第118話 シャールカ専用機
『実はBE36型を1機作ってほしいのだが・・・』
空港建設の話を終えたシャールカはゴーレムに話しかけた。
『シャールカ様用の機体でしょうか』
ゴーレムは予想していたかのように答えた。
『そうだ。サマランドからの移動に使いたい』
シャールカは、サマランドとパラストア空港の間を飛行できれば、便利だと考えたのだが・・・
『どうぞこちらにお越しください』
ゴーレムに促されるまま、施設の奥に移動すると、広い空間に出た。そしてそこには、1機のBE36型飛行機が用意されていたのである。
『これは・・・?』
予想外の出来事に驚くシャールカ。
『はい、ここは、BE36型飛行機の生産エリアです。この奥で必要なあらゆるパーツが作れるようになっており、ここで最終組み立てを行います』
よく見ると、床には魔方陣が書かれていた。
3人が床の魔方陣に気が付いたことを確認したゴーレムは、
『この魔方陣は、飛行訓練センターの格納庫に転移するようになっています。完成後、飛行訓練センターに移動して、最終テストフライトを行ってから引き渡しとなります』
ゴーレムの説明に頷く3人。
『で、目の前にある機体には何か書いてあるのだが・・・』
シャールカが頬をやや赤くしながら言った。
『はい。これは、プリンセス シャールカ号でございます。南東伯のご命令により、シャールカ様にお渡しするようにご指示を受けておりました。この機体は、ゴンドアの管制システム上、“シャールカ”と認識されるようになっております』
真っ青な機体に、赤のラインが2本入った、特別塗装機になっており、機体番号のところには番号ではなく“SYARUKA”と書かれていた。
『これは、どこまで生産された状態なのか?』
シャールカは顔を引き攣らせながらゴーレムに聞くと
『はい。いつでも飛行訓練センターに送ることが出来る状態です。後は、最終のテストフライトのみです』
その言葉に嬉しそうな顔をするシャールカ
『では、早速送ってもらって、飛行テストをしないといけないな』
シャールカは自ら操縦する気で答えた。自分専用機が用意されていたことに満足していたのである
(さすが叔父上、素晴らしい!!)
『シャールカ様。テストフライトは、我がユニットのゴーレムが担当いたします。引渡し前の機体にシャールカ様に乗っていただく訳にはまいりません』
ゴーレムの口調が今までと違って厳しいものになっていた。恐らく、引渡し前の機体に欠陥があった場合も考えて、シャールカを乗せないように、ゴーレムにINPUTされているのだろう。
(叔父上は先を読みすぎ!!)
シャールカはガックリと首をもたげた。
・・・
その後、ゴーレムには、空港用のゴーレムの作成を指示、また、過去に破壊してしまった飛行訓練センターとパラストア空港の警備ゴーレムの代わりの作成も指示した。特に問題なく作ることが出来るらしい。各空港へは転移が可能らしい(但し、空港からこのユニットへの搬送は出来ないらしい)空港にあるゴーレムコントロールシステムに存在するとのことであった。
(もしかして、昔は、追加でゴーレムが送り込まれるようになっていたのかもにゃ)
最後は説明の対応をしたゴーレムに見送られ、
『それでは、空建設予定地に魔方陣を設置されるのをお待ちしております』
と言われながら、転移魔方陣でイパラ要塞の地下に戻ったのであった。
・・・
『シャールカ様。どちらに行かれていたのですか!!』
戻ってくるなり、沢山の兵士達と共に、アストラルやエリザベートがいたのである。
『ひ・・久しぶりだな。南東伯』
思わず答えたシャールカの声はオクターブ高くなっていた。
そのまま、イパラ要塞内の部屋に案内されたシャールカ、ネオ、マリアの3人は、アストラルやエリザベートの質問攻めに会っていた。
『誰にも言うなよ・・・ここからは、ゴンドアのゴーレム、飛行機、空港建設の施設に転移出来るようになっているのだ』
シャールカは白状せざるを得なかった。その内容に驚くアストラルとエリザベート。
『つまり、この大陸には、古代文明のゴーレム、飛行機、空港建設の施設があるのですか!』
アストラルとエリザベートが同時に叫んだ。
『そうだ。だが、予想通り、私にしか反応しない転移魔方陣だった』
その言葉に首を傾げるアストラルとエリザベート。
『実はな、この施設を叔父が作っていたとき、私は叔父に呼ばれてここに来たことがある。その時、私の魔力パターンを記憶した転移魔方陣を作ったことを思い出したのだ』
シャールカの説明に、頷くアストラルとエリザベート。
『これは、1018年に亡くなった当時最後のホーリートランスの術者によって私の魔力パターンに反応する転移魔方陣を作った時のものなのだ。今となっては、どうやって出来ているのかも解らない・・・叔父は、その実験に使った魔方陣をこの要塞の地下に組み込んでいた。私も、この魔方陣がどこに繋がっているのかは解らなかった。ただ、叔父からは、将来、私の役に立つものを用意して置くと言われたことを、つい先日思い出したのだ』
『それは一体いつ頃のことなのにゃ』
ネオが興味半分に聞いた
『実験は確か1015年のとき、さっきの場所に埋め込まれたのを聞かされたのは、この要塞が出来た1020年のことだ』
この魔方陣は、対象が目の前に現れないと現れない。つまり、私が目の前に行かないと現れないように出来ている。叔父上が目の前に立っても出てこなかった。
・・・
オスニア王宮に2泊した後、シャールカ、ネオ、メリアはパラストア空港に戻った。本当は直ぐにでも戻りたかったのだが・・・アストラルやエリザベートに引き留められたのである。復興したクラトの様子を見てほしいと懇願するアストラルとエリザベートの言葉に根負けした結果であった。
・・・
(はて・・・あんなものいつの間に作ったんじゃ?)
この様子を見ていた新人の神様は首を傾げていた。
シャールカ専用機はBE36型飛行機です。決してモビ〇スーツではありません。
それにしても、南東伯の始祖(シャールカの叔父)は何者なのでしょう・・・。
古代文明でも公式には存在していない、術者を必要としない転移魔方陣は何故存在するのか?
いつか続きは書くつもりですが、一旦ここまで。