心
部屋の隅にそれは落ちていた。
私はそっとそれに近づいた。
それは何の変哲もないものだったが、どこか懐かしさを感じた。
それを見ていると、体が熱くなり、胸の辺りが締め付けられるような感覚がした。
私はそれに手を伸ばし、躊躇って戻す。
そしてまた手を伸ばし、戻す。
もう何回繰り返しただろう。
私はそれが何なのか知っている。
しかし口に出すことができない。
口が言うことを聞いてくれない。
私は思い切ってそれを窓から捨てようとした。
しかしその瞬間、それから温かいものが私の中に流れ込んできた。
そして私は逃げられなくなった。
それに気が付くと私は笑っていた。
私はそれを部屋の真ん中に飾ると、扉を開けて駆けていった。
それは小さな恋の話