表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/101

あの野郎、俺の左腕をしゃぶりやがったんだ。まるでビーフジャーキーみたいに


 大型のレムが入っていった棟の上部を見上げると、『B-7』と記されていた。入り組んだ団地のちょうど中央付近だから、敵が身を隠しながら逃走しやすい環境なのが少し気になる。

 ボブの部下2人が後を追って建物内に入っていったので、レムが食事をしている部屋の特定をしてから別の場所でボブと合流するのだろう。

 強い個体を相手にする場合、対象の位置や周りの状況を確認した上で作戦を練ってから当たるのが基本だからだ。

 

 付近の棟の屋上にボブが待機していると踏んだ俺は、水嶋とシラスに向き直り、親指で建物の屋上を示す。 2人ともその意味を理解したようで、無言で頷いた。


 「……自殺があったのはどの棟だ?」


 上昇しながら、水嶋に聞こえないようシラスに尋ねる。


 「ええと……たしか……B-7だった気がします。あ、この棟じゃないですか」


 建ち並ぶマンションの屋上が見渡せる高度まで到達したので周囲を伺う。予想通り、隣の棟の屋上で人影が動くのが見えた。


 「ボブだ。向かいの棟の屋上に居たぞ」


 「ふふっ。ボブ楽しみだわぁ。 ボブどんな人なんだろう」


 「普通の外国人ですよ? ボブは」


 「ねぇ、ボブって何人なの?」


 「えっと、ブラジルだったっけ?ボブ」


 「ボブはアメリカ人ですよ慶太さん」


 会話がボブで溢れてしまった。

 それにしても、これはあれだ。陽気な黒人のボブ、という言葉だけでイメージが先行して親近感が湧いてしまっているパターンだ。

 急に怖くなってきた。水嶋はただでさえシラスと仲良くなっているし、このままいくと俺の疎外感に拍車がかかりそう。ボブと彼女が急激に仲良くなったら、パーカッションを膝に挟んでセッションとか始めそうだ。そうなったらもう手がつけられない。

 

 ……ほうら、水嶋が目を輝かせてる。ボブに対する興味が(ほとばし)ってる。当のボブはぶっ飛んだ小娘が接近している事など知る由もなく、屋上の隅で胡座をかいて座っていた。俺たちは、彼の背後から接近していく。


 「ボブ……左手やられてません?」


 シラスの言葉を受けて目を凝らしてみると、確かにボブの左手が血に染まっていた。多分あの大型レムにやられたんだろうけど、ボブなら大丈夫だろう。なんせあのボブだから。 あまり気にせず、「おはよう、ボブ」と後方から声を掛けた。


 「オウ! ケイタサァン! オッハヨゴザイマース!」


 左手からアホほど流血しているボブが、とびっきりの笑顔をこちらに向けた。

 ドレッドヘアーで武骨な体躯。身長は俺より頭一つ高い。ここにいる女性2人が後ろに隠れたら、すっぽり隠れて見えなくなってしまうかもしれない。彼はいつもと変わらず、迷彩のズボンに白いタンクトップだった。 元傭兵のレゲエミュージシャンだと自己紹介されても疑う余地のない風貌だろう。


 「ボブ、さっき大型のレムを見たけど……あいつにやられたのか? 」


 「ユダンしてたら、左ウデ、持っていかれチマッテ……」


 恥ずかしそうに頭を掻いている。


 「意識は大丈夫か? 血が出過ぎてるんじゃないか」


 彼はおもむろにタンクトップを脱ぐと、端の方を(くわ)えて「ンヌアア"ァ!」と呻きながら真っ二つに引き裂いた。 ボロ雑巾のようになったタンクトップの切れ端を手際よく上腕付近に巻きつけ、口と右腕のみを使って器用に縛り上げる。 アクション系の洋画なんかでよく見る、ワイルドな止血方法だ。

 俺も生きてるうちに一度はやってみたいし、惚れ惚れするようなアクションだと思ったが、隣の水嶋とシラスは表情筋稼働率0%の真顔だった。女子には理解できない格好良さなのだろう。


 「ボブ……レムは俺が処理するから、ここで休んでていいよ」


 ボブは二つに裂いたタンクトップの片割れで血を拭い、ハチマキみたいに額へ巻いた。これはダサい。


 「イエ……ケイタサン。ヤラレっぱなしはショウにアイマセン。オレにヤラセテクダサイ!」


 「でもあいつ厄介そうだし、危ないもんなぁ」


 「アンニャロウ……!オレの……オレの左ウデを……ビーフジャーキーみたいにしゃぶりヤガッタンダ!」


 ボブは声を荒げながら天を仰ぎ、瞳を閉じると、「シューっ!」と長い息を吐いた。

 胸元に下がっているロケットペンダントを太い指で開き、中に入っているであろう写真にキスをしたまま数秒間静止する。そして再び夜空を見上げ、胸の前で十字を切った。


 「ねぇボブ、無理はしないほうがいいわ」

 

 水嶋がボブの前に立つ。その横顔を覗くと、痛ましげな表情で彼を見下ろしていた。

 ……どうした水嶋、唐突に突きつけられたボブ・ワールドに対して何かないのか? ボケないしツッコまないし、凄い自然に入ってきたな。もしかして、スッと入ってきた事自体がボケなのか?

 さっきまでボブとの初対面に向けてテンションを仕上げてるように見えたけど、期待外れだったのだろうか。

 『ボブ』『黒人』『陽気』、このキーワードから導き出したイメージが『肥満体型のポップなおじさん』だったとしたら、確かにガッカリするかもな。 ボブの容姿はどちらかというと威圧感があって怖い。完全に偏見だけど、街を歩けば高確率で職務質問からの所持品検査をされるタイプだろう。


 「……アナタはダレデスカ?」


 「私はユーリ。ユーリ・ミズシマ。 あなたと共に闘う戦士、いえ……この世界に舞い降りた女神、といった所かしら」


 ユーリ・ミズシマは顎を傾け、しなやかな黒髪をゆっくりとかきあげる。


 「メガミ……?」


 「ボブ、少し頭を冷やした方がいいわ。今のあなた、まるで羊毛の絨毯(ムートンラグ)に埋もれてしまったジェリー・ビーンズみたい」


 「ムートンラ……エ?」


 あ、その路線で攻めるのか。午後の洋画劇場っぽい言い回し選手権が始まる感じかな?

 いや始まんねぇな。早速例えが訳わかんないし、それっぽい言葉が「ムートンラグ」と「ジェリービーンズ」しか出てこなかっただけだこいつ。ボブも完全に置き去りにされてキョトンじゃねぇか。


 「ボブ、あなたには帰りを待つ家族がいるのでしょう? ここは私達に任せて、愛する人の元へお帰り」


 水嶋に流されないでくれよ、ボブ。

 ボブはありのままのボブで我が道を突き進んで欲しいのだ。頼む。


 「ユーリサン……コレをミテ」


 ……おい何やってんだボブ! おいボブ! ロケットペンダント内の写真を会ったばかりのイカれた小娘に見せてどうなるってんだよ。どうしてイレギュラーな存在に対して最初からアクセル踏み込めるんだよ、この世界の住人は。


 「わぁ……とっても綺麗な人……大切な人なのね?」


 「【ヴァネッサ】といいマス……ワタシのメガミデス。 ここでヒイタラ、カノジョにあわせるカオがナイ」


 「ボブ……あなたの魂、受け取りました。行きましょう!ヴァネッサの為に、そして……あなた自身の誇りの為に……!シラスちゃん、サポートをお願いっ」


 さて、ここまで沈黙を守ってきたシラスはどう出るかな?


 「目標の大型レムはB-7号棟内で睡眠中の人間を捕食中。ボブ、ユーリ、準備はいい?システム・オールグリーン。スリー、トゥー、ワァン……」


 「おい待てバカども。お前ら泳がしてたらあっという間に経済水域越えるわ」


 3人が一斉に振り返って俺を見た。


 「ケーザイスイーキってナンデスカ?」


 「正しくは排他的経済水域ですね。 水産資源に対して経済的な権利が及ぶ海域の事を言います。日本ではわざと自由にさせたり放置したりする事を『泳がせる』と比喩表現しますから、その比喩を現実の制度と絡める事で突っ込みに色を出してきたのでしょう」


 「オゥ、シラスさん!歩くウィキペディア!」


 「慶ちゃん、渾身のツッコミを丁寧に解説されてどんな気持ち?」


 俺の中で、何かが爆ぜる音がした。


 「……はい、お前ら右から順に、バカ!バカ!バカ! はい!お前ら全員バカ!……俺はもう一言も喋らない。 つっこまない!」


 このまま待っていれば、現場を下見しているボブの部下が戻ってくるだろう。最優先すべきはレムの駆除だ、ここにいるバカ3人にまんまと振り回されている場合ではない。胡座をかいて、ドッシリ構えていよう。


 「隊長ごめんよぉ、拗ねないでおくれ。私だって、この夢に翻弄されてばかりじゃ悔しいじゃん。ドリーム慶ちゃんを翻弄したいじゃん」


 「誰が夢に翻弄されてるって? いつにも増して自由に見えるぞ。……おいやめろ水嶋、猫をあやす時の手付きで顎を撫でるな」


 「んぁー? ……ふふふ…………かわいい」


 「引っ掻くぞコラ」


 「待ちクタビレタゼ! 2人がカエッテキタヨ!」


 「えっ!また登場人物増えるの?」


 『B-7棟』からスポーティな格好をした2人の少年が飛んでくるのが見える。水嶋は俺から離れてボブの隣に駆け寄ると、向かってくる人影に大きく手を振りだした。


 「もしかして……ゆうりちゃんに、この世界の事を話してないんですか?」


 シラスが腰を屈めて尋ねてくる。


 「話したけど、信じないんだ。明晰夢だと思ってる」


 「信じないって……ゆうりちゃんが急に幽体離脱(ぬけた)のも不思議ですけど、そうなったからにはキチンと説明しないと……」


 「いいんだ、これは水嶋にとって明晰夢の世界だから、それにとことん付き合う。今日だけ突発的に幽体離脱(ぬけた)だけだと信じて、夢のまま終わらせる事にした」


 「いや、無理でしょう……今後も継続して抜けるようなら絶対に気付きますよ? というか、そろそろ気付いてもおかしくない気が……ゆうりちゃんが危険な目に遭ったらどうするんです?」


 「俺がそんな状況にはさせない」


 「悪いフラグっぽいんですよねぇ……それ」という囁きが聴こえたが、無視をした。


 「もしかして慶太さん……夢だと思ってハジけてるゆうりちゃんが愛おしくて仕方なくてキープしようとしているのでは?」


 「べ、別にそんなんじゃねぇし……!」


 「うわぁ、わかりやすぅい……」

 

 虚をつかれた俺は、おもむろに立ち上がって水嶋とボブの元へ駆け寄る。

 2人の少年がボブの傍らに立ち、水嶋が中腰になって2人の顔を交互に見ていた。


 「ジャイアンツのボウシが『マコト』デス。マンユーのユニフォームが『シュン』」


 マコトとシュンが俺に対して「おはよーございます」と挨拶をしてきたので、片手を挙げて「うん、おはよう」と返した。


 「なんか、ボブの隣にショタ2人がくっ付いてると凶悪な画に見えない?」


 水嶋が眉を顰めて俺に問う。


 「なんでだよ」


 正直、気持ちはわからなくもなかった。


 「ボブ隊長、誰?この人」


 ジャイアンツの帽子を被ったマコトが、ボブの迷彩ズボンを二、三度引っ張る。それに応えるように、黒く逞ましい掌がマコトの頭に置かれた。


 「ユーリさんダヨ。ケイタサンのコレ」


 そう言ってボブは、立てた小指を2人のショタの前に掲げた。やかましいわこの黒人。

 水嶋が「まぁ!」とワザとらしく口元を抑えている。


 「マコト、シュン。ごきげんよう。 私のことはユーリお姉様とお呼びなさい」


 「は? 嫌だよ。慶太さんの女だからって良い気になるなよ?おっぱい揉ませてくれるなら呼んでやるよ」


 「ねーちゃん何様なの? 子供相手だからっていきなり失礼じゃない? 常識ないの?」


 マコトの豪速球が水嶋のバットをへし折り、シュンのフリーキックがゴールネットを揺らした。

 水嶋は頭を下げて3秒ほど自分の足元を見つめた後、潤んだ瞳を俺に向けてきた。下唇を突き出して涙を堪えている。かわいい。

 この世界で初めて反抗の意思を示してきた反乱分子に心を砕かれたのだろう。いやメンタル弱すぎかこいつ。


 「とりあえず座ろう。 マコト、シュン。状況はどうだった?」


 俺たちは円になって地べたに座った。

 水嶋は一人だけ円の外を向いて遠い空を眺めている。シラスが慰めるように彼女の頭を撫でていたが、今は放置しておく事にする。

 シュンがスケッチブックを生成して3LDKの間取りを簡単に描くと、リビングと隣り合わせの部屋に、棒人間を横たわらせた。


 「えっと、食事中の部屋は802号室。ここから見て、最上階の左端から二番目だね。和室におばさんが布団を引いて寝てる。リビングとの間に引き戸があるんだけど、そこは開いてた」


 「一人で寝てるのか? 他に家族は?」


 俺の質問に、マコトが身を乗り出す。


 「別の部屋でおじさんがパソコン弄ってたよなシュン! もう一つ部屋があったけど、そこには誰も居なかった!」


 「なるほど。どうする? ボブ」


 「ニンズウが多いデスカラ、ミンナでイッセイにカコンデ、ボッコボコにシマス」


 「……頭を冷やすんだボブ。それはママの焼いたラズベリー・パイをミキサーでスムージーにして飲むような行為だぞ」


 「慶太さん今日よく喋りますね。どうしたの? どっかで頭でも打ったんすか」


 ショタ二人とボブの冷ややかな視線を受けつつ、水嶋の様子を伺う。……ダメだ、食いつかない。シラスもびっくりするくらいの冷めた瞳で俺を見つめている。ユーリ・ミズシマが純粋無垢な少年達から受けた精神的ダメージは相当デカイみたいだ。


 「えっと、一番避けたいのは、レムがマンション内を逃げ回る事だ。壁が多過ぎてすぐに視界を遮られるから、追い掛けるのが難しい」


 「マンションは前後上下左右、逃げの選択肢が多すぎるんだよね。今まで何度逃げられたか」


 シュンが落ち着いた発声で呟く。

 俺はスケッチブックに書かれた和室の周囲三点を、順番に指で示した。

 

 「今回は追い込み漁だな。玄関側、リビング、隣の801号室側の壁、三方向から一斉に奇襲して退路を限定する。ベランダから外に出すんだ」


 「下に降りられたら厄介だね! 」


 マコトは昂ぶる感情を抑えきれない様子で足をバタバタさせていた。久しぶりの大物に興奮しているみたいだ。


 「階下に逃げる可能性が一番高いから、俺がそこで待機する。ボブは建物の外で屋上とベランダ側をカバー。どちらに逃げても挟み込めるように誘導する」


 俺が早口で捲したてると、2人のショタからいくつかの質問が飛んでくる。シラスはレムが奇襲に対して逃げるのではなく、反撃してくるのではないか、と危惧しているみたいだった。

 しかし俺は、そんな議論よりも気になる声に聞き耳を立てていた。ボブと水嶋が、小さな声で会話をしていたからだ。


 「……ねぇ、ボブって普段何してるの?」


 「フダン? シゴトのコトデスカ?」


 「仕事してるの? どんなお仕事?」


 「モギリ」


 「モギリ?」


 「シブヤの映画館で、チケットをもぎってマス」


 「え、完全に筋肉の持ち腐れじゃん」


 「ホントはァ、ポップコーンつくる方をヤリタイケド」


 「もうちょっと重いもの扱えば? どうして空気みたいな軽さの物ばかりを扱おうとするの? その筋肉使っていこうよ、筋肉」


 「デモ、キャラメルアジはちょっとオモイヨ。ハハハ」


 「あー、確かに。 キャラメルがコーティングされてる分、塩味よりは重いもんね。……いや誤差でしょそんなの! ふはは……!」


 「ユーリサンはエガオがステキですヨネ」


 「あら! お上手ですねぇ……! ねぇ休みの日は何してるの? やっぱりサイドカーの付いたハーレーで海沿いをぶっ飛ばしたりしてるの……?」


 さすがの俺も、我慢の限界がきた。

 

 「ボブと水嶋!……今みんな真剣だから。大型レムの対処で議論交わしてるから! 私語は慎んで!」


 楽しそうなのが悔しかったことは否めない。でもボブ、お前一隊長としての自覚どうなってんだよ。そんで意外と自分のプライベート切り売りするタイプなんだな。本当なのかその職業? 明日渋谷の映画館しらみつぶしに探って、陽気な黒人がチケットをもぎってるかどうか確かめに行ってやるからな。


 「あのぉ……慶ちゃんに、私とボブの会話を中断させる権利があるんですかぁ?」


 「あるよ。何故なら俺はボブの上司だから。そして今は仕事中だから。ボブには時給が発生してるから」


 「チッ、はいはいすんませんしたぁ」


 「いま舌打ちしただろオイ」


 深呼吸して心を落ち着かせる。

 対面のシュンが眉間に皺を寄せていた。彼はいつの間にか、サッカーボールを片手に持っている。

 マコトの方は片膝を立てて、金属バットを杖のようにして身体を支えている。先程とは打って変わって真剣な眼差しだ。


 「奇襲の目的はダメージを入れる事じゃない。相手の行動を制限するのが第一。それから、俺とボブっていう本命の戦力を効果的にぶつける為の陽動だ」


 「俺たちは囮か……」


 まさにその通りだった。奇襲で退避させられずに、反撃されるようなら、最初の3人が囮になる形だ。

 経験上、レムは多勢に奇襲を受けたら逃走を図る。というよりも、まずは距離を取ろうとする。 俺の見立てでは、反撃してくる確率は10%に満たないくらいだった。不安要素があるとすればボブの左腕だが、ベランダから逃げたらすぐに俺がフォローに入れば問題ないだろう。


 シュンとマコトは幽体離脱してから一年にも満たないが、才能に溢れていて頭もいい。しかし、まだ弱い。経験が圧倒的に足りない。

 ボブの部隊は猪突猛進スタイルで『見つけたら囲んでボコす』が基本だ。

 こういう機会に、色んな戦い方がある事を覚えてもらいたかった。


 「囮って言うと言葉が悪いかもしれないけど、重要な役割だよ。 今ここにいる戦力と相手の力量から判断して……」


 「け、慶太さん」


 突然肩を叩かれて振り返ると、シラスがB-7棟の方角を指差していたので、示された方を目で追う。

 視界に飛び込んできたのは、全力で飛ぶ水嶋と、それに追従するボブだった。


 「ボォーーーブ! 何やってんだ!! ストォッーーップ!!」


 大声で叫び、前を飛ぶ2人を追う。


 「水嶋ぁ! ほんと、お願い戻ってきてぇ!」


 ほぼマックスのスピードだ。

 だけど、どうやら追いつきそうにない。

 後方からマコトとシュン、続いてシラス。

 名刀・桃乃介の鞘に添えた手に、力が入る。

 ボブと水嶋が802号室に突っ込んで行く。

 俺は限界を超えて、更に加速した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生チーレムギャグ小説も書いております。 『始まりの草原で魔王を手懐けた男。』 ←よかったらこちらも覗いてみてください!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ