時計の針は「1」をさしている
「お母さんとお父さんが、夕凪が好きだからゆうなぎ。子供につける名前でそれって安易過ぎじゃない?」
「ゆうなぎ。僕は好きだけどなぁ」
「うっ」
飲んでいた炭酸が喉に詰まった。
だーかーら。どうしてこうゆうこと、言えちゃうかなぁ・・
「どうしたの?大丈夫?」と気にかけてくる。
さり気ないフォロー。年上である彼はこんな所はすごくスマートだ。
「だ、大丈夫だからっ!」
「ふふ、可愛いなぁ」
「ーーーーーっい」
もっと顔が赤くなった。自分でもそれが分かる。
ガタガタガタッと、椅子を揺らして立ち上がる。
「かっ、可愛くないっ!可愛くないんだからっ、そうゆうこと言わないでっ!!」
自分でも何言ってるのか分かっていないが、本心だ。
いま現在の心からの声だ。
「可愛い、可愛い」
どうしよう、今一発叩き込みたくなった。
でも何処を殴る?
ーーーー誰がどう見たって10人中10人がイケメンと口を揃える顔面?
それとも、軽くシックスパックが出来ているお腹?
筋肉質な割に、すらりとしている手足?
「あ、えっーと?夕凪?・・・そんなにジッと見つめられると恥ずかしいんだけど・・・・」
そう言って、陽太郎は赤くなると目を逸らした。
「っ、馬鹿っ!!」
「ええっ!?」
何その不意に照れるヤツ。
馬鹿っ、本当に馬鹿っ。
うう、ムカついたから何処を殴ろうか考えていた、だなんて言えない。
・・・・罪悪感で死にそう。
「ご、ごめんね?からかい過ぎた」
「・・・・こちらこそごめんなさい」
「可愛い」
「・・・・・・うっ」
もうダメだ、こいつ・・・・・