第91話 4ヶ国連合
『ここでよいな』
ワイバーンがアミアの脇にある、パラストア空港の滑走路を指さした。
『問題にゃい』
ネオの返事を聞いたワイバーンは、パラストア空港に着陸した。わざと飛行機が着陸するように・・・
『ちょっと真似てみたのだ』
車輪はないので、滑走路上で停止するまで速度を落としてから接地したのだが・・・
『普通に降りればいいのにゃ』
ネオは呆れながら言った。
『では、我は家に帰る』
ワイバーンはネオたちを降ろすと、そのまま滑走路を走るようにしてから跳び上がった。
『あいつ、飛行機の真似が好きなのにゃ』
・・・
アミアの街門まで行くと、馬車が待機していた。ネオたちが門に現れると、馬車から1人の男が出てきて、ネオの元に駆け寄ってきた。
『お待ちしておりました』
ゲルド・ド・イスタール《アントラニア王国の宰相》はネオの右手をとって目を輝かせていた。ネオたち3人は、ゲルドの用意した馬車に乗せられ、王宮に向かっていた。
・・・
ネオたちが連れていかれたのは、見覚えのある部屋だった。そう、先日、アントラニア王国、インゴニア王国、オスニア国、ロディア国、そして、ネオたち3人で会議をしたホールのような部屋である。そして、何故か、4ヶ国の宰相がそこに集まっていた。
『ここはシャールカが説明した方がいいにゃ』
そういうと、ネオはシャールカを前に押し出した。その姿を見てこの部屋にいるネオとメリア以外の全てが驚いていたが、シャールカはその意味を理解したらしい。さらに数歩前に歩いた後、左手を腰に当て、右手を前に突き出した。
『諸君!バルディカの阿保どもが手にしていた瘴気発生装置を破壊してきた。今、解っている瘴気発生装置は全て破壊出来た』
シャールカの言葉を聞いて、4ヶ国全て宰相の顔がほころんだ。
『だが、私はバルディカが許せない!』
4ヶ国の宰相とその随行員全てに緊張が走った。
ここで、ロディア国のバルバスが手を上げた。彼は、宰相としてこの会議に臨んでいた。ロディア国には宰相がいなかったので、大統領の任命であるらしい。
『先日、バルディカ帝国より、降伏勧告が我が国に届きました。それによると、バルディカ帝国が1000年前の統一国家での正当な王位継承者の末裔であると書かれていました。魔物が溢れて滅びたくなければ、バルディカ帝国の一員となれというものでした』
バルバスの発言を受けて、他の3ヶ国も同じような書類を貰ったといい始めた。
シャールカの顔が真っ赤になっていく、誰の目にも怒りで満ち溢れている状態であることが理解出来た
『ゴンドアの王位継承者は、1000年前の王であった父の娘である私である。バルディカ伯は、叔父であった南東伯よりも下だ。つまり、私を抜きにしても、奴らは正当な王位継承者ではない!』
部屋は異様な空気に包まれた・・・。いや、謎の張りつめた空気が充満していた。
『瘴気発生装置が無ければ、魔物の大量発生はないにゃ』
ネオはそういった後、バルディカ帝国での出来事を説明した。
『実は、バルディカ帝国の軍勢が、我が国との国境である、ローラシア川に集結してきています』
バルバスの発言に、他の3ヶ国は動揺し始めた。レベルのことを抜きにしても、軍事力は圧倒的にバルディカ帝国の方が上であった。ロディア国に攻め込めば、1ヶ月もしないうちにロディアはバルディカ帝国に占領されるだろうと思われた。
(バルディカ帝国がマスターダンジョンのあるロディアを占領するのは不味いにゃ。それに、そのマスターダンジョンは、村のすぐそばにある。この村がバルディカ帝国の隠れ兵士とその家族であるのにゃから・・・)
『・・・・・』
『・・・・・』
『・・・・・』
他の3ヶ国もバルディカ帝国の軍事力を警戒してはいた。だが、彼らへの対抗策がないまま、ローラシア山脈に守られていたため深刻に思っていなかった。
エリーザベート・ド・バンドニア《オスニア国の参謀》が立ち上がった
『ロディア国に援軍を送りましょう』
この言葉を受けて、ローベス・ド・デコルニア《インゴニア王国の宰相》が立ち上がった
『我が国もロディア国に援軍を送りましょう』
ゲルド・ド・イスタール《アントラニア王国の宰相》は、この2ヶ国発言を受け、大きく頷くと、
『ロディア国の同盟国である我々も援軍を送ろう』
といって立ち上がった。
『ありがとうございます』
バルバスは3ヶ国に向かって頭を下げた。
『援軍の兵士全てをレベル3にしてから派遣しよう』
この会議で、ロディア国に送られる援軍の兵士を全て、湖畔のダンジョンでレベル3にすることが決定された。
・・・
ネオたちは、アミア王宮内に宿泊するように懇願されたが、ネオは断った。アミアの街中にある宿に入ったネオたち3人は、ネオの部屋に集まった。ネオが、メリアとシャールカを呼んだのである
『大事な話とはなんだ』
シャールカが問いただす。ネオは、今まで大事な話をするときでも、事前に大事とは言わなかったからである。
『マスターダンジョンを守らにゃいといけないのにゃ』
((???))
ネオの言葉は、メリアとシャールカは理解できなかった。
『管制所に書いてあったメモの中身を思い出すのにゃ』
突然、メリアの表情が変わった
『ダンジョンコントロール室に書いてあったマスターダンジョンのSWですか?』
『そうにゃ』
ネオは、メリアが理解できたのに安心したのか、大きく息を吐いた。
『だが、今の連中はあのダンジョンの最奥に行けるとは思えないが・・・』
シャールカは何か問題なのか解らないらしい
『そうにゃ。人間はにゃ。だが、魔物を大量発生させたらどうかにゃ?』
『魔物をマスターダンジョンで異常発生させて・・・1000年前に起きたことか!』
ネオの言葉で、シャールカを気が付いたらしい。
『1000年前、マスターダンジョンに魔物が溢れ、ダンジョンは機能を停止した。その結果、瘴気封印装置でしか魔物を抑えることが出来なかったではないのかにゃ?』
『ああ・・・何故か、デコルのダンジョンと南東訓練所は稼働していたようだが・・・』
シャールカはそこまで言って気が付いた。
『バルディカの都合がよい様になっていた』
『そうにゃ』
何故かは解らないが、バルディカの手が及ばないデコルのダンジョンと、バルディカと共謀していた可能性のあるドニア近くの南東訓練所は稼働していた。つまり、南東訓練所とデコルのダンジョンは、マスターダンジョンと切り離されていた可能性があるということである。
『マスターダンジョンのSWを止められるとデコルのダンジョン、アミアのダンジョン、南東訓練所しか稼働しなくなると思うのにゃ。更に、南東訓練所は、何で操作されているか解らないのにゃ。ある日突然止まるかもしれにゃいのだ』
『確かに・・・』
『ありえます』
ネオの説明に納得するシャールカとメリア。ダンジョンによるレベルアップがなければ、軍事力で勝るバルディカ帝国が有利になるのは明らかだった。
『マスターダンジョンを守るのにゃ!』
次回は今日中にします。