02
________________
「どうじゃったかの?」
「見れてよかったよ。ありがとう。あんたが本当に神様だって言うこともなんとなく理解できてきたし。」
本当に見れてよかった。死因は馬鹿すぎて記憶から抹消したいが皆が私を大切に思っていてくれたことも最後にプレゼントを贈れたとこも見れて本当によかった。
「そうかそうか、ならよかったの。
お主は周りから愛されておった。ここまで多くの者に愛される者はなかなかおらんぞ?」
愉快そうに話す人だ。しかしたしかに私は周り恵まれていた。
もっと普段から感謝を表に出しておけばよかったかななんて思ってきた。
「さて、そろそろ本題に入るとするかの。
お主の魂は普通とは言いがたい。これは魂の力が強いということじゃ。自身でも他とは違うと思ったこと一度や二度あるじゃろ?それほどの魂を元の世界に戻すことは極めて困難なんじゃ。強き魂の数は少ない故どこの世界の神も手放さないよう早々死なないように加護をかけている。
しかし、お主にはその加護をかける前に神の代替わりで慌てていたためかけ忘れてしまった。
だからお主はその若さで亡くなる結果となったのじゃ。そして問題が起きた。元々お主が死ぬのはもっと後であると計算されそれに合わせて次の世界へと行く予定じゃった。
だが予定より大分早くなったためその世界は今お主を受け入れるだけの容量がない。
そこでこちらの問題に巻き込んでしまった故お主には3つの選択肢を示そう。
1つ目は、お主の記憶や能力をそのままにわしが最近管理し始めた比較的新しい世界に転移する方法。
2つ目は、お主が再び同じ世界に戻れるまで待つ方法。しかしこの方法は途方もない時間がかかる。もちろんお主の知り合いたちも転生しておるかもしれんが以前のような姿はしておらんし向こうにはお主との記憶は残っておらんじゃろう。
3つ目は、お主が神格を得てわしと同じ神になる方法じゃ。幸いお主ほどの力を持っておれば神格を得るまでさして時間はかからんじゃろう。どれを選んでもお主の自由じゃ。どうするかの?」
またいきなり沢山の情報が入ってきたな。感傷に浸る性格でもないがそんな時間もないな。
とりあえず私が今すぐ元の世界に戻れることはないのか。しかも時間をかけたところであいつらに会える可能性も限りなく0に近い上私のことを覚えていないのであればあの世界に戻る必要はないか。
そうすると残された選択肢は神になるか違う世界に行くかか…。
「もし異世界に行ったら私がしなければいけない使命かなんかがあるのか?」
とりあえずこれは聞かないとな。
「あー、お主の世界には異世界を想像した創作本があったの。結論から言えばそんな使命なんてないぞ。
あの世界はさっき言ったとおりまだできてから比較的新しい世界なんじゃ。まぁわしらの感覚ではの話じゃがな。しかし強いて言うならばお主が自由に生きてくれればそれが使命となる。」
「使命がないって言うのは気が楽で良いな。でも自由に生きることが使命ってどういうことなんだ?」
「あの世界はお主が生きていた世界にはなかった魔力というものがあり生活している人は程度の差はあれそれを使った魔法を使って生活しておる。だからお主の世界より技術の発展が進んでおらん。確かに魔法があれば生活に困ることはないが技術が発展すればそれだけ人々の生活は豊かになるものじゃ。わしは人々には幸せになって欲しいのじゃ。お主があの世界に行って必要だと思うものを考えたり作ったりして生活しておれば周りもそれに影響され技術は発展するじゃろう。」
この人は私のことを過大評価していないか。私が知っていることも出来ることも少ない。
「私はあなたの期待に応えることは出来ないかもしれないぞ?」
「お主は謙遜が過ぎるが…本当にそう思っているようじゃな。お主はお主が思っている以上に素晴らしい力を秘めておる。それは知識や技術のことだけを言っておるのではなくお主自身の才能や性質を全部含めて言っておるのじゃ。まぁ本当に何も気負う必要はないんじゃよ。」
まぁ良いと言っているなら良いか。あともう一つは…
「神になったとして何か良いことがあるのか?」
「んーむ…良いことは特にないかの?神と言っても世界の管理という仕事があるのじゃ。
だから良いことと言うか管理している世界を観察できるのが特権かのう?」
…なんか神といっても微妙だな。というか面倒で暇なだけじゃないか?
「失礼なこと言うでない。まぁ否定できるところはないんじゃが…」
「ないのかよ。」
つい突っ込んでしまった。
となると選ぶとしたら異世界しかないか。そういえば…
「さっき異世界の住人は全員魔法が使えると言っていたが私も使えるようになるのか?
それとも能力を魔法の代わりに使っていけばいいのか?」
「うむ。お主が異世界に行く選択をすれば転移の際お主に適正がある属性が勝手につくじゃろう。使える魔力もお主の才能によって決まるのじゃ。」
「そうか。なら私は異世界に行くことにするよ。あんたにはもう会えないのか?」
「そうかそうか。ではお主が行く先はとりあえず森の中にしておこうかの。
お主の近くに地図や食料なんかを入れた魔法鞄を置いておくからその中をよく見て大切にするのじゃぞ?お金もお主が元の世界で稼いだ額をそのまま転移先のものに両替して入れておこう。あと、お主が教会で祈りを捧げてくれたならば会えることは可能かもしれんのう。」
「わかった。助かるよ、ありがとな。とりあえず向こうに行ったら教会に行くことを目標にするよ。」
「いや、もともとこちらに責任があるのじゃ。気にするでない。今度の生こそ幸せに過ごしてくれ。
最後になにか言いたいことはあるか・お主はまだ一度もわしらを責めたりしておらぬ。お主はわしらに文句を言って良いのじゃぞ?」
文句か…。たしかにこの人の言ったとおりなら私が死んだのはこの人たちのせいだがあの場面を見れば油断した私にも責任はある。だから責めようといった気持ちはかけらもない。命と引き換えになったとしてもあいつらを助けられた事に変わりはないしこれから新しい世界に連れて行ってくれるんだ。逆に感謝の言葉を言いたいぐらいだ。だから…
「最後にあなたの名前を教えてもらえないか?」
「わしか?わしはウェリアスじゃ。」
「ウェリアスか。ウェリアス、私に選択肢を与えてくれてありがとう。私に新しい道に導いてくれてありがとう。あなたには感謝している。」
「…お主は魂そのものが輝いておるの。その言葉を受け取る資格はわしにはないんじゃがここは素直に受け取ろう。改めてお主には謝罪する。お主につらい思いをさせてすまなかった。そしてわしらの気持ちを受け取ってくれてありがとう。」
「あぁ、もう謝罪は沢山聞いたよ。それで私はどうすれば良いんだ?」
「わしが今から向こうの世界に送る。幸せになるのじゃぞ、麗薇。」
最後になってやっと名前を呼ばれたかと思っていたら足下から光ってきて体が透け始めた。
これからは自由に生きていこう。本当にありがとなウェリアス…
「分かってるって。またなウェリアス……………………」