図書館では静かに
昼食と散髪を王城で済ませたミント。来た時とは打って変わり、帰りは丁重に扱われ、騎士団長のエスコートで門を出た。
「大丈夫ですか?」
「何がだ? アタシは大丈夫だ。女の一人歩きは危険だってんのなら余計なお世話だ」
「私を傘だけで負かしただけはありますね。私もまだまだということですね」
「たりめえだ、こんな傘女に負けるようじゃ。王様を守るんだ、もっと強くなんねえとね」
「精進します」
「頑張れよ。次からは顔パスで頼むね」
「伝えておきます」
※ ※ ※
大欠伸をしながら車を降りる。車は急いで走り去っていく。そんな車を見送ると、賑やかな街並みに入る。
「人の往来がスゲエ! あっちもこっちも」
取り敢えず座りたかったミントは、大きな建物の中に入っていく。無数の本が並んでおり圧巻だ。
「アンオール国立図書館、か。本を読むと眠くなるんだけど仕方ねえ。静かな場所で座りたい」
椅子に座るだけで眠気が襲ってくる。紙を捲る音や本の匂いが眠気を加速させる。テーブルに腕枕で突っ伏すだけで意識が遠くなっていく。
(……ああ……もう駄目だ)
「訳分からん! なんでそういう展開になるんだよ!」
(あぁあ? 誰だよ、うっせー!)
「どうして海を泳いでいたら宇宙に行くんだ!?」
(静かに本を読めねえなら出てけ!)
「シャリアの本は難解だああ!」
「テメエうっせーんだよ!! 静かに読めねえのかよ!! 一回絞めなきゃ分からねえか!!」
堪らず立ち上がり声を荒げるミント。眉間にシワを寄せていたが、相手の顔を確認した瞬間、その目を丸くした。驚きの表情へと変わっていく。
相手も驚いているようだ。怒鳴られてというよりも、この場所で会ったことの方に。
「まさか……マル?」
「俺をマルって呼ぶ人間は一人だけだ。この世界で会うだなんて思ってもみなかった。ミントだろう?」
互いに確認しあう二人。マルと呼ばれた少年と一緒にいた少女はミントに謝罪すると、少年に問い掛けた。
「彼女は?」
「俺の幼馴染の神城ミントだよ。マルってのは、俺の名前を縮めたニックネームだ」
「まつりばやし……はる……あ!」
「何だ何だ? 一丁前にコレか?」
ミントがクスクスと小指を立てて見せる。直ぐに否定するハルだったが、ミントはクスクス笑っている。
「ミント、どうしてこの世界に?」
「話すなら外で。図書館では静かにするのがルール」
「だよな。悪いがルキ、一緒に来てくれないか」
「構わないわよ」
(神城ミント。ハルの幼馴染で女の子。ショートカットの女の子)
ルキは一人焦っていた。手には汗が出ていた。




