幼馴染が百合だったのだが、どうしよう2
一応続きですが、単体で読んでも大丈夫です
バケツの水も一日で干上がりそうな強烈な日差しが降り注ぎ、セミがけたたましく鳴いている夏の日の午後。暖められたコンクリートの熱で空気が揺らいで見える道路を童顔巨乳少女が歩いていた。
少女の名は花屋敷桃香。アイス食べたいとこぼす勉強中の妹に感化されて自分も甘いものが欲しくなり、冷たいアイスクリームを求めてコンビニへ向けて足を動かしている途中だ。
「暑いよ~」
その額には玉のような汗が浮かんでいる。胸の膨らみに引き伸ばされてもはや何の絵柄かわからない可哀想なピチピチのTシャツは汗で濡れて、今にも下着が透けて見えそう。道を歩く男どもと一部の女性からの視線が釘付けである。
注目されていることなどまるで気付いていない桃香はちょっと後悔していた。
「なんで外に出ちゃったんだろう。家で涼しくしてた方がいいじゃん……」
とは言え、コンビニまであと少し。今更引き返す気もない。
しょうがなくとぼとぼ歩いていると、前の方からハーフアップにした長い黒髪を左右に揺らしながら少女がやってくる。真っ黒な日傘を掲げた水色ワンピースの清楚なお嬢様風美少女である。
「あっ、さっちゃん……」
さっちゃんと呼ばれた少女は五條早貴。桃香の幼馴染だ。
先日、早貴の百合であるとの告白から流れでキスまでしてしまったが、その後酸欠で
倒れて寝てしまったため、桃香は一人で自分の家に帰ってしまったのだった。
昨日のことを思い出すと頬が赤くなる。普段より熱く感じるのは日差しのせいか、それとも……。
「さ、さっちゃん、おはよー」
「もうこんにちはだよ、桃ちゃん?」
「アハハー、ソウダネー」
既に昼すぎなのに朝の挨拶をかましてしまう。
「汗すごいけど大丈夫?」
「暑い中ずっと歩いてきたからね。わたしも日傘持ってくればよかったよ」
一方の早貴は昨日のことなど何も無かったかのようにケロリとしている。
倒れたショックで忘れてしまったのだろうか?
「私、ハンカチ持ってるよ。拭いてあげる」
「い、いや、いいって自分で拭けるから」
自然と縮まる二人の距離。
「そういえば昨日はベッドの上でのキス、激しかったね……私、夜も眠れず興奮しちゃった……ぽっ」
「あーあー! なんでここで言うかなぁぁあああ!?」
美少女が紡ぐ「ベッド」「キス」「興奮」という単語についつい振り返る通行人たち。今日は休日なので、そこそこ通行量が多いのだ。
激しくしたのはあんただろ! とか、眠れなかったのはキスした後ぐっすり寝たからだろ! とかツッコミを入れたい桃香であったが、道行く人の視線が痛いので、早貴を連れてコンビニへ向かう。
「ふぃ~、生き返る~」
自動ドアが開くと同時に独特な電子音といらっしゃいませの声に出迎えられた。若干過剰にも思える冷気が、体温よりも高い気温の今日のような真夏日にはありがたい。色々な意味で火照った身体を冷やしてくれる。
「アイスはどっこかな~っと」
透明なケースを覗くと色んな種類のアイスがずらりと並んでいた。バーアイスにカップアイス、氷菓子もある。茶色がかったミディアムの髪の毛をかき上げて中腰でケースの中を検分。
「桃ちゃんはアイス買いに来たの?」
「うん。急に食べたくなっちゃってね」
「私も買おうかな。ちょっと汗かいちゃった」
確かに早貴の首筋にも汗が少し浮かんでいる。涼しげな顔をしているが日傘だけじゃ夏の暑さは防げなかったのだろう。
そうと決まれば二人して食べたいアイスを選ぶ。選び終わるとコンビニを出て、公園へと足を向けた。
本当は涼しい店内のイートインコーナーで食べたかったのだが、また早貴が変なことを口走って、その痴態を店員や客に見られるのが嫌だったからだ。
公園に着くと適当なベンチを見つけて腰を下ろす。そのベンチは高い広葉樹が近くに生えていて木陰になっており、目の前にある噴水が見た目涼しげで、風が吹くと実際に涼しい。
「ん~、おいしい。暑い中公園で食べるアイスもなかなか乙なものですなぁ」
買ってきたアイスをペロペロ舐める。桃香が選んだのはアイスクリーム・コーンに入ったチョコチップミントソフトクリーム。ミントの爽やかで、すーっとする味とチョコチップの食感がお気に入りなのだ。
「桃ちゃん、こっちの味見してみる?」
早貴が選んだのはバニラのモナカ。中に板チョコが入っているタイプのやつだ。
パキっとモナカの端を折り取って「やったー」と喜ぶ桃香に渡す。
「はむっ……バニラとチョコの組み合わせ……王道にして至高だね!」
一口齧ると口の中にふわっと香る皮の香ばしさ、そして冷たいバニラアイスが溶けて舌の上に甘さが広がる。その後にくる歯応えのある板チョコが素晴らしい。食感と苦味、加えてさらなる甘さがバニラアイスを引き立てる。
美味しそうにモナカを頬張る桃香を見ることができて早貴の方もご満悦だ。
渡されたモナカをあっという間に平らげた桃香は自分の持っているアイスクリームを差し出す。
「わたしのも味見していいよ?」
「いい……の?」
「うん。さっちゃんもさっきくれたじゃない。だからお返し」
おずおずとアイスクリームを受け取った早貴はチロチロと味わうようように舐める。その顔は上気していて……。
「おいしい……」
「でしょー。わたしのオススメ」
はちきれそうな胸を得意気に張っている。別に桃香が偉いわけではないのだが。
「……おいしいよ、桃ちゃんとの間接キッス!」
「なっ……回収です! このアイスは回収します!」
「ええ~」
またピンク色なことを言う早貴からアイスを奪い返す。名残惜しそうにアイスを見ているが、もう渡してやらない。
手元に戻ってきたアイスを再び食べ始めるが、さっき早貴が言ったことを意識してしまって照れてしまい、結局食べ終わるまでずっと黙っていた桃香であった。