第86.5話 ゲルド・ド・イスタールの報告(その7)
『はあ・・・』
アルガソード、はゲルドと共に、アルガソードの執務室にいた。
『とりあえず、ロディア国、インゴニア王国、オスニア国とは、相互に兵士をダンジョンに送りあうことで合意しました』
ゲルドの言葉に黙って頷くアルガソード。ネオがインゴニア王国、オスニア国とまわって湖畔のダンジョンのことを話してしまったこともあり、どうにもならなかった。
『実際にアミアも危なかったみたいだしな・・・』
ネオたちが、アミアの西(パラストラ空港の西)で闘ったヒャッケラキアは相当な数であったらしい。あれに襲われれば、アミアが壊滅するのは間違いないレベルであった。そういう意味では、救国の3人に湖畔のダンジョンのことを他国にしゃべったと文句をいう訳にもいかなくなってしまった。
『早急にオークとオーガに対処できるレベルを作りましょう』
ゲルドは前向きであった。
『オスニア国のその後の情報は何か分かったか?』
アルガソードは、机にもたれかかったまま、ゲルドに言った。
『はい。つい先ほど、追加の使者の話によると、シャールカ様たちの活躍により、クラトの魔物は討伐され、瘴気発生装置も破壊された模様です。ただ・・・』
『・・・ん?』
ゲルドが何やら言いにくそうに黙ってしまったので、アルガソードはもたれ掛かっていた机から体を起こしてゲルドを眺めた。明らかに困惑している顔のゲルドがそこにいた。
『使者の話によると、瘴気発生装置を稼働させたのは王宮の侍女らしく、その侍女は、バルディカ帝国の紋章のついた金貨を持っていたそうです』
『・・・なに!』
ゲルドの話を聞いていたアルガソードは、思わず机を叩いていた。
『バルディカ帝国の紋章のついた金貨は、バルディカ帝国への忠誠の証だったはず・・・』
アルガソードは思い出すように言った。
『はい。その通りです。我が国を初め、ロディア国、インゴニア王国、オスニア国では所持が禁じられている金貨です』
ゲルドは淡々と答えた。明らかに意図的に感情を殺そうとしている・・・が、その右手に作られた拳は震えていた。
『バルディカ帝国の仕業なのか!』
アルガソードも平静ではいられなかった。
『わかりません。ですが、無関係とは思えません』
ゲルドの顔は僅かに紅くなっていた。
『各国の使者はその話を知っているのか?』
『はい。皆、聞いてます』
(バルディカ帝国と戦う日が来てしまうのか・・・)
アルガソードは目の前が真っ暗になった。
『陛下!!』
突然、倒れてしまったアルガソードを慌てて起こすゲルド。その時、兵士が駆け込んで来た
『はあ・・はあ・・申しあげます。オケライが魔物に襲われ、オルトラ殿が負傷したとのことです』
その報告にゲルドは舌打ちした。
(オルトラをアミアに呼べないではないか)
『被害は!』
『オルトラ殿が負傷したのみとのことです』
ゲルドは兵士の言葉に耳を疑った。
『オルトラが全て討伐したのか?』
『いえ。オルトラ殿が窮地に陥った時、ネオ様、メリア様、シャールカ様の3名がオケライに到着され、魔物を全て討伐されたそうです』
兵士の報告を聞いてゲルドは床にへたり込んでしまった。
(運がいいのか悪いのか・・・)
何度も危機が訪れては、ネオたちに防いでもらっている。その結果、ロディア国やオスニア国のように街が魔物に襲われずに済んでいる。ノッスルのように違う理由で全滅した街はあるが・・・。
次回は3/22 9時の予定です。