第85話 黒幕?
『これは、大叔父の紋章だ』
シャールカの言葉にネオとメリアは首をひねる。
『バルディカ帝国の紋章・・・』
アストラルがしゃべった。
((???))
『それはだれにゃ?』
ネオが叫んだ。
『私の祖父の弟で、北西伯であるバルディカの家が使っている紋章だ』
シャールカは淡々と言った。
『私も見たことがあります。これはバルディカ帝国の紋章です』
メリアが金貨を覗き込みながら言った。メリアの言葉を聞いたシャールカは、
『あいつら・・・帝国を名乗るなど・・・ふざけてる!!』
何故か怒っていた。
・・・
『その金貨はどこにあったのですか?』
エリザベートはネオたちに聞いてきた。
『これはにゃ。瘴気発生装置を起動させたらしい侍女が持っていたものにゃ。シャールカが見つけて回収したのにゃ』
ネオが事情を説明すると、アストラルとエリザベートは驚愕の顔をした。
『我が国では、バルディカ帝国の金貨所持を認めてません。それを持つものは帝国のスパイです』
エリザベートが叫んだ。
『にゃんと!』
『まさか・・・』
『あいつら・・・』
ネオは驚き、メリアは帝国の陰謀を疑い、シャールカは怒りに満ちていた。
・・・
『シャールカ様。バルディカ帝国のことを何かご存知なのですか?』
アストラルがシャールカに尋ねた。
『ああ・・・。バルディカの大叔父は先々代の王の末の弟だ。頭は切れるが危険な野望を持っていた。ドニアの研究所を密かに援助をしていたという話も聞く。父も警戒していた』
どうやら、1000年前から怪しかったらしい。
『最近、バルディカ帝国のスパイが活発に活動しているとの情報があり、警戒をしていたのです。バルディカ帝国の金貨を、瘴気発生装置を動かしたものが持っていたとすると・・・』
エリザベートは顔を曇らせた。
(瘴気発生装置が動いて魔物が発生した原因に、バルディカ帝国が絡んでいるとしか思えないにゃ)
『今回の魔物発生は、バルディカ帝国の陰謀なのか?』
アストラルが叫んだ。
『可能性は高いだろう』
シャールカがいくらか冷静になったらしいが、その右手は拳を作ったまま震えている。彼女が知っている大叔父はさすがにもういないだろうが・・・。
『瘴気発生装置はいくつあるのでしょうか?』
エリザベートが心配そうに言った。
『瘴気発生装置は解っているだけで、あと2つある可能性があるのにゃ』
ネオが言った。クラトの王宮にあった瘴気発生装置が仮にパラストア(アミア)の西に不時着していた飛行機から持ち出されたものだとしても、村付近で消息を絶った飛行機に積まれていた瘴気発生装置が見つかっていない。最大3つ搭載できると考えるとネオがノッスルで破壊の1つを除いても、あと2つ存在する可能性があった。
『バルディカ帝国が瘴気発生装置のことを見つけ、それを稼働させた可能性はあると思う・・・。問題は、まだ瘴気発生装置がある可能性があることだ。』
アストラルはそういうと腕を組んだ。
『そして、動き出してしまった瘴気発生装置に対処できるのは、ネオ様しかいないということだ』
アストラルはそういうと、力なく椅子に座った。
『”トシオ”が乗った飛行機の行方・・・村付近で消息を絶った飛行機の行方を調べる必要があるにゃ。村に何か秘密があるはずにゃ』
ネオの言葉に、シャールカとメリアが同意している。
『帝国自体も問題かもしれないですが、瘴気発生装置を何とか破壊することが最優先ですね』
エリザベートは、どこまでネオたちの考えを理解しているのか解らなかったが、内容的には同意していた。
『シャールカ様。なにか私たちに出来ることは・・・』
アストラルがシャールカに話始めたが、シャールカはそれを遮り、
『今、其方がしなければならないのは、クラトの再建と兵士たちの強化だ』
シャールカはアストラルを睨みつけた。アストラルは首を縦に動かした。
シャールカは、
『其方を見ると叔父を思い出す。叔父に似ていい顔をしている。民を頼んだぞ』
そういって破顔して見せた。
王族を名乗る気がなかったはずのシャールカですが、瘴気発生装置に怒りが爆発しています。
もしかしたら、そういう性格を理解した上で、彼女の父は王宮から逃がしたのかもしれないですね・・・。
次回は3/21 午前9時の予定です。