03 ウェリアス視点
麗薇に転移の魔法をかければ足下から光り魔方陣に運ばれていった。
「行ってしまったか…。」
もともとあの子はこんなに早く死ぬ予定ではなかった。それなのにわしら神々がミスをしたばかりあんなに若くして死ぬこととなってしまった。普通ならわしらを責めたり恨んだり泣いたりするじゃろうにあの子は一度もそんなことはしなかった。それどころか最後には感謝までしていった。
「どこまで清らかな魂なんじゃ…
まぁだからこそわしらは自分たちで今回の罪を罰さなければいけない。今回問題となったあの子が生きていた世界の神も大分反省していたようじゃが今一度大きな罰を与えるとともにあの子に加護を与えさせるかの。神々の加護であれば良いことはあれ悪いことにはならんじゃろう。あとは代替わりの仕方にも今回の件で色々と問題点が出てきたから考え直さんとじゃのう。しばらくはあの子の安全確認のためにかんしもしないとじゃしやることが沢山じゃのう…。」
とりあえず神々の神殿に戻ろうかと立ち上がると突然目の前に光輝く球体が現れた。
この空間はわしが作った場所じゃから誰かに干渉されることはないはずだと不審に思いながらも指で触れてみると一層輝きが増して先ほどまで話していた声が聞こえてきた。
「あーてすてす。聞こえてるかな?久しぶりにこの方法使ったから自信ないんだけど…。
まぁ聞こえている前提で話すか。分かっているとは思うが麗薇だ。さっきも行ったとおり私はウェリアスに感謝している。確かに彪人たちともう会えないのは悲しいが私が死んだのは私の責任でもある。加護がない人だって普通に生きているのに私が死んだのは私が弱かったんだ。だからウェリアスたち神々がそんなに申し訳なさそうにする必要はない。さっきのウェリアスすごい泣きそうな顔にまでなってたぞ?私が言うのも何だが元気出せ。神々の世界がどんな仕組みになっているか知らないが人間と一緒なら私に加護を与えるのにミスった神に罰がくだるだろう?もしそうなったらできるだけ軽くてやってくれ。人間は失敗は成功の元になる。って言って失敗を繰り返しながら成長するんだ。神々のやり方に口を挟んではいけないんだろうが当事者として言わせてくれ。そして上からだが今後は同じような失敗をしないようにともな。
あと、さっきの話を聞いて思ったんだが神々って暇なんだろう?これなら少しは暇つぶしになるだろうから受け取ってくれ。」
その言葉とともに黒い箱が落ちてきた。
中にはあの子が能力で作ったであろう脱出ゲームのようなものからすごろくのようなものまで色々な遊び道具が入っていた。しかもそのどれもが神々の力を使った不正などが出来ないようになっているのだ。
これらを見たことはあったがわしらがやろうとすれば答えが最初から分かっているものをその手順通りに進めるつまらないものに成り下がるだけであった。わしらが作ったとしてもどこかに答えが分かる抜け道ができてしまいつまらなかった。しかしこれなら誰でも純粋に遊ぶことが出来るだろう。
「最後の最後にこんなものまで用意してくれるなんてこちらが感謝しかないわ…
これは神々総出で感謝の印にあの子を守らんとな。」
神々にとって娯楽とはとても重要なものなのだ。人の生きる時間とは比べようもない途方もない時間を生きるわしらにとって世界を管理するだけでは飽きてしまう。だからといってわしらの心を動かすようなものなどなかった。それをあっさりと作りわしらに譲ってくれた麗薇。早く皆にも伝えて対処しなければな。麗薇は向こうに着けば教会に行くと言っておった。普通ならば教会で祈りを捧げたところでわしら神々に会うことは不可能である。しかし麗薇ならばそれをなしえてしまうだろう。だからそれまでの愛仇に麗薇への礼を考えなければならん。
「これから忙しくなるな。」
年甲斐もなくこれからが楽しみで仕方ない。早くせねばこれらで遊ぶこともできんしな。
「皆のものこれをよく聞くのじゃ………」
天界はこれから歓喜に満ちあふれるだろう。
麗薇よ今度会うときを楽しみにしておるぞ。