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混沌世界の面倒臭がり調律師  作者: 天柳啓介
二章 真理の遺跡
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文字数:1917字

 関所を抜けたアミルたちを出迎えたのは、まさに豪華絢爛という表現が実にしっくりくるような煌びやかな街並みだった。

 最新技術が詰め込まれた同じく巨大国家とされるランゼルグを『近代的』と評すのならば、このロイフェーリトは『貴族的』。周囲の建造物にはありったけの装飾や見た目に対する工夫の凝らしが見られ、待ちゆく人々の服装も私服というよりは正装という方が近い。

 更にメインストリートである関所から伸びた大通りには雑貨店や薬屋などの日用品店に加え、宝石店やお洒落な洋服店など、外見を気にする傾向にあるロイフェーリトの民の需要にもしっかりと答えた店舗が多く存在していた。


「さて、それでは……」


 と、アネラスを筆頭にした三人は背後に付いてきていた少女の方に振り返った。

 こんな煌びやかな街並みでもその見た目は浮いていると言ってよく、それどころか左手に持った巨大な長物も相まって、ロイフェーリトでなくともその存在は目立って見えそうである。

 三人の視線を一挙に受けた小さな少女は、えっへんと胸を張るしぐさを見せた。


「――うむ、まずはウチを助けてくれたこと、非常に感謝する。ウチの名前はメメ。気軽に『メメちゃん』と呼ぶが良いぞ!」


 メメ、と名乗った奇妙な服を身に纏った少女の自己紹介が終わると、アネラスが他二人の紹介も交えて自己紹介をした。


「なるほど。お主らはギルド加入者じゃったのか」

「はい。えっと……メメちゃんはどうしてこの国に来たのですか?」

「簡単に言ってしまえば、"遺跡の調査"といったところかの」

「遺跡……?」


 首を傾げたアネラスに、メメは「うむ」と一つ頷いた。


 実はこのロイフェーリト帝国の周りには、いくつもの古代遺跡が発見されているらしい。

 メメは魔術師であり、魔術師は魔法師以上に研究者と並行している者が多い。彼女もそんな中の一人なのだろう。

 遺跡とは未知の塊、研究者にとっては涎が出るほどの知恵の楽園だ。古代に生きた人々が何を想い、何をしていたのか。それらを永き刻の果てに眠らせている保存施設。それがこの世界における遺跡という場所だ。


「凄いですわ! その歳で立派に研究をされて、それに魔術師さんでもいらっしゃるなんて!」

「むふふ、もっと褒めてくれてもいいのじゃぞ?」

「素晴らしいですわ、尊敬ですわ! さすがメメちゃんですわーっ!」

「いいぞいいぞ、その調子じゃ!」

「??盛り上がっているところ済まない、一ついいか?」


 街中でてんやわんやと騒ぎ始めた少女二人に、クラネが疑問があると手を挙げた。


「む、なんじゃ?」

「キミは魔術師なんだろう? 魔術師と言えばこのアミルのようにギルドに所属するか、もしくは自国専属の魔術師としてある程度ならば身元は証明できるはずだ。何故、関所で身元の証明ができなかった?」


 クラネのその質問に、メメの表情が若干ながら暗くなる。

 何か後ろめたいことがあるのか、それともただの気のせいか。

 しばしの沈黙が先ほどまでの騒がしさを遠くへと追いやる。

 埋もれていた街中の喧騒が一層耳にこだました。


「ウチはな、正確には"正式な魔術師"ではないのじゃ。国に認められた、な。それに、仮に今国に戻ったとしても正式な魔術師にはなれんのじゃ。……ウチの国は、もう無いから」

「それって……」

「結構昔の話じゃ。それに、小さい国じゃった。無くなってしまうのは仕方ない」


 小さな国は、他の強国に飲み込まれる。

 それは、この現代でもよくあることだった。

 戦いに負け、強制的に領土を奪われる。独自の技術を持つがため、その技術の提供を条件に合意のもとでの合併。

 ひとえに飲み込まれると言ってもその手段は様々だが、どうやらメメの母国はあまり良くない飲まれ方をしたように思えた。


「そうか……悪いことを聞いた」

「いいんじゃ、もう過ぎたことじゃしな。それに、これから共に行動する者らに隠し事はあまりしたくない。何か気になることがあれば聞いてくれて構わんぞ」


 そう言うメメの表情は、もう暗くなかった。

 にっこりと満面の笑みを浮かべてこちらを見上げてくるその様は、年相応に備えられた無邪気な笑顔。


「よし、後はウチのとっておきの魔術を見せつけるだけじゃな」

「それなら外に出る必要があるね。一旦ギルドに寄って適当な依頼を受けてこよう」

「そう言えば、見たところお主は魔法師か? ならお主の魔力操作も見物したいものじゃ」

「え。面倒く」

「決まりですわ! さぁボードネスさん、急いで魔物の討伐依頼を回収してメメちゃんと競争ですわ!」

「いや、ちょっ……あぁぁぁ――――」


 言葉を遮るように、アネラスがアミルの腕を引っ張り引き摺って行く。

 もはや恒例となり始めたこの一連の動作に、メメは「仲がいいのう」と微笑ましい笑顔をたたえていた。

次話もよろしくお願いします


TwitterID:@K_Amayanagi

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