“ラブコメヒーロー・シンドローム”
ナルセはしょぼい獲物を瞬殺した帰りに、1人じゃ手に負えないようなレムと遭遇した。
ボブ級の武闘派が居ないと太刀打ちできないからと駄々をこねていたが、俺のボブとの戦績は68戦67勝0敗1分け。
「俺が殺りますから、わざわざ人呼ばなくたっていいです。 2人で行ってちゃっちゃと片付けちゃいましょうよ。 ナルセさんはサポートしてください。 というか、見てるだけでいいですよ」
「嫌だね、絶対無理。 俺は慎重なんだよ。 戦闘そんな得意じゃねぇし、戦いたいなら1人でいけよ 」
俺にはわかる。 ナルセは怖いのだ。
強いレムと戦う事への恐怖ではなく、俺と共闘して実力の底が見えてしまうのを恐れている。
2人で行けば必然的にナルセがサポートに回ることになるだろう。 少数での駆除は個々の自力が試されるし、俺との実力差が浮き彫りになるのを懸念しているのだ。 間違いない。
「だってお前、実力は大した事ないんだろ? ボブさんみたいな、成績に興味がない戦闘狂のおこぼれもらって祭り上げられてるだけだって噂だし? 祥雲寺はメンバーに恵まれてるからなぁ! 」
こいつ本当に殺したろうかな。
このナルセみたいな腰抜けのシャバ僧が怖気付くレベルのレムなんか、絶対に大したことはない。 俺一人で充分だ。
「じゃあわかりましたよ。 わざわざ呼ばなくても圧倒的強者が居ますからね。 2人が帰ってきたら潰しに行きましょう」
このイキリ野郎には実力の差を見せつけてやらなきゃいけない。 絶対に立ち合わせる。 初見で水嶋を口説こうとした軟派野郎に格の違いを見せつけてやる。
「うっそだろ? お前シオン姉さんに戦わせるつもりなの? いつもそうなん? うわぁしょっぺぇ! 大の男が女に戦わせて恥ずかしいと思わねぇの? 」
そう来るか。 無駄な足掻きを……。
「……あら、女性に優しいんですね! そんなポリシー持ってるんだぁ…………お前みたいなもんが」
「あ? 最後なんつった?」
「大体ね、男が戦うべきで女性に戦わせないとか、紫苑さんが聞いたらイラッとすると思いますよ。 あの人は男より強いんですから、どんどん戦わせないと。 男が矢面に立って女性を守るなんて、古いんですよ考えが」
「考えが古くてなにが悪いんだよ。 古いほうが性に合ってるならそっちを選んだっていいだろ 」
なんやかんやで俺たちは、水嶋と紫苑さんの帰りを待つ流れになった。 こちらからは特に喋ることもなかったし、いちいち苛つくのも嫌だったので、ナルセがホッケーの道具で素振りを始めたのは幸いだった。
しばらく沈黙が続いた後、ナルセが口を開く。
「つーか、シオンさんなんでそいつ置いて行ったんだろな」
「置いてった?」
「うしろ後ろ」
ナルセの声に合わせて、ミャア、とあざとい鳴き声がした。 振り返ってみると、紫苑さんの肩に乗っていた三毛猫が空中で佇んでいる。 見られていることを意識しているみたいに目配せをして、前足で顔を擦ってからペロペロと舐め始めた。
「なんで拡声器? 」
猫は紫苑さんの拡声器に乗って、ふわふわと浮いていた。 乗っているというより、抱えている、という表現の方が近い。
「俺たちが迷子にならないように、監視させてるのかな」
ナルセはそう言って猫の首元を撫で回した。 鼻に付く喋りと、青とオレンジが配色された奇抜なユニホームのせいですっかり抜けていたけど、この男ゴリゴリのイケメンである。 イケメンと三毛猫の組み合わせは鬼に45口径の拳銃を持たせるようなものであると再認識させられた。 ちなみに45口径がどんな威力でどんなサイズ感なのかは全く知らない。
「俺、リアルだとガチの猫アレルギーなんだよな」
いや知るかい。 でも良かった、拳銃持つタイプの鬼じゃなくて。 そういえばいつだったか、水嶋は猫より犬派だと言っていた気がした。 少なくともそのイメージがある。 でも、どんな流れでその話になったのかはちっとも思い出せなかった。
「あのー……これだけ言っときますけど、水嶋に手出さないでくださいね。 本当に」
「なんで? ……お前ら付き合ってんの?」
「付き合ってはないですけど。 なんでって……大体わかるでしょうよ。 好きでもないのにぐいぐい詰め寄るのとか失礼ですよ」
「失礼? ユーリちゃんに? 」
「水嶋と……あの子の事を本気で好きな人に」
ナルセがぽかんと口を開けていた。
俺の顔を2〜3秒ほど見つめると、ふふん、と微かに笑う。
「知ったこっちゃないわ。 もし俺が1日デート権を手に入れて一日中ユーリちゃんと遊んだら、お前よりガチ目にあの子を好きになるかもしれないだろ。 そしたらお前の方が失礼になるな」
「オフパコだのなんだの言ってるような人が俺以上に水嶋を愛せる訳ないじゃないですか」
「お前今、結構すごい事言ってるぞ? 頭大丈夫か? 」
「……チッ、苛立ちで言いたい事が纏まらないな……叩っ斬るかなこのクソ野郎……」
「なぁ、ケイタさぁ」
「うえっ!? なんですか? 今の聞こえました!? 」
「お前もしかして……ユーリちゃん連れて来ちゃったの?」
唐突に放たれたナルセの言葉が理解できなかった。
ヒュオッ、とホッケーの道具が空気を裂く音がした。 交差点で停車していたトラックがエンジンを唸らせて、勢いよく走り出す。
「……えっと、どういうことですか?」
「ユーリちゃんとリアルで仲良いんだろ? 」
「……実はクラスメイトです。 隣の席」
「それだけ? 」
「え? まぁ……それだけですね」
「やっぱそういうことあるんだな……うん、忘れかけてたけど、俺が女の子を連れて来ちゃった時の話聞きたい?」
「あ、結構です間に合ってますんで」
「断り方のピントがズレてんなお前」
連れてくる。 文脈から察するに、誰かを幽体離脱させてしまう、という事だろう。 そんな事があるのか? 幽体離脱を覚えてから今まで、一度も耳にした事がない。
まさかこのナルセとかいうアホも誰かと入れ替わった事があるのだろうか? 入れ替わりがトリガーとなって、相手を幽体離脱させてしまうのか。 そんな事がそこら中で起きてたらとんでもない事だし、もっと幽体の間で話題になってもおかしくない。
「いやいや、めちゃくちゃ聞きたそうな顔してるやん素直になれよ! 」
「まさかナルセも入れ替わった事があるのか?」
「入れ替わったって何が? それといきなり呼び捨てからのタメ口はビビるわ」
ナルセの手厚い右ストレートが肩に入った。 『パパ』から『オヤジ』に呼び名を移行したときの雰囲気で呼び捨てに臨んだが、見事に阻まれた。 このバカはただのバカではない。 体育会系のバカだ。 無礼者には肩パンで報復するタイプのバカだ。
「昔、新歓で新入生引っ掛けたんだよ。 顔は普通なんだけど暗い雰囲気で、ちょっと闇抱えてそうな感じの子」
「そういう子が好きなんすか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……その時は誰でもよかったし、1番チョロそうだった」
「胸くそ悪いなぁ。 反吐が出そうですわ」
「まぁ聞けって。 その子が思った通りにすげぇちょろくて、自分から家に帰りたくないとか言うし、俺一人暮らしだから速攻で家に連れ込んでさぁ」
「ナルセさんって性欲に脳みそ浸けて何年間熟成させたんですか?」
「おまえは攻撃的な相槌しか打てねぇのかボケ。 まぁいいや、とにかくそういう雰囲気になってな。 なんかモジモジしてるから、電気消そうかって言ったら『消さないで欲しい』って答えんだよ」
わからない。 童貞の俺にはその女の子の思考プロセスが上手く理解できない。 電気を消さないで欲しいというのは、「見たい」か「見られたい」かのどちらかだろうか? ……多分そうだよな、性癖としては割とポピュラーな気がする。 でもよく考えたら相手は根暗っぽい女なのか……そう考えるとエロさが多少乗ってくる感じはある。
「脱がしたらすげぇの、全身マジで痣だらけ。 火傷の痕もたくさんあってさ……『うわぁ』って。 見た瞬間、このくらいのトーンで『うわぁ……』って声出ちゃったよ」
エロさが一瞬で消し飛んだ。
「……虐待的なやつですかね? 」
「手首に傷があるのはわかってたんだけど、普通それで終わりだと思うだろ? そのくらいのパンチ効いてる子は何人か知ってたけど、まさかそんな隠し球持ってると思わねぇじゃん」
「見てもらいたかったんですかね? 無言のSOSみたいな……」
「うーん、どうなのかなぁ。 もしかしたら、本当にそっちの気があったのかも。 要はSMとかやっちゃうタイプのドM」
「でも性癖に目覚めるの早くないですか? 新入生だと、まだ18とかですよねその子」
「確かに。 俺もさ、これは最新鋭のタトゥーだ! って自己暗示かけて抱こうとしたんだけど……さすがに無理だった」
「それ最新鋭のタトゥーだと思い込めたら血管に流れてるのオイルですよ」
「深入りしちゃいけないと直感して、何も聞かなかったし、向こうも何も言わなかった。 でも裸だしベッドの中だし、一晩は一緒に居ようと思ってな? まぁ特に何もせず、お互い寝付くまでだんまりって感じで」
「その子が幽体離脱んですか?」
「そう。 俺が幽体離脱とき、その子の幽体が、眠ってる痣だらけの自分を見ながら泣いてた」
「ちょっと怖いっすね」
「こっからもっと怖いぞ」
「じゃあこの辺で仕舞いましょう」
「畳みたがりだなお前。 そんでな、その子の幽体が、殺してくれって言うんだよ」
「えぇ……なんでまた。 優しくそっと抱きしめてあげましたか?」
「いや、首絞めて殺してあげた」
「血管に何が流れてんすかアンタ」
「いや俺もすげぇテンパっててさ、どうしたらいいかわかんねぇし、殺してくれ殺してくれって泣きながら頼んでくるから……ほっといても自殺しそうだし、幽体だからいいかって思って殺したんだよ」
殺されたその子の幽体は光の粒となって、眠っている傷だらけの肉体へ戻っていったはずだ。
——突発的な幽体離脱。 その条件はよくわからないけど、本当に起こり得る事なのかもしれない。 ナルセの話を信じるのなら、必ずしも入れ替わりが予兆として現れる訳でもなさそうだ。
「そんでその後は普通にレムの駆除しに行った。 朝起きたら、俺はその子の膝の上で頭を撫でられてた。 ちゃぶ台に朝メシまで用意してあったよ」
「なんすかそれ。 幽体離脱をどう説明したんですか?」
「説明不要だった。 『昨日、先輩に殺される夢を見ました』って」
夢だと思った。 これは水嶋と同じだ。 その女の子は抜けてからすぐナルセに殺されて、睡眠している身体に戻っていった。 その条件なら誰でも夢だと解釈するだろう。
「凄くリアルな夢で、苦しくて、辛くて、寂しくて、死ぬのがめっちゃ怖くなりましたって。 夢でよかったと思いました——。って」
「あぁ……自殺しようとしてたのかもしれませんね。 ナルセさん、結果的にその子を救ったんじゃないすか? その後、どうなったんです? 」
「俺には重すぎると思って、それ以降は絡んだりしてねーわ。 向こうからも接触して来なかったから、幽体離脱も一回きりだったんだろうな。 ……お前は? どんな流れでユーリちゃん連れて来ちゃったの? 」
水嶋と入れ替わった事は伏せて、初めて彼女と一日中遊んでいました、と伝えた。 入れ替わりという衝撃的な前置きを省いたけど、嘘にはならないだろう。
ナルセは俺と水嶋を見て、『連れてきてしまったパターン』なのでは、と当時のことを思い出したらしい。 実際、ナルセが原因でヤンデレの女を幽体離脱させてしまったのかはわからないが、彼は自分のせいであることを疑っていない様子で、しばらく話を続けた。
「めっちゃ現実逃避してぇ、みたいな強い気持ちを感じると引っ張ってきちゃうのかなーとか、なんとなく考えたのを思い出したわ」
「うーん……水嶋に関して言えば、その線は薄そうですね」
猫が拡声器を抱えながら、ふわふわと空中を漂っている。 ナルセは一通り語り終えると、ホッケーの球を生成しては棒で打つ、を繰り返していた。 ゴルフでいう打ちっぱなしだ。 俺が球と棒の名称を尋ねると、こっちを見ようともせずに「パックとスティック」という返事が戻ってきた。 なんだかちょっとお洒落な呼び方に思えて腹が立ったので、ろくに相槌も打たず中指を立てて差し上げた。
【ぎゃー! 来るな! あっちいけぇ! 】
突然、水嶋の悲鳴と叫び声が聞こえた。 拡声器から響き渡ったその声に驚き、俺とナルセは互いの顔を見合わせる。
【ほーれ捕まえたぞぉ、ゆうりちゃぁん。 もう逃げられないぞぉ】
今度は紫苑さんの声だ。 多分、向こうの音声が拡声器から流れてきているのだろう。 ……いや拡声器ってそういうシステムないだろ、どうなってんだこれ。
ナルセが猫と拡声器に近付いて、「どうなってんだ?」と、俺の思考と同じような内容を口にした。
【んあっ! ちょ、ちょっと、やめ……変なところ触ら……んっ】
【あれぇ? 見かけによらずなかなかのボリュームじゃないかゆうりちゃぁん。 ほれほれぇ】
【やんっ、やめてぇ……くすぐった……もう、もう逃げないからぁ! あぁっ】
これは……是非とも映像で見たい。 音声のみでのお届けである事がもどかしくて仕方ない。
「おいケイタ、顔真っ赤だぞ」
「えっ、本当ですか? いやむしろ……ナルセさんよくそんな真顔で聞いてられますね」
「だって女の子同士だしなぁ」
「女の子同士だからいいんでしょうが!」
「……急に大声出すなよ、ビビるわ 」
しばらくの間、女同士の小競り合いや笑い声が続いた。
その音声は脳内で華やかな映像に変換されていく。
俺はいつのまにか無意識に瞼を閉じて、脳内に展開する耽美な世界観にとっぷりと浸かっていた。
視界からダイレクトに入ってくる情報と比べると物足りなさやもどかしさを感じていた筈だった。 しかし今はどうだろう?
……不思議な充足感に包まれている。 これは聴覚のみで楽しむ新しいコンテンツであり、視覚情報などという直感的な刺激を必要としないのだ。
極限まで振り切った童貞の想像力は、目の届かない遠くでじゃれ合う美少女達の芳香までをも再現する事すら可能にしていた。
「あぁ……すごいなこれ……すっごいや……なにこれ……」
「え、なにが? どうした? 大丈夫か? 」
【ゆうりちゃん……実はね、真面目な話がしたいんだ。 君と2人きりになりたかった】
【私もあなたに聞きたいことがあるんです】
2人の発する声のトーンが落ちた。
今は紫苑さんが後ろから抱きつく形で、水嶋の耳元に囁きかけている。 それを受けた彼女は少し顔を傾けて返す。 紫苑さんは腕を解き、あどけない美少女と相対すると、赤らんだ頬を優しく撫でてやる。
【あい、お待たしぇしやしたぁチーズ牛丼でぇいす! 】
【幽体離脱っていう状況を受け入れてくれた、と思っていいのかな?】
【今晩だけは付き合ってあげる事にしたの。 受け入れたわけじゃない】
【うんうん、そのスタンスは嬉しいよ。 熱しすぎず冷めすぎず……平熱で話すのが大事なんだ】
【いらっしゃいましぇーい。 一名様で? あい! お好きな席どぞぉ】
……拾ってる拾ってる。 舌ったらずな牛丼屋店員さんの音声ガッツリ拾ってるわ。
深夜の牛丼屋でじゃれ合ってんのかあいつら。 こっちは極限まで振り切った想像力でチューリップ畑を想像してたわ。
「なんか……ユーリちゃんが来たのってやっぱり結構なトラブルなのか? 牛丼屋……だよな? 駅前の吉田屋あたりかもな、向かう? 」
ナルセの存在も完全に忘れていた。
「いや、様子を見た方がいいのかな……紫苑さんも2人で話したいみたいだし……」
一体これは何なのか。
紫苑さんはどんな意図があって、この仕掛けを置いて行ったのだろう。 聞いていて良いものなのかすら、よくわからない。
【いきなりだけど……慶太って時々、ゆうりちゃんの前でびっくりするほど鈍感になる事がない? 人の気持ちや自分の気持ちにきちんとアンテナを張れるし、受信したものを言語化する能力もある癖に、人の話聞いてるのかってくらい飛んじゃう事があるでしょう? 】
あれ? 開幕から俺へのダメ出し?
【……確かに、鈍感です。 鈍感なフリしてるのかなって思うこともある……昨日もそうだったけど、特に私が……】
【ストップ。 わかってるから、最後まで言わなくていいよ。 それはね、多分芝居じゃないし、鈍感なフリをしてる訳じゃない。 昨日今日で確信した】
【なにを確信したんですか?】
【あいつは、恋愛喜劇的主人公症候群なんだ】
【ラブコメヒーロー……シンドローム……?】
これほど「なんだそれ」がしっくりくる状況は久しぶりだ。 俺が鈍感? 何に対して?
【あいつの心は、ゆうりちゃんからの好意を受信した瞬間にアレルギー反応を起こす。 心に入り込もうとした君の好意を、一瞬で意識の外に弾き出すんだ。 『鈍感』という鎧を瞬時に纏って、君の想いから自分を守ろうとする】
【……なにそれ。 なんの意味があるの? それがラブコメヒーロー……シンドロームの症状? 】
【そう。 昨今のラブコメ主人公が羅漢しがちな病気……いや、必須とも言える『超鈍感』という特性を、慶太は過去のトラウマを基盤にして構築したんだね】
【……単純に照れてるだけかも知れないし、なんか凄い憶測で語ってません? 】
【もちろん憶測だよ。 人の心は憶測でしか語れない。 ただ私は慶太に関して、君よりも沢山の情報を持っている。 その情報から導き出した憶測は、かなり真に迫ったものになっているはず】
【真に迫る根拠になるような情報があるって事です?】
【そう。 ラブコメヒーロー・シンドロームの発症は、相原桃乃……三年前の母親の死に起因する】
なんだ? この話。 どうしてこの状況で水嶋に? 三年前の話を蒸し返すなよ、何も知らないくせに。 水嶋に話してどうなるわけでもない。
【ガッシャァンコロォン!】
【失礼しゅましたぁ! 】
舌足らずな店員さんワンオペかな? 夜勤で疲れてるんだろうなぁ、思いっきり手ぇ滑ってるわ。 ……お前らとりあえず牛丼屋から出てこいや。
ナルセは興味のない人間のつまらなそうな話に飽きてしまったのか、再び「スティック」で「パック」を打ち始めた。
……なんでだろう、2人の会話に頭がついていかない感覚があった。 同時に、段々と心拍数が速くなっていくのを感じていた。
「……あー。 なんていうかケイタお前、その歳で母ちゃん死んでんの……? キッツイな」
「ナルセさん、その歳でデリカシーって語彙が死んでるんですか? キッツイですよ」




