた異世界の神様は
https://ncode.syosetu.com/n6276gp/
を参照ください。