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ネオー間違って異世界に送られた猫  作者: OPPA
第9章 間章
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第96話 討伐依頼をエスケープ

『久しぶりだな。覚えているか?』

ヴァン(ギルマス)の声が響いた。


(この人苦手だにゃ)

ネオは思わず手で顔を擦った。無意識にする動作なのだが、これをするたびに自分が猫であることを自覚するネオであった。

 そんなネオの気持ちに構うことなく、ヴァンは話を続ける

『アントラニア王国との国境付近でオークがよく出るのは知っているか』

ヴァンは、確認するようにネオ

メリアを見る。


(ミラが言っていた件だにゃ)

ネオは思わず手で顔を擦った。


『もちろん知っているにゃ。以前通った時もオークに会っているにゃ』

惚けて以前通った時、2回ともオークに遭遇していることを話し出す。メリアもなんとなく分かったのか、話を合わせ、馬車を追いかけるオークを討伐した話を聞いていた。


『そうか・・・戦争前からオークが出るところだったんだな・・・』

ヴァンは、妙に納得している。さらに続けて、

『わかっていると思うが、この大陸唯一の東西を渡る通商路だ。なんとしても安全を確保したい』


『つまり、オークの討伐依頼ですか?』

メリアが確認する。


『正確には、オークの巣の調査を殲滅依頼だ』

ヴァンはそう言うと、金貨の入った袋を目の間に置いた。

『ここに金貨100枚ある。受けてくれるのなら持って行ってくれ。殲滅したらもう100枚だ!』

ヴァンはそういって胸を張った。大奮発したつもりである。


『金には困ってないにゃ』

ネオが呟いた。

『えっ!』

まさか断られると思っていなかったヴァンは焦った。


(まずい・・・後は騎士団くらいしか対処出来ないし・・・)

騎士団を護衛にあたらせてはいたが、ロディア国も処置に困っていたのである。そのため、冒険者ギルドに討伐依頼が出たのであるが、この国の冒険者でオークを倒せるのは、ネオとメリアしかいなかったのである。


『私たちは、シャールカからアミアに来るように言われています。なので、今は依頼を受けることが出来ません』

メリアから追い打ちをというか、最後通告のような回答を受けてヴァンはうな垂れた。

(よりによって、シャールカ様からのお呼び出しだと・・・でもなんでアミアに?)


『何でアミアにシャールカが居るのかは知らないのにゃ』

ネオが、ヴァンの気持ちを察したのか、付け加えるように言った。実際は、(ウォーターマウンテン)のELT信号調査のためであるのは知っていたが、飛行機のことを知らないヴァンに説明するのが面倒だったこともあり知らないことにしたのだった。

(ひょっとして、他に理由があったりして・・・にゃ)


放心状態のヴァンを放置して、ネオをメリアは冒険者ギルドを出た。


『今日は、カバチで泊まることにしようにゃ』

ネオの言葉にメリアは黙って頷いた。


・・・


『懐かしいにゃ』

カバチ村までは、ロディアから約30kmあるので、普通の人であれば1日かけて歩く距離である。が、レベル20の2人には半日とかからなかった。村を囲む柵も、見張り台も、以前のままである。そして、村に入ったあと、街道沿いの店から

『魔石の買取をしまっせ~』

見覚えのある、明らかに太りすぎのおっさんが声をかけてきた。


『今日は魔石持ってないの』

メリアは懐かしいのか、揶揄っているのか、答える必要もないのにおっさんに話しかけている。

『次回来るときはぜひよろしくお願いしまっせ~』

おっさんも暇なのか返事をしてきた。


・・・


以前泊まったことがある宿を見つけると、ネオは中に入っていった。

『2人なんだが、別々にゃ』

ネオの前には、いかにも無愛想という感じの中年女性が立っていた。


『2食付きで銀貨10枚・・・』

ネオが銀貨10枚を渡すと、


『以前、泊まったことがあるね。あの時と同じ2階の奥の部屋だよ』

そういうと中年女性はネオに2つ鍵を渡した。


『覚えていたのかにゃ?』

ネオが驚いて言うと、


『ああ。村をオークから守ってくれた2人のことは良く覚えているよ。また来てくれて嬉しいよ。村長には黙っているから安心してくれ!』

客に対してはいささか乱暴な口調ではあったが、悪意はないらしい。前回来た時は、オークを倒した後、この女性が平身低頭だったのを思いだしたが・・・。

(時間が経つとにゃ・・・)

勝手に納得するネオであった。

 この夜はオークが現れることもなく無事に過ぎてゆく・・・


・・・


 翌朝、宿を出たネオとメリアは、東に向かう。途中、馬車を追い越していく度、御者に驚かれるが、いちいち気にしてられないのでそのまま走り去っていった。そして、昼過ぎには、ガロータの街まで着いたのである。街に入ると、魔物に破壊されたのが嘘のように綺麗な街が出来ていた。


『凄いにゃ』

思わず呟いたネオに

『見事に復活していますね』

メリアも感心しながら街を眺めていた。


そして、街の中央まで来た時、広場にある石像が、ネオとメリア見えてきた。


((えええ~!!))

ネオとメリアは声には出さなかったものの、その石像を見て顔を引き攣らせていた。それは、オークを提供するネオとメリアの姿だったのである。


『ネオさん!! メリアさん!!』

背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


思わず2人が振り返ると、そこには、少し大きくなったシャノンがいた。

『シャノンだにゃ』

『シャノンさんですね』

ネオとメリアが同時に叫んだ。


・・・


そのまま、成り行きでシャノンの後をついていくネオとメリア。着いた先は、以前窯のあった場所であった。但し、そこには立派なお店が出来ていた。

『再建したお店なんです』

そういうと、シャノンは、ネオの手を引っ張って店に入った。


『いらいっしゃ・・・ネオさん!』

女性の声が、途中から叫び声になっていた。そう、中にいたのはシャノンの母親であった。


『あの時は本当にありがとうございました。』

大量の食料を置いていった出来事を思い出したのか、平身低頭のシャノンの母親であるが、ネオは、店の一角に見覚えのある窯を見つけた。


『あの窯って・・・』

ネオが窯を指さしながら言おうとすると、


『はい。あの窯はシャノンを守り、ネオさんにいただいた食料をパンにするのに使った窯です。店を再建するとき、あの窯はそのまま残したのです』

よく見ると、窯の脇には説明の看板があった

“この窯は、子供の命を守り、再建時のパンを焼いた大事な窯です”


『この窯は、街の記念物になっているの』

シャノンが胸を張って答えた。


『記念物?』

『はい。街の復興に寄与した記念物として認定されました。でも、今も現役でパンを焼いてますけど・・・』

シャノンの母親は多少恥ずかしそうに言った。


今も使われている窯を不思議そうに見るネオと、それを見る3人・・・。何れにも共通しているのは、壊滅したガロータとは思えない平和な姿だった。

次回は5/18の予定です。

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