第103話 手がかり
短いです
(やっぱり・・・)
N6276GPの神の世界にやって来た“新人の神様”は討伐基地の1階に来ていた。瘴気発生装置があったはずのところは、大きな空間が広がっていたのである。彼がN6276GPの神から貰ったのは、ここにあった装置の試作品と言われたもので、稼働させるのに、膨大な魔力が必要だったものだった。
(私があんなものをパラストアに設置してしまったから・・・。設置する前に今回のことに気が付いていれば・・・)
最初の文明崩壊は、その試作品が稼働したことだったからである。激しく後悔している新人の神様であった。
(瘴気封印装置を持ち出しているということは、きっとどこかで私の世界にしたようなことをたくらんでいるに違いない)
新人の神様は、必死に痕跡を探る。だが、転移先の手がかりは何も見つからない。
・・・
(ん? 誰か来る)
突然、外からの出入口が開いた。慌てて身を隠すと、男1人、女2人が
『ないねえ~♪』
『ない~!!』
『ないぞ!!』
ほぼ同時に3人は叫んだのである。しばらく、周囲を探すように見渡していた3人は、やがて、食堂に向かう通路に入る扉に1枚のメモを発見し、
『なんじゃこりゃー』
と3人同時に叫びだした。
(うるさい奴らだ)
彼らが討伐基地の食堂に消えたのを確認した後、彼らが見つけたメモを見ると、
瘴気封印装置借用中
初代 アンクス王
とだけ書いてあった。
(初代 アンクス王・・・?まさか)
新人の神様は思い出したのである。
『お前たちの行いは、阿久津、またはアンクス王として調査するからな。悪事や悪戯は厳罰だぞ』
今の世界を担当する時の教育中に言われた言葉であった。
(ということは・・・早く、バルディカ達を見つけないと大変なことになってしまう)
・・・
(とりあえず、あの3人の様子を見てみよう。ひょっとして何か手掛かりがあるかもしれない)
新人の神様は、討伐基地の食堂に向かって移動していく。3人は、この基地で食事を始めた。
(おかしい・・・この基地はこの世界ではオーパーツのようなもののはず・・・なのに勝手知った感じで食堂を使っているぞ・・・こいつらは何者なのだ)
それでも、姿を現すわけにはいかないため、じっと観察を続ける。3人は新人の神様には気が付いていない。
その後、女1人を食堂に残し、格納庫に移動していくのを追いかけていく。格納庫にはBE36型とは違う形をした飛行機があった。その飛行機を見て2人が何か言っている。すると、女の方が気になることを口走った。
『なあ・・・あの空馬車って、阿久津とかいうのが乗っていたはずじゃ・・・』
(あくつ・・・阿久津か!)
聞き覚えのある名前に驚く、新人の神様・・・。
その時、格納庫の入り口から大きな声がした。食堂に残っていた女である。この女も飛行機を見て驚いているようである。
(私の世界と違って、AVGASで動くエンジンを動力としているのか・・・にしても空馬車とは妙な言い方だな)
3人の会話を聞きながら飛行機を調べていると、3人は、滑走路に移動していった。
飛行機の中に入ってみると、左席部分から神独特の痕跡を感じる。
(間違いない)
阿久津というのが乗って、ここまで飛行してきたらしいことは、さっきの3人の会話から想像できた。そしてこの痕跡・・・間違いなく調査神(員)の痕跡であった。
(早く見つけないと・・・)
見つからない手がかりに焦る、新人の神様であった。
次回は未定です。