有部咲流・抜刀術 〝五月雨〟
俺と水嶋は通りが見渡せる信号機の上に移動して、ノソノソと歩くレムの背中を追った。
彼女はその光景を眺めながら「なんだか可愛いバケモノだなぁ」などと呑気なことを言っているが、美醜の基準が一般人のそれから逸脱しているとしか思えない。
俺は彼女に顔を寄せて、桃乃介の刃先で住宅が建ち並ぶ一画を指し示した。
「多分、あの辺りの家に向かってるな。これからお食事タイムだ」
「もしかして食事中に殺すの?」
「いや、食事が終わってから。出てきたところを狙う」
「うん、私も食事中に殺されたら地縛霊になる自信ある」
あの個体は他の建物には目もくれず、迷うことなく足早に歩を進めていた。
基本的にレムは、ふらふらと彷徨いながら様々な建物を物色して、眠っている人間を見つけると手当たり次第に食事を摂る。 今追っている個体のように、目的地が決まっているような動きを見せる場合、【栞】の元に向かっている可能性が高い。
彼らは、幼生時代に食べた感情の中で最も気に入った味の持ち主を記憶し、その元へ何度も足を運ぶようになる習性がある。 つまり、「好みの感情」を持つ特定の人物を一名だけ選別してリピーターになるのだ。
そうやってレムに選ばれた特定の人間の事を【栞】と呼ぶ。 この呼び名は支部によって違うようで、嘉瀬のメンバーは【宿主】と呼んでいた。
「あいつは運がいいなぁ。 最後の晩餐が栞みたいだ。 しっかり堪能してもらおう」
これは、俺にとっても都合が良かった。
レムが周辺の住宅の中でも際立って古い、トタン張りの平屋に入って行くのを確認する。
「いやシオリって誰やねん」
「よし! じゃあレムが食事を終えるまで、駆除の大まかな流れでも説明しておこう。予備知識を入れておいた方が見応えがあると思う」
栞の説明が面倒だったので話を切り替える。レムの駆除にはいくつかの工程があるので、解説をしながら実演する気でいたけれど、そんなに器用な真似が俺に出来るか不安だった。
食事を終えて出てくるまでの余裕が出来たので、予備知識として駆除の工程を教えておけば、俺の方も駆除だけに集中できるだろう。 そんな発想からの提案である。
「先生! それよりも私、レムちゃんがお食事しているところが見たいです! どんな風に人間の感情を食べるんですか!」
興味津々だ。考えてみれば、誰だって最初に興味が湧くのはレムの食事風景かもしれない。
水嶋が両手を合わせて、上目遣いで俺を見つめていた。 弟のアキが「女の子がおしっこしてるところが見たい!」と生物学的な知的好奇心を露わにした時の瞳とよく似た煌めきを湛えている。
「あらっ! 水嶋さんは好奇心旺盛ですねぇ!じゃあ……今回は特別だぞっ!? 先生について来いっ!」
レムが侵入した一軒家に親指を向けて、ニヒルな笑みを彼女に返した。
水嶋のテンションに当てられて、俺も心が昂ぶっているのを感じている。ここからは今日一番の見せ場になりそうだ。俺の新たな一面を、そして彼女が見たことのない世界を、最高のコンディションで見せてやりたい。 絶対に失敗る訳にはいかない。
「……急にどしたん」
あれ? せっかくテンション合わせたのに、乗ってこないんだ。寂しいじゃんそんなの。
「えっ、いや、ごめん。 俺の土俵だし、たまにはアホみたいにノリノリでもいいかなって……」
「うん、でもいい感じだよ。 その調子で」
「あ、ありがとうございます」
何様だよこいつ。絶対に俺が滑った感じに持っていくよな。もしかして人質でも取られてるのか? 俺を滑らせないと人質が殺されるのか?
「慶ちゃん先生、レムが入っていった家まで競争する? 100m自由形で」
「……俺、バタフライで行こうか?」
「ダメだよ。慶ちゃんバタフライめっちゃくちゃ速いじゃん」
「俺のバタフライ見たことないじゃん。 さっきの怨み忘れてないぞこの野郎」
エアクロールで前進を始めた水嶋の後を追う。自由形とのことなので、俺は桃乃介を肩に担ぎ、胡座をかいた状態でゆっくりと飛行した。
前を行く水嶋が振り返って俺の様子を伺ってくる。
「あれぇ。 ふはは! その飛行スタイルいいですね先生ぇ! 剣聖っぽさ出てます! 」
牽制? 別に何一つ牽制しているわけではなかったが、けらけらと笑って楽しんでいるようなので掴みは上々みたいだ。 彼女は俺の真似をして胡座をかくと、大仏と見紛うほどの神々しいポーズをとりながら並走を始めた。 最初から思っていたことだが、浮遊センスが抜群である。 初めての幽体離脱でここまでのコントロールは、なかなか出来る事ではない。
「隊長、私も武器が欲しいのでありますが」
空中で静止してこちらに向き直ると、唐突に武器を要求してきた。 なるほどね。 やはり俺の帯刀姿に憧れを抱いていたのだろう。
「水嶋くん。 すまないが、君に武器はまだ早い」
「いえ、隊長の足を引っ張りたくありません。 私も一端の戦闘員です! 自分の身は自分で守るであります!」
寸劇が始まった。何をイメージしたキャラクターなのかは聞いてもわからないだろうし、折角なのでこのまま彼女のテンションに同調していく。
「……私の剣を継承したい、という事だな? 」
「いえ、剣ではなく草刈機が欲しいです」
イレギュラーな返答。
「え…… 草刈機? 百歩譲ってチェーンソーじゃないか。 こういう時は」
「だって草刈機は……草を刈り取る形をしてるだろう?」
「そりゃ草刈機なんだから、草を刈り取る形だろ」
水嶋がつまらなそうな顔で会話を止めたので、きっと俺が返答を間違えたのだろう。 慣れないノリには乗らない方がいいということか。
既に目標の家屋が眼前に迫っているので、素早く水嶋の前に回り込み、両手をあげてストップをかける。
「ここからは静かにな。どの部屋で食ってるかわからないけど、気付かれないよう慎重に行くぞ」
「了解です、隊長! 不法侵入でありますが、大丈夫でしょうか?」
「住民の緊急事態にレスキュー隊が窓をぶち割って入ったら不法侵入か? 咎める奴がいるか? つまりそういう事だ!」
「ガバガバでありますね、隊長!」
「さぁ、行くぞ!」
行儀よく玄関から侵入する。 廊下の奥にある襖から、微かな明かりとテレビの音声が漏れ出ていたので、まっすぐにそちらへ向かった。 後方の水嶋は緊張した面持ちで両手を前に下げ、幽霊のような姿勢で周囲を物色している。
俺は明かりが漏れる室内に、顔面を半分だけ通してみた。
……老人だ。 痩せ細ったお爺さんが、一人掛けの低いソファに腰を沈めて眠っている。 弛緩しきった表情で涎を垂らしているあたり、ゴキゲンな夢を見ていることは間違いない。
先ほどのレムはその後ろにしがみつき、大口を開けて老人の後頭部に噛り付いていた。 二本の鋭い牙が、禿げ上がった左右の側頭部に突き刺さっている。 レムはその牙から、感情を吸い出しているのだ。 耳を澄ませていると「ズルル、ズルル」という食事音が聴こえてくる。 子供が蕎麦を啜るような音、という表現が近いかもしれない。
付けっ放しの液晶には深夜のテレビ通販番組が映し出されている。 きっとこの老人は、テレビを観ながら眠ってしまったのだろう。 水嶋はと言えば、廊下を挟んで斜向かいの部屋を物色している様だったので、そちらに顔を覗かせて手招きをした。
「リビングにいたぞ。 ちょうど食べ始めたところだと思う。くれぐれも音を立てないように。最期の晩餐だから、たらふく食べさせてやりたい」
「あっ、了解です、今行きます。 隊長」
「こう……顔だけ壁抜けして、レムにバレないように頼むぞ」
ジェスチャーを交え、声量を絞って指示を出す。 水嶋は指でオッケーサインを作って掲げた。 先ほどよりも見やすい方向に彼女を誘導し、二人並んで室内に顔を突っ込む。
……レムの食事風景を目の当たりにして、今度はどんな表情を見せてくれるだろう。
そんな事を考えながら彼女の顔を覗くと、とても驚いた様子で瞳をパチクリさせている。可愛い。
……更によく見ると、口元がわなわなと震えていた。どうしたんだろう。 ……怖いのか?
「おっ、おじいさんが! 脳髄を啜られながらアヘ顔を決め込んでいるっ!?」
「声がでけぇよ水嶋ぁ!」
俺たちの声に驚いたレムが、お爺さんから離れてその場から離脱していった。
やってしまった。声のデカさを注意する声の方がデカイ、というコメディのテンプレートを丁寧になぞる痛恨のミスも犯した。
「ほらバカ、水嶋のバカァ! レムびっくりして逃げちゃっただろう!」
「えぇ…… だって、おじいさんが脳髄を啜られながらアヘ顏を決め込んでいるから……」
「そのフレーズ気に入ったんか? おい。 二回言われても笑えないぞ!」
「衰弱したお爺さんがレムに吸引されて昇天間際の様相を呈してるから……」
「奇抜なワードチョイスでゴリ押しするな!アホ!あぁ、ほんっともう……水嶋のアホゥ!このポンコツロリ!」
「……あへぇ!? そこまで言うか!? そんなに怒らなくたっていいじゃんかぁ! それに慶ちゃんの声のが全然大きかったぞ! このボンクラ包茎!」
「ああああああああ! 」
罵りの語彙が尖り過ぎなんだよ、この人。 あ、ヤバイなんか涙出そうだわ。 どうして俺はこんなにムキになってしまったのだろう。 いや、その理由は明確だ。
レムは満腹になればなるほど、殺した時の演出が派手になる。 【栞】であるじいさんの感情を食った後なら尚更だ。俺はどうしても水嶋に、それを見せてあげたかった。思惑が外れてついカッとなってしまった。
頭を冷やせ。 思い通りに事が進まないからキレるなんて、ゲーム機に八つ当たりする子供みたいじゃないか。
「……ごめん水嶋、カッとなった。 ポンコツとか言って悪かった」
「私の方こそごめん。 包茎とか……現実の話を持ち出して」
別にそれを指摘される事自体は、大したダメージには繋がらない。
しかし、我がムスコを観察され、冷静に分析されているという事実が俺の魂を揺さぶっていた。
それはとても屈辱であり、恥ずかしくもあり、しかしながらほんのりと、謎の高揚感に包まれる。
今日はあらゆる局面で「新たな扉をノックされている」感覚を味わっている気がした。
言い返してやりたい気持ちもあったが、彼女は見かけより貧乳ではない。 その事実を数時間前の風呂で知ってしまっているので、彼女の身体的なコンプレックスを突く事ができなかった。
「この貧乳!」では嘘になるし、「ちょうどいい乳!」では褒め言葉になってしまう。 いや、そもそも相手の身体的コンプレックスを突くとか最低の精神攻撃だろ、このサイコ野郎。
ぼけっとしている水嶋を、じっと睨みつける。
すると突然、その緩い表情が強張った。
「慶ちゃん危ないっ! 後ろっ!」
彼女が大声で叫ぶ。
まさか、食事を邪魔されたレムが襲ってきたのか? 瞬時に思考を展開した俺は、振り返りざまに左手の桃乃介を振るう。
……しかし、そこに立っていたのは虚ろな目をしたお爺さんだった。こちらの姿は見えないし、声も聞こえない筈だが、何故かファイティングポーズを取って小さくステップを刻んでいる。 当然、桃乃介はじいさんの身体をすり抜けて空を切った。
「慶ちゃん気をつけて! さっき隣の和室でお婆さんの遺影と、具志堅のサイン入りポスターを見つけたの! つまりそのお爺さんは奥さんを亡くして現在一人暮らし。 元ライトフライ級世界王者の信奉者で、ボクシング経験者の可能性が高い! 懐に入らせないように距離を取って戦うのよ! 」
「おまえ急によく喋るなぁ! このじいさん寝惚けてるだけの一般人だぞ! 駆除対象じゃないから!」
じいさんは弱々しいシャドーボクシングを始めた。 寝ぼけているか……あるいは軽度の認知症だろう。 可哀想ではあるが、もしそうだとすれば、俺にじいさんを救う術はない。
「ここは私が!」
じいさんの左ジャブに合わせて水嶋が上半身を揺らし始めた。 カウンターの右フックを放ったようだが、水嶋の拳はじいさんの顔面をすり抜けていく。
「た、隊長! 物理攻撃が通りません!」
「うん。 何ラウンドで満足します? 俺はセコンド役をやってりゃいいすか?」
じいさんは早々にシャドーを切り上げて、覚束ない足取りで台所に向かった。 水道から水を出している音が聞こえてくる。正気に戻って、水分補給をしているのだろう。
「このおじいちゃん……きっと寂しいんだろうな。ひとりぼっちで」
「水嶋、名も知らぬじいさんに感情移入するな。 今の俺たちに出来ることは何もない。レムを追おう」
「飯田さんな! 飯田茂吉さん」
「知らんわ。 これ以上モチキさんのプライベートに踏み込むな」
「モキチな。 も、き、ち」
しびれを切らした俺は、水嶋を抱き上げてお爺さんの家を離脱した。 図らずも「お姫様抱っこスタイル」になってしまったが、まずは周辺を見渡せる高度まで上昇して、逃げていったレムを探す。 まだそれ程遠くまでは行っていない筈だ。
「あらやだ……お姫様抱っこだぁ……やるじゃん、慶ちゃん」
「え……あ、ごめん」
抱えた水嶋を解放しようとしたが、首元をがっちりホールドされていた。
「ねぇ、優羽凛って呼んで」
「……え? 何……? 急に」
顔が近すぎる。 ゴタゴタしていて感覚が麻痺していたが、あまり意識すると動悸がしてくる程の可愛いさだ。 無駄のない輪郭、やる気のなさそうな目、新鮮な果実を思わせる、ぷっくらとした瑞々しい唇。 柔らかな髪が少しだけ乱れた様が、なんとなく色っぽい。
「ゆ……優羽凛……?」
「もう一回」
「優羽凛」
「えへへ」
なんだこれ、こいつお姫様ゴッコでもしてんのか? からかわれてる気がするからカウンターで濃厚なキッスでもかましたろかな。
「み、水嶋。 さっきのレムを探そう、そんなに遠くまで行ってないだろうから」
「んー? 真下にいるよ。 おじいちゃん家のお庭に。 もうレムなんかどうでもいいよ慶ちゃん」
小さな庭の片隅で、レムが植木の陰に隠れているのを確認した。 あのクソレム、庭で様子伺ってたのか! 舐め腐りやがって。
「仕留めるわ」
「んぇえ、もういいよ遊園地行こうよぉ。 観覧車乗ろぉ」
水嶋を抱えたまま急降下。 レムが身を潜めている植木を目掛けてスピードを上げていく。
「ぎゃああ! 怖い! 怖い! ジェットコースター的なあれは望んでない!」
「ちゃんと捕まってろよ!」
目標まで数メートル。
身体を反転させて体勢を整える。
「オラァ!」
落下の勢いを保ったまま、レムの脳天目掛けて右足を叩きこんだ。 ぎゅぅう、と呻き声を上げながらレムが地に伏せる。
「水嶋、そっちの縁側に座って見てて。 ここからが俺の仕事だ」
立ち上がったレムの全身が、みるみるうちに鮮やかな赤色に染まっていく。
『赤』は『怒り』。 食事を邪魔された挙句、不意打ちの蹴りを貰ったのだから、臆病なレムだって『怒り』に『染まる』。
「レムちゃんが赤くなった!」
「怒ってるんだ。 こうなるともう、俺をぶっ倒す事しか考えてない」
「ねぇ、縁側に座ろうと思ったら先客がいる!」
縁側に茂吉じいさんが座っていた。寝付けなくて夜風を浴びにきたのだろうか? 水嶋がその隣に腰掛けて、俺の言葉を待つように前傾姿勢を取った。
「レムの駆除にはいくつかの工程があるんだ。 えっと、まず一つ目は、弱点を見極める事。こいつらは個体ごとに弱点の位置が違うから、それを探るところから始める」
「めちゃくちゃ攻撃されてますけど平気ですか隊長!」
怒りに支配されたレムが、俺の身体を猛烈に乱打してくる。思った以上に獰猛なタイプらしい。
「だ、大丈夫だ。こ、こ、この程度のレムなら、さ、三分と掛からず仕留め……あ痛っ、仕留められる」
「隊長、流血してますが!」
「大丈夫だ。 凄く痛いだけだ」
「それを大丈夫とは言わないのでは!?」
「弱点の位置は見た目では判別できないから、攻撃を当てた時のリアクションや感触で、大まかな位置を判断する」
レムの首元を抑え、強引に引き寄せる。
前屈みになった相手の顔面に右膝を叩き込む。
仰向けに倒れたレムから距離をとって、桃乃介の間合いを作る。 そして水嶋の方をチラ見する。
「ドヤ顔をチラつかせるな」
彼女の冷たい言葉を受け入れつつ、桃乃介を鞘に納める。 レムが起き上がって、ブルブルと顔を振っていた。 おそらく突進してくるだろう。
「いや桃乃介は使わないんかい」
甘いぜ、水嶋。 居合斬りって知ってるか?
俺は勝負を決める時、刀を一度鞘にしまうんだ。
「有部咲流・抜刀術……」
「恥ずかしいから技名とか叫ばないでね! 絶対に叫ばないでね!」
「〝五月雨……!〟」
「あちゃあ……」
居合斬りを起点に繰り出す八回の連続斬撃。
六撃目に、確かな手応え。
人間で言う肝臓の位置に、弱点を確認。
弱点周辺から切り口が再生していく。ビンゴだ。
懐から【隠し剣・春秋】を抜きつつ、一瞬で間合いを詰める。
弱点に春秋を突き立てると、「きゅうう」と呻きながらレムが卒倒した。
「第一段階終了。 今、レムは気を失って硬直してる状態だ」
「何やってるのか全然わからなかった」
無理もない。特に春秋を抜いた辺りの動作は、水嶋の目には追えない速度だっただろう。どのタイミングで使用したかわからないからこその、『隠し剣・春秋』だ。
「これで終わりじゃないの? なんだかレムちゃんが可哀想としか思えないけど」
「むしろここからが本番と言っても過言ではないぞ……水嶋くん」
「あ、そうすか。 頑張ってください」
はい、これは照れ隠し。 この素っ気なさは百パー照れ隠し。 俺の勇ましい姿を見て、内心はときめいているのだろう。 頭の中で少女漫画のようなモノローグをガン吹かししている筈だ。
「ねぇねぇ茂吉じいちゃん、あの痛い兄ちゃんが弱い者イジメしてるよ。 ……あれ? じいちゃん? 死んでないよね? さっきから微動だにしないけど」
縁側に座っている二人が、まるでおじいちゃんとその孫、といった様子の微笑ましい空気感を演出していた。




