反時計回りに「9」をさしている
お姉ちゃんは、どうして裏門から帰ったのか。
ーーーーーお姉ちゃんは、性格的に正門から帰るタイプだ。
それに。
学校から家までの道のりを考えれて、裏門から出たら遠回りになるーーーーそこまで考えて。
もしかして。
放課後デート、というやつではないのか。
ーーーーーーデートをするなら住宅街に向かう正門ではなく、裏門から出て駅前へ抜けたほうがいい。
「・・・・・」
どうして気付かなかったのか。
今更ながら自分の間抜けさに気づく。
バカ。自分のバカ。
「じーーーーーーーーー」
ミサ先輩の顔ドアップが目の前にあった。
「えっ」
パシャ!
「美少女の憂い顏、頂きましたア!」
うまうま、と笑うミサ先輩の頭はたぶん一生理解出来ないんだろうな、と思った。
そして、近い!近いです!
スマホとミサセンパイがずずいと迫ってくる。
「ヤメナサイ、ミサ。」
「永久保存☆」
「はぁ、ごめんね。星乃ちゃん」
おでこに手を当て、首を振る優香先輩。
その苦労が偲ばれる。
ミサ先輩は、「美少女美少年」を見ると盗撮しないと気が済まないタチらしい。
曰く「美少女美少年は日々の生きる種これが無くては〜長いので省略」らしい。
ちなみに、ミサ先輩の「美少女美少年」の基準はオカシイ。
「今世紀最大の美青年」と言われ見せられた写真が、蜻蛉の顔?目?のドアップだった事は、軽いトラウマになっている。
そして、私の写真が蜻蛉と同列になっているミサセンパイのスマホアルバム。
どう思いますか。私はとても複雑な心境です。
「むぅ、私は悪者ですか」
「ミサ悪いでしょ」
「むしろ、悪くないと思ってたの?」
「・・・・その写真、消してくださいね」
追い討ちをかける。
「ハイ、消去ー」
「ぬぅっ、ご無体なっ!」
しゅばっ、しゅばっ。
忍者の様にくねくねと動き、絵里奈先輩をさけるミサ先輩。
頑張れー、絵里奈先輩。
「助けてーヘルプミー、ほしほし!」
冗談でしょう。
ひとりで頑張って下さい。
あともう少しかかりそうなら加勢します、絵里奈先輩。
ミサ先輩に、味方はいません。
「ヘルミー、優香!」
「早く消しなさい。隠し撮りだなんて、あまりいい気分にはならないでしょ」
「私はっ、ほしほしにっ、撮られるならぁー、大っ、歓迎っ!」
「早く消しなさい」
四面楚歌である事を感じ取ったミサセンパイ。
「・・・・取引しよう!」
ミサ先輩が申し出た事は「私の写真と引き換えになぎなぎの彼氏の事を教える
」というものだった。
どうしてミサ先輩は、私の目的を知っているのとか、そんなことは今考えない。
ミサ先輩だし。ミサ先輩だし、電波だし。
「ミィイイサ?アンタは、そんなこと言える立場かっ!はい、消しなさい!」
「むぅっ、私はほしほしに聞いてるのーいいでしょ?」
「はい、いいです」
「「星乃ちゃん!?」」
勝利、と。
ミサ先輩は、無言でスマホを掲げた。