子供は風の子
持参した折り紙を一枚一枚折っているラルロア。既にテーブルの上には、折り鶴と奴が置かれていた。
「ボクもハルのように折りたい。それで……」
「何を黙々と折っているんよ?」
「……はひっ!? ナ、ナナ」
「鍵が開いたままになっていたんよ。あまりの集中に声を掛けるのを躊躇ったんよ。黙ったままじゃ悪いかと思って、声を掛けたら驚かせてしまったようだ」
「ノックはしたの?」
「したんよ。返事がなかったんよ」
「ボクも悪かったけど、勝手に扉を開けたナナも悪いよ。相手がボクだからよかったけど、知らない人だったら大変だ」
「ラルロアがお説教なんて生意気なんよ」
ぷうーっと頬を膨らませるナナ。壁に寄り掛かって不機嫌モードである。ラルロアが目を合わせようとすれば逸らす程だ。
(うわああ!! 怒らせちゃった。どうしよう!?)
あたふたしていると折り紙に目が行く。咄嗟に折ると、ナナに謝りながら渡した。
「何これ?」
「飛行機だよ。こうやって飛ばせるんだ」
軽く飛ばすと、ふわふわと着地した。この飛行機の折り方もハルに教わったものだ。
「部屋で飛ばすのは地味なんよ。外で飛ばせないの?」
「ボク達だけで大丈夫かな?」
「敷地内なら問題ないんよ。大人が守ってくれるから」
グイグイ腕を引っ張っていくナナ。流れに従うしかないラルロアだった。
※ ※ ※
「「騎士の名にかけて!」」
「今度は声出しかよ。あんなに張り上げちゃって」
「声出しも訓練のうちなんだわ」
「「全ては王のため!」」
「自分を犠牲にしてでもってか。騎士道は茨だなぁ」
「呑気ね。彼等は必死なのよ?」
「分かってるよ。誰でも簡単に務まるもんじゃないってことくらいな」
芝生に座るハルの頭に何かが当たる。振り向くと紙飛行機が落ちていた。すると、二人の方に走ってくる子供の姿。
「ごめん! ハル!」
「ラルとナナか! 芝生デートでもしてんのか?」
「ででで!?」
顔を赤らめるラルロアに対し、『暇潰し』と返すナナ。二人の温度差に苦笑するハルだが、手を繋いでリードしているのがナナだと気付いて吹き出してしまう。
「何がおかしいんよ? アタシに何か付いてる」
「間違っちゃないな! 付いてる付いてる!」
付いてると言われて慌てるナナ。ラルロアから手を離して確認する。『取れた取れた』と言うハルの言葉に落ち着きを取り戻し、ラルロアと手を繋ぎ直した。
「しかしラル、よく折れたなぁ!」
「ハルの教え方が上手だからだよ」
「お世辞も合格だ!」
ワシャワシャと、ラルロアの頭を撫でるハル。ラルロアもどこか嬉しそうだ。
「褒められて伸びるなんて子供なんよ」
ハルとラルロアの光景を見てボソッと呟くナナ。頬を膨らませて髪を弄る。すると、ツインテールがほどけていることに気が付いた。
「ほどけてしまったん」
「それはそれは災難だわね。女の子なら、何でも可愛くしたいものよね」
手慣れた様子でナナの髪型を整える。ツインテールを取り戻したナナから、満面の笑みが溢れた。
「ありがとうなんよ」
「礼には及ばないわ。ラル君と仲良くしてね」
「うん!」
元気よく駆けていくラルロアとナナ。無邪気に遊ぶ姿は歳相応である。
「やっぱ子供は風の子だな」
「元気に笑顔でいれば充分だわ」




