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叶わない恋

 窓の無い個室に男性が二人。一人は軍服を着ているが、もう一人はジャージ姿である。飾り気のない殺風景な部屋で向かい合う二人は睨み合っていた。


「ジャックから全て聞いている。オイルを撒き散らした挙げ句、火をつけようとしたんだろう? 何でそんなことをしたんだ?」


「脅されたんだ。ああするしかなかった」


「誰にされたんだ?」


「アリサという女だ。ピンクの髪の」


「女に?」


「頭に銃を突き付けられたんだ。従うしかなかった」


「銃を持っているのか」


「小型の銃にハンドガン、軍から奪ったライフルを持っている」


「ライフル強奪の犯人なのか!?」


「それも協力した。いや、させられたんだ」


「その女はどこに!」


「それは知らない。これ以上の面倒は御免だ!」


 ジャージのポケットに隠していたスタンガンを使って軍人を気絶させると、軍服を剥ぎ取って着用した。何食わぬ顔で部屋を出ると、そのまま司令部を出る。


「誰のお陰で行動出来ていると思ってやがる。脅されたとはいえ、素直に従うのは終わりだ!」


 司令部の門を飛び出して去っていく男。端から見れば、見回りをしている軍人だろう。


※ ※ ※


「そこまでだ、アリサ」


 銃を構えたまま、真っ直ぐアリサを見つめるジャック。スズメに突き付けられていた銃を弾き飛ばしたことを確認すると、ゆっくりとアリサに近付いていく。


「どう……して!?」


「スズメを背負っていく不審な軍人を見たとの情報があった。辿り着いた先がここだった。アリサ、無駄な抵抗はするな。……これ以上、オレを悲しませるんじゃないの」


 厳しい顔から優しい顔へと変わるジャック。アリサの手をそっと引くと、『連れていけ』と仲間に指示をした。


「ジャック! どうして私を見てくれないの!? どうして私を……私以外の女を!?」


「アリサ。お前さんは勘違いをしているの。オレはお前さんを見ていた」


「嘘よ! そこの女とベタベタしているじゃない! 私のことなんか眼中にない!」


「お前さんは勘違いをしているの。オレはお前さんのことを見ていたが、あくまでも幼馴染としてだ。お前さんがオレに好意を抱いているのは気付いていたが、オレはお前さんのことを恋愛対象としては見ていない」


「そ、そんな!?」


「お前さんを傷付けたくないと黙っていたが、それが裏目に出てしまったようだ。オレにも非はある。が、お前さんのしたことは許されることじゃないの。軍人に向かって発砲し怪我を負わせたのが一番重いの」


「私からジャックを盗った!」


「いつからオレは、お前さんのものになったの?」


「うっ……!?」


「連れていけ」


 軍に連れていかれるアリサ。嗚咽混じりに叫びながら、ジャックへの想いを訴えている。そんな声も小さくなっていく。その場に残るはジャックとスズメのみ。


「弾は貫通している。適切な処置を受ければ問題ない。傷も残らないだろう」


「ごめんっす……先輩」


「喋ると傷口に響くの。病院まで静かにしているの」


 スズメを車に乗せて走り出す。そんな時、ジャックのトランシーバーに連絡が入った。


【軍人に変装した男が逃走中! 銃を所持している模様!】

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