時計の針は「2」をさしている
「あっ、先生ぇ!」
女子高校生の高い声がファーストフード店に響いた。
ななななな、なんでこんなところに葛城さんが!?
葛城さんは隣のクラス。時任は元教師。そんな事情もあって学校からは遠いファーストフード店を選んだはずなのに!!
私と一緒にいたら問題がある訳で。
ど、どうしよう、何か身を隠すものはっ・・・・・
ない!どうしよう?
「ちょー久しぶりじゃん!え?どうしたの?こんな所で!!」
み、見つかったーー!
いや、大丈夫!時任が除けな事を言わなければ。
「センセー突然辞めちゃうから心配してんだよ〜〜!」
「あれ?今なにしてるの?」
「夕凪さんと、デートしてます」
「ぶほっ!!」
「デート?だんじょのなか?」
「はい、もちろんその意味です」
なななななな!?
今なんて言ったんだ、この馬鹿っ!ついに頭がおかしくなったのか!?
顔がいいだからって言っていい事と悪い事があるんだぞ、何言っても許されると思うなよ!!
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
ほらっ、もう私、三人の顔が見れない。
「質問にお答えしますね、第一に僕はもう先生ではないので、先生という呼び名は、今後は一切やめて下さい。第二に僕が先生を辞めた理由は、僕が夕凪さんを好きになったからです、そして第三に今僕は夕凪さんと恋人関係になるべく、猛アタック中です。」
「「「・・・・・・・・・」」」
この人は何を今おっしゃったのでしょうか?
私には理解できない言葉が。
日本語でお願いします。
「えっ!?マジで!?ちょーうけるんですけど!」
「先生ぇースッゲェ真面目じゃね?」
あはははは、と三人娘は笑い出した。
理解した!?
「すごいな!香月!!」
ばしんばしん、と背中を叩かれる。
スナップが効いていて痛い!
「いやー、地味子の癖にぃ~~~~なかなかやるじゃん香月!この先生をここまで惚れさすなんて!」
「でかした、ぐっじょぶ」
えーーーーーーー!?
その反応は予想外です!
「そうゆう事なら先生!応援するよ!」
「そうそう、地味子の事は気になってたんだ、幸せにしてくれよ!」
「おいしい、おいしい。教師と生徒との禁断のらぶ。」
「先生呼び、止めてください」
えーーーーーー!?そこーーーーーー?
指摘するところ、そっち!?
「え?先生は駄目なの?じゃあなんて呼べばいい?」
「お好きなように」
「じゃあ、陽太郎っち」
「いいですよ」
「じゃあ決まり、陽太郎っち!」
順応早すぎる。
「私注文とってくる、優香、ミサ、なに頼む?」
「あたしチーズバーガーセット!オレンジジュースで!」
「ミサは?」
「いまおなかいっぱい」
ぐーーーー。と彼女のお腹が鳴った。
「えっーーーーと?」
「チーズバーガーハンバーガーテリヤキバーガーハンバーガージュースはコーラでポテト×2」
呪文?
「了解ーじゃあ行ってくる」
「ここ、座ってもいい?」
はっ、いつの間にか隣に!!
はいどうぞ。私は席を移動しなきゃ。
「いい、ニケツしよう?」
ぎゅっ、と懇願される。彼女の持つ不思議な雰囲気が、断る事を許さない。
「えっ、あ、うん・・・・じゃあ、失礼します」
小柄なミサとと椅子を分け合って座る。
「なっーーーー!?」
「ふふん」
「まぁまぁ、陽太郎っち、ミサの事だから」
「でもっ、僕だって」
「悔しがってる姿、ムネアツ」
「あっ、ごめん。ミサさん、苦しかった?」
「僕の声は聞こえてないんですね」
「ううん、もっと近くに座って。」
「えっ、でも・・・・」
「おー、やってますなー。」
「陽太郎っちのその顔新鮮」
「恋愛偏差値は中学生と見た」
恋愛偏差値、中学生。
それは、当たっているかもしれない。
思い出したのは、陽太郎と初めてあった日の事。