第8話 乗り越えて・・・
ギルドの調査結果・・・
ネオは、部屋の入り口を叩く音で目が覚めた。
『起きてください。冒険者ギルドから人が来てますよ』
声の主は、宿の中年男と思われた。
『はいにゃ』
とだけ返事をしておく。
冒険者ギルドには宿のことは話したことがなかったのだが、どうして知っているのだろうと思いつつ、一階におりていく。
食堂には、見覚えのある冒険者ギルドの応接室で会った男と受付の女性が座っていた。
『どうしてここにいるのがわかったのにゃ』
ネオは疑問を早速2人に話してみた。
『オスターさんたちがこの宿に何時も泊まっていたのは知っていたの。だから多分ここだと思ったわけ・・・』
女性の声が尻つぼみになっていく。彼女も説明していて辛くなったらしい・・・。
『すまん』
突然、男が頭を下げてきた。
???
『意味が解らんのにゃが・・・』
ネオは事情が理解できないでいた。
『俺は、ギルドマスターをしているヴァンという。昨日の話を聞いて、嫌な予感がしたので自分でウォーターマウンテンまで行ってきたんだ。』
この後、ギルドマスターのヴァンは調べたことを教えてくれた。
・トシミツ(長老)は、ゴブリンが大量に発生していたことを知っていたらしい
(村人が白状した)
・崖の下からの道を作ったのは、“ダイキチロウ”の仕業であることも判明した。
(知り合い冒険者にこっそり作らせていたことが、請け負っていた冒険者から判明した)
つまりだ、トシミツは、ゴブリンが大量にいることを知っていた上で、数匹のゴブリン討伐を装って、安く依頼したのだった。これは、本来、ギルド職員が依頼内容を調査していれば解ったことなのだが、受け付けた職員(どうやらこの女性らしい)が、現地確認もせずに請け負ってしまったらしい。
結果として、比較的容易な討伐依頼として処理されてしまったということだ。
『ゴブリンは個々についてはとっても弱い。数匹でも大したことはない。だが、何十匹もいると事情が異なる。今回はまさに、ゴブリンの集団脅威度を甘く見たギルドの落ち度もあった』
『結果として3人も犠牲者を出してしまった。すまん』
だが、ネオはその説明に納得できなかった。3人を失った後のトシミツと村人の対応は親切だったからだ。
『トシミツを調べていたらな。お前は事情を理解してなさそうだから、親切にしてやれば、ごまかせると思ったのだそうだ。一方、一部の村人は、お前たちが事情を知って、やってきたものだと思っていたらしい・・・トシミツが依頼料を着服するためにギルドに依頼する時に、事実を一部隠していたらしい・・・』
『にゃんと!』
ネオは驚いていた。親切にしてくれていたトシミツと村人の本音を聞いて・・・。
『申しわけないが、彼らの墓から冒険者カードを回収させてもらった』
冒険者が死亡していた場合、ギルドは可能な限りカードと所持品を回収するらしい。遺族がいれば、それらに引き渡すこともあるそうだ。だが、オスター達は、遺族は存在しないらしい・・・。
そこまで言うと、ギルドマスターは何やらお金の入った袋をネオに差し出した。
『これは、討伐の依頼料だ。トシミツがサインしているので、討伐は成功と判断した。そして、3人に誤ったレベルの依頼を出してしまったギルドからの謝罪も入れてある』
ネオは袋を受け取り、中を確認すると、金貨が10枚入っていた。
『こんなにたくさん・・・にゃんで・・・』
『すまん。黙って受け取ってほしい。それと、お前のカードを交換したい』
そう言って、1枚のカードを渡してきた。
『D級にゃと!!』
それはネオの冒険者カードだった。が、よく見ると、ランクが“D”になっている。
『お前が1撃で10匹のゴブリンを屠ったことを確認した。これは、D級とみなしてよいレベルだ。D級ならば、他の街でもそれなりに扱ってくれるはずだ』
『つまり、D級にしてやるから出て行けということかにゃ』
ギルドマスターの説明に何やら無性に腹が立ってきたネオであった。
『あっ・・・いや、この街には居ずらくなるだろうから・・・』
ギルドマスターの話によると、仲間を死なせてしまった生き残りは、中々、他の仲間に受け入れてもらえないらしい。ネオは知り合いもいない新人だったので、この街で冒険者を続けるにはソロになるしかなかった・・・スキルの届け出がなかったネオがソロでやっていくのは困難だとギルドマスターは思ったらしい。
『調べたのにゃら、俺が魔法を使うことはわかったはずでは・・・』
『判っていたが、どの属性にもないものらしかったので、その能力を信じることができなったのだ。偶然の神の加護であるかもしれんのでな・・・』
ネオの疑問にギルドマスターは言葉を遮るように説明した。
結局、3人が生き返るわけでもなく、どうにもならないので、今まで持っていたF級の冒険者カードをギルドマスターに渡し、D級のカードを受け取って、2人には帰ってもらった。
・・・
(とにかくここから離れようにゃ。お金は手に入ったので旅の用意をしようにゃ)
ネオはそう思うと、宿にもう1泊すると言って銀貨3枚置いた後、街に出ていった。
『いらっしゃい』
以前、水筒と短剣をくれたミラの店にネオはやってきた。
『今日は一人かい』
事情を知らないミラはネオが一人で来たのが珍しいと思ったらしい。
『ちょっと、遠征に行かないといけなくなったのにゃ。そのための装備をそろえたいのにゃ』
そういうとネオは、さっきギルドマスターから貰った金貨の入った袋見せた。
『なんか訳ありだな。わかったよ。このミラが揃えてやろう』
ミラは店の奥に消えると、数分後、いくつかの装備をもって現れた。
『まず、ショートソード』
特に高級ではないらしいが、それでも金貨5枚はするらしい
『防具一式』
革製であるがしっかりした作りの防具であった。
『それと、携帯食と大きい水筒』
全部足すと、金貨11枚分になったが、10枚でいいということで、そのままネオは購入する。
『この袋はサービスだ』
そういうと、購入したものを全て、大きな袋に入れてネオに寄越した。
ネオは一礼して去ろうとしたとき
『いつかまた来てくれよな。待ってるぜ』
ミラの声が背中から聞こえた。
・・・
その日の夜、ネオは購入してきた装備品をつけてみた、剣の扱い方はよくわからなかったが、装備する上では問題ない鞘もベルトになっていて問題なく装着できた。今まで使っていた服に代わって、革製の防具を装備する。今までは新人の神様がこの世界に送り込んだときにつけさせていた服だったのだが、防御力は何もなかったようだ。
『これで良し・・・』
今まで来ていた服と、携帯食や水筒をアイテムボックスに入れ、防具を外してベットに入る。
『この街も今日で最後・・・にゃ』
そういうと眠りに落ちていった。
ウォーターマウンテンの人は、この先、ギルドに依頼が出せなくなるんじゃないかなあ~。
序章はここまでです。
次回の投降は21日の予定です。