第112話 収穫と開拓の相談
何となく、もう1話書いてしまいました。
3ヶ月後、大きく成長したジャガイモの葉が黄色くなっていた。
『7割が黄色くなったら収穫といっていたにゃ』
ネオは波高の言葉を思い出していた。
『収穫する際は、また呼んでほしいと思うのだが・・・』
シャールカが誰もいないはずの空間を睨む・・・。
・・・
(どうして判った?!)
新人の神様はシャールカの反応に驚いていた。異世界から持ち込んだジャガイモが育っているのか気になったのである。そして、シャールカに解らないはずの存在を見破られてしまったことで動揺していた。
(仕方がない・・・姿を現して話をしよう)
新人の神様はネオやメリアにも判るように姿を見せた。
『にゃんと!』
『えっ!』
ネオとメリアは、シャールカが睨んだ空間から姿を現した新人の神様に驚いていた。
『何度も呼ぶと、向こうの神に怒られてしまうのだが・・・』
新人の神様はシャールカに懇願するように言った。
・・・
(やっぱり・・・)
シャールカは本当に現れた新人の神様に内心驚いていた。なんとなくいるような気がしただけで、何も確証があった訳ではなかったのである。
(でも・・・ここは最大限利用するしかない)
シャールカは、新人の神様を睨むと
『収穫するので、彼を呼んでほしい。そして、開拓の相談もしたいのだ』
その言葉に、何故か必死に首を縦に振る新人の神様であった。
『波高は、ジャガイモ栽培の専門家ではにゃいはず・・・』
ネオが思い出したように言おうとしたところで、シャールカがネオの言葉を遮るように新人の神様の方を向いて
『召喚する前に栽培する際の問題を聞いておいてくれ!』
強い口調で言い放ったシャールカに
必死に首を縦に振る新人の神様であった。
・・・
(困った・・・)
新人の神様は、熊本空港を眺めていた。思わずシャールカに約束(?)してしまった開拓の相談・・・とても無理な相談に思えたのである。
(あの人間は開拓など知らないはず・・・)
様子を観察する新人の神様は、波高が農業の知識をほとんど持っていないことを見抜いていた。
それでも、波高を召喚するために熊本空港周辺の様子を観察していると、空港の近くに何やら、人に農業を教えているところがあることに気が付いた。
『ナス科の作物は連作障害を起こしやすい。連作障害を防ぐためには土壌を改良するか、昔のようにトウモロコシや豆を、ジャガイモを栽培していた畑に植えて防ぐ必要がある・・・』
教えている人の言葉をじっと聞いている新人の神様は
(これだ!)
波高が寝ている所・・・すなわち住宅に移動した新人の神様は寝ていた波高の夢に割り込んだ。
・・・
『波高と言ったな・・・』
(???)
寝ていた波高の脳内に侵入した新人の神様は、早速、夢を見るように細工して波高の脳内に夢をみているような状態にした。
『異世界の神様?』
波高が辛うじて反応する
『そうじゃ!お前が伝えてくれたジャガイモの栽培を広めることになりそうでな。収穫するので、もう一度来てほしい。そして、ジャガイモ栽培が上手くいくように教えてやってほしいのだ』
新人の神様は少しでも威厳を作ろうと繕ってみたのだが
『私は農業の専門知識はないです。無理です』
波高にあっさり断られてしまったのである。
『連作障害をいうものがあるそうだ。その対策を伝えてくれればよい』
新人の神様は、先日聞いた話をしたのであった。すると、何故か波高は理解したようで
『トウモロコシの種を持っていけばいいでしょう』
次の週末にフライトすることを約束したのであった。
・・・
波高は、JA4169の出発準備をしていた。
『今日は何処へ?』
整備士さんの声が聞こえてきた。
『ローカルで阿蘇を飛んできます』
波高は答えた。いつも背中に背負っている登山用の小さいザッグには、ホームセンターで売っていたトウモロコシの種が詰まっていた。
離陸後、まっすぐ阿蘇山を目指して上昇する。高度6000ftで中岳上空に来た時、機体は真っ白な雲に覆われた。
(やっぱり)
何も言われていなかったが、JA4169で中岳の上空を6000ftで飛行するとこうなることを理解した波高であった。
2秒後、雲はなくなり、視程は開けた。VOR1を113.45MHzにセットすると、DMEが20マイルと表示される。
(前回と同じだ)
VORはTOの状態で、ほぼ北を示している。VORの発信元は北にあることを示していた。熊本の上空であれば、この周波数は天草空港の位置のはずなので、西(南西)側でなければならない。・・・波高は異世界に転移したことを理解したのであった。
(前回同様、着陸しますかね)
波高は前方に見える滑走路に向かった高度を下げていった。
・・・
『来たのにゃ!』
着陸するJA4169を見て、ネオが叫んだ。新人の神様から聞いていたので解ってはいたのだが・・・。
慌てて、格納庫前に移動する。すると、シャールカとメリアも既に来ていた。
『予定通りだな』
にんまりとほほ笑むシャールカ。メリアは特に思うところがないのか淡々としている。
JA4169は3人の待つ手前で停止した。
・・・
出てきた波高に手を振るネオ。お辞儀するメリア。仁王立ちで見ているシャールカ。三者三様である。
『ジャガイモが育ったそうですね』
波高は開口一番、気にしていることを口にした。その言葉ににやけるシャールカ。
『そうだ。収穫するので、確認してほしい』
そう言って畑に移動を始めた。
・・・
『ちゃんと育ちましたね』
ジャガイモを収穫しながら波高が言った。掘り起こされるジャガイモを¥の苗には大きな芋がいくつもついていた。
『これが食えるのか・・・』
シャールカは収穫された芋を1つ手に取って眺めている。収穫した後、飛行訓練センター3Fに移動して、早速ジャガイモを茹でてみることにした。
『皮は剝いてから茹でます』
波高は、自宅から持ってきたピーラーを使ってジャガイモの皮をむいていく。その様子を唖然と見ている3人。
(便利な道具を持っているのにゃ)
(あの道具が欲しい・・・)
(あれを真似させて作らせよう)
ネオ、メリア、シャールカと思いを巡らせていた。
茹で上がったジャガイモにバターを付けて食べ始める波高。もちろん、バターも持ってきたものである。3人は、波高から渡されたバターのついたジャガイモを勧めらえるまま食べていた。
((美味い!!))
3人の気持ちが揃った。
『波高殿、これをこの世界で広めていこうと思っている』
シャールカは、突然、真面目に話始めた。
『いいと思いますけど』
波高は対して気にもしていない、だが、夢に出てきた“連作障害”のことを思い出した。慌てて、持ってきたトウモロコシの種を取り出すと
『ジャガイモは続けて何回も同じ畑で作ると、病気にかかってしまいます』
『えっ?!』
波高の言葉に思わず高い声を出してしまったシャールカであった。
『なので、このトウモロコシと交互に植えるとよいでしょう。肥料は沢山入れてあげてくださいね』
そう言って、インターネットで調べてきたトウモロコシの栽培方法が書かれた紙を渡す・・・
(???)
(???)
(なるほどにゃ)
当然、日本語で書かれたものなので、シャールカとメリアには読めなかった。が、ネオは、新人の神様から貰っていた能力
“一つは言語能力。この世界の全ての言葉が読み書きできる”
によって、この書類が読めたのである。
『ネオ。読めるのか?』
シャールカが確認するように言った
『読めるにゃ。大丈夫にゃ』
・・・
その後、川の近くにある草原から開拓する話をシャールカがして、波高がいくつか意見をいったところで新人の神様が現れた。突然現れたにも関わらず、波高を含め、誰も驚きもしない
(・・・はあ)
ため息をつく新人の神様であった。
『この度はありがとう』
新人の神様の言葉に、頷く波高。
(本当は面倒なんだけど・・・それなりに金もかかるし・・・)
波高は心中で呟いた。
次回はいつか書くかもしれません。
ちなみに、熊本空港のすぐ近くには某大学の農学部が近く引っ越してくるそうです。