第114話 試食会
なんとなく、もう1話書いてしまいました。
ネオとメリアがジャガイモコロッケを色々作って試し終わったころ、アミアからシャールカが戻って来た。
『ネオ、メリア!帰ったぞ・・・』
訓練センターの1Fにシャールカの声が響いた。
『シャールカ様。ネオ様とメリア様は3Fです』
案内人ゴーレムが淡々と答えた。
『・・・そ、そうか』
シャールカは、3Fへと階段を駆け上がった。護衛が慌てて後を追ったのは言うまでもない・・・。
・・・
『ちょうどいいところに来たにゃ』
『お帰りなさい』
ネオとメリアは宿直室に入っていたシャールカに話しかけた。
『今帰った・・・ってそれは何だ?』
シャールカはネオとメリアが食べている謎の食べものが気になった。
『これはジャガイモコロッケというものらしいです』
『ソースというものを掛けて食べると美味いのにゃ』
メリアとネオはシャールカの反応を予想していたように答えた。
『美味いのか?』
シャールカの問いにネオとメリアが頷いた。
『私にも作ってくれ!』
シャールカは我慢できずに叫んでいた。
・・・
『・・・美味い』
ネオとメリアは、追加でジャガイモコロッケを作り、シャールカと護衛たちに振舞った。護衛たちは初めこそ戸惑っていたが、シャールカが食べた反応を見て安心したらしく、食べ始めた。
かなりの数を作ったにも関わらず、シャールカと護衛たちは、それを見事に食べきってしまった。
『こんな美味いものは始めて食べたぞ!』
シャールカは満腹になったのか、腹を擦りながら言った。
(女王様の姿ではにゃいにゃあ・・・)
ネオはその姿を呆れながら眺めていた。
護衛の一人が最後の1つを持っていたパンに挟んで、仕舞おうとしていた。明日の朝食にしようとしたらしい。それをシャールカは見てしまった。
『ん?パンに挟む・・・いい考えだな』
ネオの前に残っていた試作品のコロッケを1つ摘まみ、自分の収納袋の中からパンを取り出し、短剣で切れ目を入れる。それにコロッケを挟んで、ちょっとソースをかけ、口に入れてみた。コロッケだけとは違い、パンとコロッケの組み合わせによって、食べやすくなっていた。
『パンに挟むともっと美味いぞ!』
護衛のやったことを真似ただけということなどすっかり忘れてご満悦のシャールカであった。
それを見たネオとメリアも、試作品コロッケの残りを使って似たようなものを作って試食してみると
((美味しい!!))
コロッケ単体よりもっと美味しかったのである。
『明日は、アミアに移動してコロッケの試食会をするのだ!』
突然、シャールカが叫んだ。
・・・
翌日、BR36型飛行機が2機出発準備を終えていた。操縦者はネオとシャールカである。本来であれば、女王様自ら操縦などありえないのだが、シャールカがどうしても自分で操縦すると聞かなかったのである。なので、メリアはネオの操縦する機体の右席。護衛はそれぞれの機体の後席に座ることになった。貨物部分にコンロ、ジャガイモ、サラダ油、ソースなどの機材や材料を積みこみ、飛行訓練センターでパラストア空港との往復をする旨申請を出し、離陸、パラストアの空港に向う。VORでホーミングしているので、ほぼまっすぐパラストアに向かった結果、1時間としないでパラストアの空港に2機のBE36は着陸した。遺跡(パラストア空港)監視をしていた兵士は、突然現れた飛行機に驚き、緊急事態として王宮に駆け込んでいった。
・・・
『わざわざ出迎え大儀!』
シャールカの声は空港の駐機場に響いた。その姿を見て唖然としているのはアルガソード、ゲルド及びその護衛たちである。そう、彼らは飛行機を見るのは初めてであった。以前、飛行訓練で来た時は、僅かな時間だったので、彼らは直接見ていなかったのである。
『これが飛行機というのですか』
アルガソードはBE36を指さしながら、恐る恐る尋ねた。
『そうだ。ゴンドアの技術で作られた空飛ぶ乗り物だ。早いぞ』
シャールカそう言って破顔した。
『さて、せっかく皆来てくれたのでな、ジャガイモの試食会をするぞ』
そう言うと
駐機場の脇に、持ち込んだ材料や道具を降ろし始めた。唖然としているアルガソード、ゲルド及びその護衛たちに
『運ぶの手伝え!』
と豪快に言い放つシャールカであった。
・・・
駐機場のすぐ脇にある空きスペースに調理道具を並べ、早速、ジャガイモの皮を剥き始めるメリアとネオ。その様子をアルガソード、ゲルド及びその護衛たちは眺めていた。
『ジャガイモは、試験栽培で出来たものだ。ゴンドア産である』
シャールカの元気な声が響いた。
その後、鍋に皮を剥いたジャガイモを入れ茹でる。茹でている間にオーク肉と玉ねぎをミンチにしていく。メリアが剣を使うと瞬く間に終わってしまった。茹で上がったジャガイモとミンチにしたオーク肉、玉ねぎを、ジャガイモを潰しながら混ぜる。ネオもメリアも力は常人の比ではなく強いため、ジャガイモは簡単にすり潰されてしまった。混ぜ合わさったものをメリアが手のひらサイズに1つずつにしていく、この作業はネオよりもメリアの方が上手であった。
(俺がやると大きくなりすぎるのにゃ)
鍋に油を入れ、火にかける。170℃というのはよくわからなかったのだが、野菜くずを入れて、ぱちぱちと油面上で跳ねるくらいでちょうどいいことを見つけたネオは用意しておいた野菜くずを入れて反応を待った。
『これは植物油だ。これに3分間ジャガイモを入れて調理するのだ』
シャールカがアルガソード、ゲルド及びその護衛たちに説明を入れる。
メリアは、溶き卵をくぐらせ、パン粉をまぶしたものを作っていく。ネオが用意した油の温度が良さそうなのを見計らって、メリアがコロッケを油に投入していく。油に入れた瞬間にする音に驚いて、アルガソード、ゲルドが、半歩後退した。それを見たシャールカ
『怖がらなくても大丈夫だ』
と笑いながら言った。
・・・
3分後、メリアがコロッケを油から取り出していく、取り出したコロッケを切れ目を入れたパンにネオが挟み、ソースをかけて皿に並べていく。アルガソード、ゲルド及びその護衛たちの分にシャールカ、ネオ、メリア、そしてシャールカの護衛たちの分も出来たところで
『みんな、1つずつ取ってくれ』
シャールカの号令で出来上がたものを手で掴ませる。アルガソード、ゲルド及びその護衛たちは、そのような食べ方の経験がないのか戸惑っているが、シャールカの指示なので従った。
最後にシャールカも手に取って、
『こうやって豪快に食うものなのだ!』
と叫んだ直後、出来上がったコロッケを挟んだパンに噛り付いた。
アルガソード、ゲルド及びその護衛たちは、その様子を見て、恐る恐る真似してみる
((美味い!!))
皆の気持ちが揃った。
・・・
『食べ方はともかく、美味しいですな』
ゲルドは手の残ったパンくずを払いながら言った。アルガソード、やその護衛たちも頷いている。それを見たシャールカは
『どうだ・・・ジャガイモを沢山作ってみたいと思わないか?』
と言って胸を張った。完全に勝ち誇った姿である。
『シャールカ様。これをブジェで作るのですね』
アルガソードは確認するように言った。
『そうだ。これによって、ゴンドアの食料事情を改善させる。民に腹いっぱい食べさせるのだ!』
シャールカは予想通り・・・いや予想以上の反応に満足していた。
(当分、ラオカ村には帰れそうににゃいな・・・)
ブジェの開墾作業が続くことを予想するネオであった。
ジャガイモは、ゴンドアの食料事情を改善できるのか?
ラオカ村に何時になったら返してもらえるのか気になるメリア・・・。でも、ラオカ村でも作れたらと思ってもいるメリアなのでした。