表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネオー間違って異世界に送られた猫  作者: OPPA
第8章 バルディカ帝国編
103/189

第87話 プロボディス

オルトラ(ギルマス)の手配で、街一番の宿に止めてもらったネオたち3人は、翌日、ロディア国に向かって歩いていた。いや、逃げるように、早々に出発したのだった。オルトラ(ギルマス)は何もしないだろうが、面倒な奴が現れる可能性を心配したからである。


『“ワイバーンの雫”て、何か特別な力とかあるのかにゃ』

ネオがシャールカに向かって話しかけた。


『それは聞いたことがない。但し、ワイバーンは他の宝石と見分けることが出来るらしい。だれが作ったものであるかもな・・・』

シャールカは思い出すように言った。


『買った人はどうしているのでしょうか』

メリアが不思議そうに言ってきた。使い道のない宝石など、メリアには価値がなかったのである。


『金持ちの見栄ってやつだな。見せびらかしていた奴もいた』

シャールカは不機嫌そうにいう。何か嫌なことがあったのかもしれない。


『まあ、ワイバーンのところに寄ってみることにしようにゃ』

ネオがそう言いながら突然、走り出した。


『国境だにゃ』

以前にも見た国境を示す石碑である。


『確か、このあたりでオークが来たんですよね』

メリアが思い出すように言う。


『そんなこと言っていると・・・』

シャールカが言いかけたとき、前方に土埃が上がっているのが見えた。


『ありゃ・・・また出たかにゃ』

ネオも呆れている。

『ここって、魔物が出やすいのでしょうか』

メリアは周囲を見渡していた。


そうしているうちに全速力で荷馬車が走ってくる。違うのは、荷馬車がオケライに向かっていることくらいである。そして、荷馬車が通り過ぎたのち、オーク10匹が追いかけるように迫ってきた。


『前より多いにゃ』

『多いですね』

ネオとメリアは冷静であった。


『私一人では、ちょっときついか・・・』

シャールカは、自己強化の訓練対象のように見ている。


『ワイバーンへの土産にちょうど良いにゃ。にゃので、剣で切るのはなしにゃ』

ネオはそういうと、


『パラライズ』

10匹のオークはあっけなく倒れている。集団になって走ってきてくれたので、1回で済んでしまった。


『魔石は回収しますよ』

メリアはそういって、止めを刺しながら魔石に抜いていく。作業の終わったものからネオがアイテムボックスに収納していった。


『便利だなあ・・・』

容量無限大のアイテムボックスに感心するシャールカ・・・。彼女も家一軒くらい入る収納袋を持っているので今の時代では明らかにチートなのだが、本人に自覚はないらしい。


『ワイバーンへの土産も出来たので、さっさといこうかにゃ』


・・・


『お前たち・・・どこにいくのだ』

ロディア国に入って、最初の街であるニコレッツの門番に言われたネオは


『冒険の旅をしているのにゃ。これからロディアを回るのにゃ』

そう言って街に入ってしまった。


『また・・・』

メリアは呟いた後、慌てて後を追う。シャールカはゆっくりと後を追った。

(どうせ、市場だろう・・・)


・・・


シャールカが市場を探すと、ネオとメリアはすぐに見つかった。

『こっちのパン全部にゃ』

『そっちの干し肉も全部にゃ』

手当たり次第に購入していくネオにメリアは少々呆れ気味である。とはいえ、この食料が役に立っているのも間違いないので何も言わない・・・。いや、言えないのだった。


『今日はここに泊まるのにゃ』

まだ昼前である。ガロータに今日中に着くのは容易に思えたが、ガロータは先日、魔物に襲われて壊滅した街である。どの程度復興したかは解らないが、期待しない方がいいと思われた。


『兵士さんに見つかると面倒になりそうですし・・・』

メリアがガロータでの出来事を思い出していた。2匹のオーク肉を提供したことを知っている兵士がいたら、そのまま通過させてもらいにくい。まして、復興途中のはずで物資が不足していることが予想できたからであった。


『お前たち、この先の街でも何かしたのか?』

事情を詳しく知らないシャールカは目を細めてネオを見た。


『悪いことはしてないのにゃ!!』

ネオは抗議するようにシャールカを見ながら答えた。


・・・


翌日、宿を出ると、ガロータに向かって走った。急ぐ必要な無いはずだが・・・。


ガロータの東門で冒険者カードを見せたネオに

『この街はまだ宿もないぞ。まだ午前中だから、先の村まで行った方がいいと思うぞ』

と門番はいった。どうやらこの門番はネオのことを知らないらしい。


『そうするにゃ』

ネオは答えると街中に入っていった。メリアとシャールカも特に何も言われることはなく、ネオに続く。街中は瓦礫の除去がようやく終わったという感じで、テントや露店が少しあるだけだった。


『こりゃ酷いな・・・』

魔物に襲われて壊滅したことを聞いていたシャールカではあったが、実際の光景を見て驚いていた。街壁はほぼ無事にも関わらず、中は壊滅だったからである。特に、西側と南側の被害が大きかった。


『魔物は西から入って、南に抜けていったそうです』

メリアに言われてシャールカは頷いた。


『このあたりにゃ』

ネオは街の西側にある場所に来ていた。瓦礫は取り除かれており、無数に散乱していた死体もなくなっている。どこかに埋葬されたのだろう・・・たぶん。


『スープはいかがですか~』

ネオたちに声が聞こえてきた。見ると、窯の脇にテントを設置している露店がある。道行く人にスープを売っているらしい。ネオたちがテントを見ると見覚えのある人の姿があった。


『ネオさん!! メリアさん!!』

女の子は、テントの中から飛び出してきた。


『シャノンだにゃ。元気そうだにゃ』

ネオは目を細めてシャノンを見た。


『あれからスープの露店を始めたんです。生き残った兵士さんたちに狩りをしてもらって、何とか材料を確保して・・・』

やはり苦労しているらしい。


『1杯食べていってください』

シャノンはそういうとネオをテントに引っ張っていった。出されたスープには、肉が浮いていた。街の外で狩りをして得た肉なのだろう・・・味は塩しか感じないものであったが、それだけ物が不足しているということらしい。ネオたちはシャノンから渡されたスープをいただいた後、テントに一緒にいた彼女の母親に挨拶していた。


『まあ・・。あの時はありがとうございました。本当に助かりました』

シャノンの母親はネオを見るなり平身低頭である。


『食料は足りているのかにゃ』

ネオは言葉に、シャノン母親とシャノンは揃って顔を曇らす・・・。


『正直、良くないです。パンも十分に手に入りません。窯は無事なので材料さえあれば作れるのですが・・』

シャノンの母親は伏し目がちに言った。


『そんなことだろうと思ったのにゃ』

ネオはそういうと、テントの奥にある材料置き場のようになっているところに行って、アイテムボックスから大きな袋を取り出した。


『まあ・・これは・・・』

シャノンの母親が驚いている。それは、小麦粉の入った大きな袋だった。


『ニコレッツで買ってきたのにゃ』

そう言って小麦粉の袋を置いた。


『すぐにパンはできないからにゃ』

そういうと、ネオは更にニコレッツの市場で買ったパンと干し肉を取り出して渡したのだった。


『あの・・・とても嬉しいのですが、私たちにはお支払いするお金がありません』

シャノンの母は、悲しそうに言った。


『これはプレゼントにゃ。遠慮せずに食べてほしいにゃ』

ネオの言葉に、驚きながらも嬉しさを隠せないシャノンの母親とシャノンであった。


・・・


結局、ニコレッツで買い付けたほとんどの食料を渡してから、すぐ、北門に向かい街道を北に向かった。今日中にはプロボディスの村に着くことが出来るだろう。


『あの娘は何者なのだ』

シャールカがネオに聞いてきた。


『壊滅したガロータで、窯の中に隠れていた女の子にゃ』

『ネオさんが見つけたんです』

ネオの答えにメリアが補足した。


『だからって、人が良すぎないか?』

ネオが渡した小麦粉、パン、干し肉は、衛兵をしている彼女の父を含めても1ヶ月は食べていける量であった。シャールカの常識として、他人にそんな施しをする人など見たことがなかったのである。


『ネオさんはそういう人なんです』

メリアが何故か自慢げにシャールカに言った。


・・・


プロボディスの村が見えてきた。村と言いながら、集落には壁が出来ており、見張り台のようなものもある。壁の周辺に畑が広がっていた。

『あれがプロボディスかにゃ』

『村というより、街だな』

ネオの言葉にシャールカが反応する。他の街道沿いの村とは明らかに様子が違う、小規模な要塞のような感じであった。街壁には街道に沿って門があったが、門番はいない。通行は問題ないらしい。


『宿を探そうにゃ』

集落には、1軒の宿があった。


入り口に看板が掛かっていた

“冒険者の宿 ワイバーン”


『なんか意味深な名前だにゃ』

ネオはそういいながら扉を開ける。中には、小さな女の子がカウンターに立っていた。


『いらっしゃいませ』

女の子は笑顔を作って話しかけてきた。


『3人にゃ。部屋は別々にゃ』

『夕食、朝食付きは一人銀貨5枚になります』

ネオの言葉に女の子が答える。ネオは銀貨を15枚渡した。


女の子は、カウンターのすぐ後ろから鍵のようなものを3つ取り出し、

『部屋は2階の一番奥から3つをお使いください。夕食はもうすぐ出来る予定ですので、出来ましたらお呼びします』

『わかったにゃ』

ネオは鍵を受け取ると、メリアとシャールカに1本ずつ渡した。


『お客様方は狩りが目的なのですか?』

カウンターの女の子が聞いてきた。見ると、1Fの食堂には狩りから戻ってきたらしい冒険者が数名、席に座っていた。ガロータに持っていくと売れるのだろう。


『まあ、そんなこところにゃ』

ネオは曖昧に答えた。


『東に行くとワイバーンの村があります。なので、あまり東にはいかない方がいいですよ』

女の子はそういうと厨房にいってしまった。


・・・


『た・・・大変だ。オーガが出たぞ』

ネオたちが部屋に行こうとしたとき、外から声が聞こえてきた。

(この村は対処する方法があるのかにゃ)

見ると、先ほどまで座っていた冒険者はいつの間にかいなくなっていた。部屋に逃げ込んだらしい・・・。


『お客さん。部屋に入っていてくれ。村の門を閉めて村で対処するからな』

厨房から体格のいい男が出てきた。どうやら、先ほどの女の子の父親らしい。


『父さん。気をつけてね』

女の子の言葉に

『この矢で何とかする』

右手に持っていた矢を見せたあと、男は宿を出ていった。


『ここでは、オーガが出るのかにゃ』

女の子にネオが聞いた。


『数年に1回くらいらしいです。なので、街壁を作ってあるそうです』

女の子の答えに、


『ちょっと様子を見てくるのにゃ』

そう言って、ネオは外に出ていった。慌ててメリアとシャールカも続く。


・・・


『ついてこなくてもよかったのにゃ』

ネオの言葉に

『この村がオーガにどう対処するのか見てみたいと思ったのだ』

シャールカが答えた。


『ネオさんだけ行かせるわけにはいきません』

メリアは自分が11歳であることをすっかり忘れているらしい。


北門付近に人が沢山集まっていた。


『村長。あんなに沢山現れたのは記憶がないぞ』

『わしもじゃ。1匹なら何とか追い返せるが、10匹はいたな・・・壁が持つかちょっと・・・』

村人と村長らしき老人の会話が続いている。ちょっと、飛び跳ねて壁の外を見ると、オーガが街道に急遽作ったらしい壁を壊していた。

(あれではすぐに襲われるにゃ)


ネオは、壁の近くまでくると、飛び跳ねて壁の外に出た。それを見たメリアとシャールカがあとに続いた。


『ありゃ。何者だ!』

ネオたちの姿を見た村人は皆、驚いていた。


ネオは振り返り、

『ちょっと待っててにゃ』

そういうと、街道に急遽作った壁と北門の間に立った。

オーガが街道に急遽作った壁を壊し、その姿をネオに見せたとき、


『ホーリーアロー』

『ホーリーアロー』

『ホーリーアロー』

『ホーリーアロー』

『ホーリーアロー』

ネオは出てきた5匹のオーガに立て続けに矢を打ち込んだ。矢はいずれもオーガの頭に直撃し、5匹のオーガはその場に倒れた。


『残りは頼むにゃ』

ネオの言葉を受けて、メリアとシャールカが剣を持って走っていく。残りのオーガは、逃げだそうとしていたが、メリアとシャールカの剣の錆になっていた。


背後で大きな歓声が沸いた。この様子を皆が見ていたのである。

ネオたち3人は、その歓声に答えることもなく、オーガの死体から魔石を抜いていく。


『こんなに要らにゃいな』

オーガの肉は大量であった。そのとき背後から声がした。


『この肉、買い取らせてください』

ネオは振り向くと、そこにはさっき村人と話をしていた、村長らしき老人の姿があった。


『肉は要らにゃいからあげるのにゃ。後の処置をよろしくにゃ』

そういうと、ネオたち3人は宿に引き上げた。


・・・


宿に戻って1時間後、

『夕食が出来ました~』

女の子の声がした。


『にゃ?』

食堂にネオたちが言ってみると、村人たちが皆、食堂に集まっており、オーガの肉が大量に調理されて積み上げられていた。

先ほどの老人がネオのところにやってきて

『いただけるということでしたので、1匹急ぎ解体して皆で宴会をすることにしましたのじゃ。本当にありがとう』

ネオたちと村人、この村に来ていた他の冒険者も含めての宴会が始まったのであった。

次回は3/23 9時の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ