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第210話 どうして、そんなに強いんだ?


 ーーカチッ


 時刻は18時23分


 夏の夕陽。

 まだ明るい黄昏時の表通りを、取り戻した右手に、味のある懐中時計を持ち、ぼうーっと眺める。


「……」


 いくつもの段層かなる、幾何学的な美しい都市。


 ここで多くを学んだ。

 使える魔術は増えなくとも、俺の魔術知識はより高度になり、神秘魔術なら竜の魔術にちかづく五式の段階まで理解して唱えられる。重要なのでもう一度言うが、使えるわけではない。


「……守ろう」


 王都を蒼の花畑に変えるわけにはいかない。


 ビジョンパルスはまだ多くのことを隠しているが、彼女の『神の墓』の秘匿を守りたい、この街を守りたい、王都の人々を救いたいという願いは確かなものだと俺は信じている。


 すぐかたわらで眠るコートニーに視線を向ける。

 すると、彼女の眠たげな碧眼(へきがん)と目があった。


「……私は、どうやら眠っていたようだな」

「コートニーさん、目が覚めましたか」


 うっすらまぶたを開けて、こちらを見つめるコートニーへ、俺は彼女が気絶してから何が起こったかのか、俺たちが足を踏み入れたあの不思議な校舎が、いったいどれほど危険なのかをかいつまんで説明した。


 コートニーの最後の記憶は、俺が宣教師に殺されかけ、そしてソロモンに体をあけ渡した直後まで。


 よって、寝ている間に動いた、めまぐるしい状況を順に説明していくと、彼女はひどく困惑してしまった。


「そうか……悪魔なぞ、本当に存在していたとはな。それを倒す教会の悪魔祓いが、あの恐ろしい力を持った戦士というわけか……アーカム、ひとつハッキリさせて起きたいのだが、お前は人間なんだな?」


 コートニーは未だ生えてこない、俺の左腕を見つめて困った顔で聞いてきた。


 腕が取れても、喉に穴が空いても、心臓にステッキを刺されても、森林の蒸発に巻き込まれても、なお俺は五体満足で生きられる。


 明確なの、俺の体の8分の1は間違いなく怪物の血が流れているということ。


 そして、俺が別の世界から来た転生者であること。


 また≪魔力蓄積(まりょくちくせき)≫で、永久的に増加し続ける魔力量を、溜めておかなければ、身長2メートル20センチの巨人に戻ってしまうこと。


 間違いなく人間のはずなのに、特殊すぎる体質が素直に俺自身を納得させてくれない。


 この気持ちは今にはじまったモノじゃない。


 最初にアヴォンとともに有り余る魔力を有効活用するため≪最後の(The Goal)場所(of All)≫を考案した時から、ずっと俺のなかに巣食ってきた病巣だ。


 もしかしたら、ジョンが言っていた俺が超能力者だとかなんとかって言うのと関係があるのかもしれないが……現状、俺にはそれを判断する事ができない。


「アーカム?」


 コートニーが黙す俺を見て、凛々しい表情をすこし崩して、不安そうに首をかしげた。


「……人間ですよ。当たり前じゃないですか。すこし特殊な体質がありますけど、間違いなく人間です。安心してください」

「ふむ、そうか。それならいい。にしても、アーカムは腕が取れても生えてくるなんて、凄く便利な体なのだな。私は正直、感動しているぞ」

「はは、僕の父さんはもっと凄いですよ」


 血脈開放した時の、大人気ない父親アディの超再生を思いだす。


「それにしても本当に許せないやつらだ。アーケストレス中にあの蒼花を咲かせようとしているなんて。……ただ、私たちではどうしようとないのも事実だな……」


 ひとりの竜学生、ひとりの王都市民としてコートニーは憤りを隠さないでいる。

 だが、理性の部分で彼女はこれが学生の手に負える事態ではないと分かっているのだろうか、その瞳にはやるせない気持ちがありありと色をもって揺れていた。


 しばらく(のち)


 部屋のドアが開いて目を覚ましたらしいチューリとシェリーへ、あの空間で危険なカルト教団が暗黒魔術を行なっていること、それを止めるために国は秘密裏に必死に手を打っているという事を伝えた。


 俺がどこでその情報を得て、俺たちがどうやって帰って来れたのかに話は及び、俺は3人をビジョンパルスへと会わせることになった。


 はじめて見る美しい少女に、チューリがやけに良い顔して空回りしていたが、存外に彼らは新しい古代竜との出会いに動揺することはなかった。


 ビジョンパルスは彼らに、要所要所の事実が伏せられたストーリーを再度聞かせて、3人を納得させるとそれぞれの頭をなでて可愛がりはじめた。


 どうやら、彼女にとってはみんな可愛い弟妹のような存在なのだとか。


「よしよし、それじゃこの一件はお姉ちゃんたち竜神会議に任せてね。危険だから、もうはいっちゃダメだからね? あと口外も禁止。もし口を滑らせたら、魔獣協会の暗い地下に連れ去られるくらいの事だから気をつけるようにね」


「魔術協会……クク、実にそそる案件だが、今回は大人しく身を引いたほうが賢明だろうな。シェリー間違っても真実を究明しようとなどするなよ?」


 冷や汗の滝チューリは目を泳がせて、震えるシェリーへ注意をうながす。

 シェリーは「そっちこそ、これは遊びじゃ済まないのですよ!」と唇をプルプルさせて言い返した。


「アーカムちゃんはゲートヘヴェンに認められるほどの実力と、『竜殺し』という証明があるから、すこしお手伝いをしてもらうけどね」

「っ、魔剣の英雄はまたあの地下にいくのか?」


 チューリは泳いでいた目をまっすぐに、俺へ向けて不安そうに聞いてくる。


「誰かがやらないとだしな。国は今、混乱の最中だ。危険なカルト教団と戦える戦力を十分に用意できてない。だから、やれる奴が率先していく。それだけのことだぜ、チューリ」


 ウィンクして俺は再生きった右手で親指をたてる。


 チューリは俺の未だ肩までしか再生してない左腕を見つめて、目を伏せた。


「魔剣の、いや、アーカム、お前はどうして、そんなに強いんだ……?」


 チューリの震える瞳の光に、俺はすぐに答えることが出来なかった。


 一泊考えて、言葉にならないモヤモヤした気持ちを声に出してみる。


「俺は、全然強くなんかない……ただ、強くあろうと…………してるだけだよ、チューリ。ここで負けたら、全ての意味がなくなる。俺はゲートヘヴェンさんに、この事件を託されたんだよ」

「……アーカムちゃん、それじゃ行こっか? 善は急げってこと。チューリちゃんも心配しないで大丈夫だからね! アーカムちゃんは竜だって倒すスーパー人間だから、腕くらい生えちゃうだぞ!」


 ビジョンパルスはオレンジ色のローブを翻し、俺の側頭部に巻き角をゴツゴツあてながら、腕を引いて歩きだした。


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