プロローグ
みんなはよくあるファンタジーというものに憧れたことはないだろうか。
少なくとも俺はある。
中世ヨーロッパのような世界を剣や魔法を駆使し、ゴブリンやドラゴン、そういった化け物たちと戦う。
そんな冒険を夢見たことはだれだって一度はあるはずだ。
だがソレはあくまで、中世のような世界だ。
断じて今、目の前で繰り広げられているようなものじゃない。
前を見るとウホウホ言ってる腰に何か動物の皮出できた腰ミノのようなものを巻きつけた人たちがこちらを警戒するように眺めている。
そして周りには篝火が焚かれており、その人だかりの前には動物の頭の骨だろうか?そういったものと一緒に何かしらの果実が籠に入れられ、備えられており何やら祭壇を思わせる。
ふと足元を見てみると何やら幾何学的な模様が書かれておりそういったシャーマニズムとでも言うような儀式が今まさに行われているようだった。
……なんじゃこりゃ。
俺はさっきまで学校で授業を受けている途中だった。
教師の唱える催眠魔法と闘いながら黒板に書かれたこれまた呪文のような文章を書き写す。
そんな作業に明け暮れながら、なんかいきなり授業中にテロリストでも入ってこないかな―とよくある妄想を頭のなかで繰り広げていた。
そしたらいきなりこれだよ。
目の前が光ったりだとか、そんな予兆もなく、ただ本当に気がついたら、いや瞬きした瞬間にだろうか、目の前の景色が変わっていた。
一体何が起きたのだろうか……
まあ多分なんか儀式やってて召喚されたとかそんなんだろう。
いやちょっと待てなんか今の自分冷静すぎないか?
あれか、理解の範疇を超えたことが起こると逆に冷静になるとか言うアレか?
そうか、きっとそんな感じのやつが起きたから冷静に周りを分析できているんだな。
人間ってよく出来てるな。
こんな不測の事態が起こってもこんなふうに周りを見る余裕があるなんて、すごい。
って、そんな小学生みたいな感想を考えている場合か?
今の俺はどうなるんだ?こんな原始人?みたいな人だかりの前にいきなり現れてどうなっちゃうんだ?
まさかエロ同人みたいなことが……って誰得だよ。
こんな普通の高校生捕まえて原始人よろしく石器振り回してウホウホ言ってるやつに輪姦させて一体何がしたいんだ。
いや大事なのはそこじゃないし、そうなるとは限らない。
そうして周りを見るとこちらに気がついているものは一人もいない。
どうやらあまりにも自然に現れたから気が付かないんだろう。
なんかV系のバンドのバンギャみたいに頭振り回してトリップしてるし、多分そんなんだ。
よし、逃げよう。
この間約1秒。
いや実際は多分30秒位経ってる、ってそんな余計なこと考えてる場合じゃない。
さっさとここから離れ……
そうして目線は彼らから離さず後ずさりするように離れようとするとその中のひとりと目があった。
……見つかっちゃったよ\(^o^)/
そして一人がこちらに気づくと連鎖するようにその周りにいる者達もこちらに目を向ける。
幾つもの視線。ソレがこちらに向いていた。
何?なんなの?なにか言ってよ。こんなに目線を向けられたことなんて小学生の時に読書感想文かなんかで賞をとってそれを教壇で読ませられたことくらいしかないよ。
そんな俺にこの視線のプレッシャーは耐えられるわけ無いだろ!
そうしてまるで今まさに刑が執行される死刑囚のような気分でその様子を眺めていると原始人達は一斉に雄叫びを上げた。
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
声に圧倒され俺はその場に尻餅をつく。
なんだかその原始人達は『ジーア!ジーア!』とか訳の分からない単語を口々に叫んでいる。
そうしてひとしきり彼らが叫び終えるとその人だかりを割るように一人の男が現れた。
「!”$%&&’’&$”|¥¥¥ー=*+」
その男は何やら訳の分からないことを喋り出した。
その声は力強く透き通っていて自身に満ち溢れている。
どうやらこの原始人たちのリーダーのような存在らしい。
頭には草木で編まれた冠のようなものをしており、顔には何かの塗料で文様が彩られている。
いやもしかしたら呪術師的な人なのかもしれない。
何かのゲームとかで似たような格好の姿をしているのを見たことがある。
いやそんなことはどうでもいいけど何かブツブツと喋っているが訳がわからん。
あれか、「儀式をよくも邪魔してくれたな、貴様を焼き殺してくれよう」とか「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ」的なことを言っているのか?
……多分違うと信じたい。あんまり怒ってる風じゃないし違うといいな。
生け贄とかにするみたいなことだったら俺泣いちゃうよ?
くっそ、よくある召喚モノなら翻訳こ○にゃくは標準装備されてるはずだろ!
念話的なこととかできねえのかよ!
と、そんなことを頭に思い浮かべていると彼らは驚きの表情をこちらに浮かべた。
そして固まった彼らはすぐさま復帰しその場に平伏するように跪く。
え?何?俺なんかした?
そんな状況に置いて行かれる俺を一人取り残して時間だけが過ぎていった。
そしてこれが俺の長い原始人生活の始まりになるとはその時、誰も思わなかった。
世界観とか技術関係の整合性を取るのが面倒だったので原始時代からやればそんなの無視できるんじゃね?とか思って書いてみた。後悔しかない。
頑張ってある程度まで続けたいと思いますのでよろしくお願いします。