時計の針は「11」をさしている
人生、何が起こるか分からないって本当だと思う。
突然、告白されたり。
掃除中に、自分から告白・・・・みたいな事をしてしまったり。
・・・・うう。陽太郎さんの中ではもう両思いみたいな扱いになってる。
間違ってない、間違ってないけど。
あながち本当の事なので、否定できない。
でも、心の準備ぐらい。
全部不意打ちで、全部、突然の事だ。
そして、突然。
ーーーーー頭が痛い。
見慣れた学校の廊下。
ぐらぐらと揺れる視界、何かが崩れる音、何かが壊れる音。
「おいっ、大丈夫か!?」
「なぎなぎっ!?」
意識が、私が、崩れていく。
ーーーーーーーーそして気がついたら、ベットの上だった。
ここ、どこ?
視線だけを動かして、ここがどこか理解した。
清潔な白いベットに、来客用のパイプ椅子。
そして、薬品と、独特の匂いと雰囲気。
ああ、病院だった。
もう長い間、こうしている気がする。
あの日。
気がついたら、病院のベッドに寝ていて、病室の窓からは月が見えた。
パイプ椅子に制服姿の妹が座っている。
「お姉ちゃん、学校で倒れたんだよ?」
「・・・・・・」
気が付いたら、頭に包帯が巻かれていた。
おかしいな、頭なんて打った覚えがないのに。
「気になる?」
「・・・・・・頭、うったの?」
「うん、こけた時に打ったみたい」
「血が出た?」
だから、包帯してるの?
「それはもう、あたり一面血の海だったよ」
「それは・・・掃除の子に迷惑をかけましたなー」
「そうだよ、みんなびっくりしてたよ、突然バターン、って倒れたんだから」
血の海は冗談にしても、迷惑をかけたらしい。
倒れた時のーーーー状況は少し覚えてる。
突然でみんなびっくりしただろうな、明日、謝らなきゃ・・・痛っ!
急に腕に何か引っ掛けたような感覚、視界に入ったのは。
「・・・・で、これは何?」
私の腕からは何本もチューブが伸びていて、透明な袋三つ。
・・・・点滴だ。
「お姉ちゃん、過労だって」
「過労?」
「ちょっと疲れてるんだって。しばらく入院ね」
「にゅういん?」
「ほら、頭の事だから、大事を取ってってさ」
そそくさと、妹はバックを持ち上げる。
そう言えば、バトミントン部に入るって言ってたっけ。
「ふーん、何日?」
「分かんない、とりあえず二、三日?」
とりあえず、二、三日って・・・・。
「学校、あるんだけど・・・」
それに、陽太郎も待ってるだろうし・・・。
毎日どこからともなく現れて、私を待っている顔が浮かぶ。
慌てて、それを打ち消す。別に・・・・・気になってない。
「お休みしていいんだって」
いや、休みだろうけど・・・・。
「過労って、そんなに働いてるつもりはないんだけどなぁ」
一応、高校生だし、アルバイトもしているけど、差し当たっての出勤は三日後。
週に二、三回程度のシフトしか入れてない。
「バイト、かぁ。」
妹は何かを考え込むように、俯いた。
「私が代わりにできるかな?」
「いや、星乃。中学生でしょ、無理」
「そんなことない」
何その謎のポーズ。
「・・・バイトもしばらくお休みして下さいって」
「ええっ!?」
困る。バイト先の店長怖いんだよ・・・・
「大丈夫、話をつける」
星乃、いつの間にそんなたくましくなったの?