01
_______
ここはどこだろう…
たしか私は学園であいつらと戦っていたはず…
ッチ!もしかして敵の中に転移能力をもった奴がいたのか?
いや、そんな情報はなかったはずだ…あの馬鹿情報収集にミスったのか…?
そうだとするとまずいな…あの学園にはまだ敵も私の大切な人たちも沢山いるんだ。早く戻らないとっっ!
「戻る必要も場所もあらんよ。お主はもう死んでいる。お主が戦っていた敵も全滅し、守っていた奴らも全員無事じゃ。だから少し落ち着きなさい。」
声に驚き後ろを向けば一人のおじいちゃんが丸机に座ってこちらを見ていた。
さっきまで人の気配すらなかったはずなのにどこから現れたんだ…?
しかもこの人物さっき私は既に死んでいると言っていたな。なぜ断言できる?仮にそれが正しかったとして今の私は何なんだ?
急に理解しがたい情報が大量に入ってきたせいで頭がパンクしてきた。
「落ち着きなさい言っておろうに…とりあえずここに座ってお茶でも飲みなさい」
またもやいきなり私が座るための椅子とお茶が出てきた。
この程度のことなら私もできるし普段ならさして驚きもしない。しかしこの人物は私に気配も能力の発動も気づかせなかったのだ。果たして言うとおり行動して良いべきなのか…
「お主油断せぬ事は良いことじゃがそんなに考えてばかりおるとふけるのが早くなるぞ?そんな取って食おうなどとは思っとらんから早く座りなさい。お主に説明せねばならんことも沢山あるのじゃからな。」
「…失礼します。」
ひどく失礼なことを言われたが一旦おいとくとしよう。
しかし先ほどから声をかけてくるタイミングといいもしかしてだがこの人は考えている事が分かる能力者なのだろうか。
「少し違うが概ね正解と言ったところじゃな。わしはお主の世界で神と呼ばれておる存在者じゃ。
故に、お主の思考も死んだと言うこともその後のことも分かっておる。もしお主が自分が死んだところや今のあやつらの様子を見たいというなら見せることも可能じゃがどうする?」
「…見せてもらってもいいだろうか?」
「もちろんじゃ。お主なら大丈夫じゃろうがもし自分の死を見て狂うようなことになれば見た記憶は消させてもらうからの?」
「あぁ、それでいい。頼む。」
_______________________________________
映像は襲撃があったところから始まった。
襲撃があったのは私たち能力者が通う学園だった。
この学園は全国から能力者を集めた特別な場所であり、生徒たちを守るため警備も特殊な仕様になっている。それなのに今回はその警備が破られ大量の侵入者を許してしまった。
そこで学園や生徒たちを守るために出動したのが私を含む凰蘭のメンバーだ。凰蘭とは、学園にいる能力者たちの中でもより危険度の高い人たちが集められたチームで普段は主に学園に敵対する勢力を潰すのに使われている。
警備が突破されたことに加え凰蘭を出動させると言うことは今回の敵がそれだけ強大な力を持っているということだ。
今回は私も多少無理をしなければかな…
私たち能力者とは人類の中で一握りしかいない特殊な力を持った人たちのことを指す。
この力は親から子に遺伝することもあれば突発的に能力が開花することもある。
一人一人能力の種類は異なるし、強さもランクによって異なる。
強さのランクは1~10まであり数字が大きくなるほど強くなり制御も難しくなる。また強い力を出せば出すほど体への負担は大きくなる。
しかし能力者の中でもランク5以上が使える人はほとんどいないし、10まで使えるとなると世界で1,2人ぐらいだろう。
その1,2人のうちの1人に入るのが私なのだが…。
学園が私を出動させたということはつまりそういうことだろう。
敵の中に低くても8はいる。凰蘭のメンバーでも8に届くのは1割ぐらいだ。同ランク同士が戦った際軍配が上がるのは死ぬ気で挑んできている敵の方だろう。
…他のメンバーは守りに徹底させ私一人で戦った方が被害は少なくすむか。
「学園生徒、凰蘭に告ぐ。これより敵の殲滅は私が請け負う。他の皆は学園、生徒たちの守りに徹底してくれ。また生徒たちは凰蘭の指示に従ってくれ。」
とりあえず言ったが後で文句言われるだろうな…
「おいっ!一人でなんて無理に決まっているだろ!俺も行く!」
…文句を言われるだろうとは思っていたがさすがに早いな。
「私たちも行くからね」
「8は無理でも雑魚は私たちが引き受けます。」
彪人に続き響も玲弥まで…
だが、ここを譲分けにはいかない。あいつらは私の大事な友達なんだ。この学園にきてからずっと一緒にやってきた仲間なんだ。万が一のことがあったら耐えられない。
「3人には悪いけどこれは譲れないよ。
凰蘭のリーダーとしての命令だ。守りに徹底しろ。…絶対傷つかないでくれ。」
「「「…っ了解。」」」「「「絶対死ぬなよ(戻ってきなさいよ)(死んだら許しませんから)約束だから!」」」
私はずるい。それでも彼らは私のことを大切に思ってくれている。
彼らに約束させられてしまったからさっさと終わらせて無事に帰らないとな。
そして敵に突っ込んでいって倒したと思ったんだが…ここか!
疲れていたこともあり敵が全員死んだ際に起動する爆破の能力を込めていた石に気づくのに遅れて防御も回復も間に合わなかったのか。
最後の最後にミスったのか…
さすがにランク9を5人含めた200人を1人ではつらいか。馬鹿したわーー。
自分の馬鹿さ加減に落ち込んでいる間にも映像は流れていて気づいたら私の死体を彪人たちが囲んでいる場面だった。
「約束したじゃねえかよ…」
「なんで死んでるのよ。まだまだやること沢山あるって言ってたじゃない!」
「置いてかないでくださいよ…」
彼ら以外にもクラスメイトや先生も皆泣いてる…
ごめんね…たとえ命と引き換えになったとしても皆を守れてよかったって思ってるんだから。私は後悔はしてないよ…。だからこれ以上泣かないで。
「「「「「!!!!」」」」」
ちょうど発動したみたいだ。
凰蘭で活動している以上いつ死ぬか分からない。だから私が死んだら大切な人たちに私の能力を集めた石が届くようにしておいた。特に3人にはどんなものからも守れるように思いを込めて…。
どうか幸せになって…
映像が霞、終わろうとした頃には皆が泣き笑いのようになっていたのを最後に見れてよかった。