時計の針は「3」をさしている
イケメンの、新任教師がいると言う話は聞いていた。
「時任陽太郎と言います。担当教科は生物です。みなさん、これからよろしくお願いします。」
教室に爽やかなイケメンが入ってきた時、私は心の中で喝采をあげた。
教師がイケメンであるかどうかは、今後の学園生活を決める上で重要なファクターのひとつである。
何故ならば。
その単位を望むのであれば、その時間中ずっと、または時々にでも視界に入れなければならないからである。
そして、それは地味子で真面目な私にとっては確定事項にも近いーーーー。
しかも、苦手な理系科目。
これは授業を真面目に聞いた上で予習復習をしっかりやらないと、単位を落としてしまう。
すでに前科持ちである私は、先生の力をお借りしなければ、と思っていたのだ。
(イケメン!!ありがとうございます!神様!)
モチベーションは、右肩あがり。
しかもテレビの中の住人たちとも勝負できるほどのイケメン。
オーラがある。イケメンのオーラがっ。
キラキラしてる。
しかも、声も聴き取りやすい。
授業も、分かりやすい・・・・・
これは・・・・・・先生という「生物」を鑑賞するための授業!!
はっ、もちろん。勉強しなきゃ。
でも、勉強とイケメン鑑賞ならイケメンを・・・取るよね。
周りの女子の目も先生に釘付けだ。
みんな、気持ち分かるよ!!
でも、でも。単位取らなきゃ。
視線を黒板に戻す。
目があった。
「なっ」
あいつ、こっちを見て微笑んだぞ。
何だと!?やるのか!
勉強!と張り切った心がもうイケメン鑑賞へと傾く。
私の心は、弱い・・・・・
覚悟を決め、顔を上げた時、男は教科書に視線を落としていた。
・・・・。
・・・・・・眠い、かも。
あれ?
まぶたが、重い・・・・。
「香月さん?香月、夕凪さん?」
トントン、と肩を叩かれていた。
顔を上げると、イケメンの顔面アップ。
「へっ!」
は!?
よだれが。
「居眠りですか。・・・・・放課後、職員室まで来て下さいね」
(え、ええ!?嘘っ、一度授業で眠っただけで大げさな・・・・)
その後の授業で居眠りが続出した事を、夕凪は知らない。