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プロローグ 終わりと始まり

初回必読。

本編。BloodMoonは、予告無しに残虐行為、性的表現、流血表現やNL表現の他に、軽いBLやGL表現もございます。

苦手な方はご注意ください。

また、荒らしや中傷的な言葉、晒し、そのほかの迷惑行為などはおやめ下さい。


上記を確認の上、大丈夫な方はご覧下さい。


本編は、個人サイトにて先行公開(大体月一更新)の後、こちらの外部サイト様で不定期に更新します。


点検はしていますが地味に誤字脱字や、スマホで編集している為、変な風に変換され文章がおかしくなっている所も希にあったりするので

お気付きの方はTwitterやメールにてお知らせくだされば幸いです。


※この作品はフィクションです。

実際の人物・団体・事件には一切関係ありません。


 ……暗い。

 辺りは一面漆黒の闇に包まれたその空間。

 少年はただ一人、漂泊していた。


 あれ、何をしてたんだっけ?


 思い出そうとしても、思い出せない。

 何故だが、とても眠い。

 ふよふよと漂う感覚とあまりに強い睡魔に抗えず、閉じていた瞼をもう開くこともないと思っていたその時ーー


「お願い……もうっ……もうやめてーーーー!!」


 少女の叫び声でハッと目が覚める。

 視界に映る景色は、血のように真っ赤な夕空。

 どうやら少年は、気を失っていたようだ。

 ドッドッドと鼓動が鬱陶しいほど煩く、同時に身体が痛む。

 動こうとする度に、痛みで声が漏れる。

 なんとか起き上がろうと、手をついた時、違和感を覚えた。

 どう考えても手のひらに感じるのは、地面ではない。

背中に感じるのもそうだ。

 何方かと言えば、何か砕けているような……そんな感じだ。

 手を動かすとジャリジャリと音が鳴る。

 少年はちらりと目線を動かし、手を置いた場所を見る。

 するとそこには、レンガと思われる瓦礫。

 そして少年が今いる場所は、瓦礫の中であった。


 ……なんでこんな場所にいるんだ?


 そう、少年の中で疑問が浮かぶ。

 だが少年は今の状況よりも、まずは気を失う前の事を思い出そうとした。

 そうすればなんでこんな場所にいるのか、そしてなんでこのような場所で倒れていたというのに、酷い怪我をしていないかが分かるかも知れないからだ。

 するとゆっくりと記憶が蘇ってくる。

 あの時……確か仲間と一緒に建物の中にいた。

いつも通りの日常で、たわいもない話をしていた。

 そんな時地鳴りが起きて、かなりの揺れを感じて……

 少年は思い出そうと唸っていたが、記憶は揺れを感じた後から完全に途切れていた。


「……とにかく、皆を探しに行こう」


 自分に言い聞かせるように痛む体で起き上がり、瓦礫からゆっくりと降り始めた。

 降りると、あちらこちらと瓦礫の山が一面に広がっている光景が目に飛び込んでくる。

 慌てて表通りに出ると、辺りには血が花弁のように飛び散り、ある場所では炎の柱が存在していた。

 このような現状を見たのが初めての少年はおもわず絶句し、顔を歪ませ痛む身体に鞭を打つように走り出す。


 早く皆を見つけないと。

 早く無事を確認しないと。

 ーーまた、あの時の様に失いたくない。


 少年の脳裏に浮かぶのは、自分の名前を呼ぶ黒髪の少女の姿。

 守れなかった、助けられなかった。

 大好きだった人。

 だからどうか……無事でいてほしい、皆を失いたくない。

 そう祈りながら街の中を駆けていく。

 きっと無事だ。

 心の中で何度も何度も言い聞かせる。

 もし会えたなら、どんな言葉を交わそうか。

 不安を掻き消すように、未来の事を考える。


 皆に会えたなら、また一緒に……


 そこまで考えてると、突如足を止めた。

 びちゃっと、何か液体を踏んだ音。

 そして目の前には、一面に真っ赤な花を咲かせている、血溜まり。

 その大きな血溜まりの中に、緋色の髪の少年が倒れていた。

 うっすらと開かれた空色の瞳には光がなく、弱々しく開かれた口からは血が滴り落ちる。

 血はまだ新しく、未だに胸の傷口から血が溢れ出ていく。


「ーーっ!!!」


 思わず口を抑え、むせ返る。

 鼻腔に刺激を与える血なまぐさい臭い。

炎のせいでこの街の気温が上がっているせいか、喉に苦いものがせり上がってくる。

 つい、目を逸らすと


「ひっ!!」


 その先には青髪の青年と、紫髪の青年が横たわっていた。

 よく見ると、彼方此方と自分の見知った者が倒れ込んでいた。

 この赤黒い光景が、内蔵を抉られる様で悪寒が走る。

 そして、瞳からは生暖かい液体が流れ出た。


「……んで」


 絞り出す様な声。

そして、グッと歯を食いしばった。


「なんでっ! なんでだよっ!!」


 少年の精神に異常をきたすのには、充分の出来事だ。

 怒りなのか、悲しみなのか、恐怖なのか分からないが手や足が身体が震える。

 ぼろぼろと涙を流し、嗚咽を漏らす。

どんなに泣き喚いても、この現状は変わりもしないというのに。

 それでも、受け入れられなかった。

 今の現状が、どうしてもあの子と重ねてしまい、胸が痛む思いだ。

 もし、自分がもっと早く目を覚ましていれば助けられたかもしれない。

そんな後悔を、心の奥底で鍵をかけた。

 辺り一面、血の海化とした場所で叫び、泣き崩れていると……。


「ごめん。皆を……助けられなかった」


 少年はすぐ振り返る。

 振り返った先には、酷い怪我している黒髪の少年がいた。

 服が赤黒く染まっており、腕や頬に幾度も切り傷が存在していた。


「一体何があったんだ! 俺は記憶がなくて、今の状況が理解出来ていないんだ!!」


 その黒髪の少年に掴みかかり、一体何があったのか問う。

 黒髪の少年は目を伏せ、ぐっと歯を食いしばると、意を決したかのように口を開く。

 すると返って来た言葉は、信じられない事実だった。


「暁の名を持つ者の封印が解けたんだ。そしてその者がこの場所に来て……この惨状になっているんだよ……」


 その真実を聞き、少年は驚きの表情を浮かべた。


「封印が解けたっ!?」


 暁の名を持つ者……。

実名は分からないが、通り名で暁……そう呼ばれていた。

 その者は千年程前の人物で、赤紫の羽根を持ちこの世を滅ぼそうとした者らしい。

 ……だが暁は、とある場所にて封印されたと聞いていた。

 なのに何故、封印が解けたんだ?

 色々な疑問が浮かぶ中、黒髪の少年がどこかに行こうとしたのを慌てて止める。


「どこに行こうとしてるんだ!! そんな酷い怪我では歩くので精一杯だろう!!」

「分かってる!! ……も……でもっ!! ×××を助けに行かないと!!

今、暁の側にいるんだ!!」

「は!?」


 思考が停止する。

 そして、また身体が震えだす。


「それにあいつは“鍵と器”を探している。

ならっ!」

「……っでも! そんな怪我なら無理だろっ!」


 黒髪の少年を説得しようとする。

 だが、首を横に振るだけで、これではこのまま時が進むだけだ。

 ーーならば


「そんなに言うのであれば……俺が行く。だから戻って来るまで、ここで生きて待っていてほしい」

「えっ!!」

「約束だからなっ!!」


 少年は返答を聞かず、一方的にそう伝え走り出した。

 その後ろ姿は、あの時とは違って見えた。

彼ならば、きっと彼女を助け出すことができるのではないかと。

 けど……


「ありがとう。でも……生きて待っていろと言われたけど……それは、守れない……っよ……」


 黒髪の少年はそう幽かに言葉をもらすと、その場に崩れ落ちた。

 身体から血が流れだし、どんどん意識が薄れていく。

それに加え呼吸もままらなくなり、体の自由も無くなってく。

 この状態では、もう生命を維持し続けることなんて到底無理だ。

あまりに血を流し過ぎた。

 現状からいくら目を逸らそうとしても、このまま命が尽きるのを待つだけだ。


 ……これが……死ぬ……って事なのかな。


 黒髪の少年は、途切れそうな意識の中でそう感じた。

 昔は人の生死なんて、どうでもいいと思っていた。

 ……だけど


 黒髪の少年は殆ど動けなくなった体でぐっと手を伸ばし、緋色の髪の少年の冷たくなった手を握りしめた。


「……ん、……あの約束……守れ、な……かっ…………た……」


 涙で視界が滲み、絞り出すように伝える事が出来なかった言葉を述べた後ーー

 ゆっくりと意識が永遠の暗闇の中に沈んでいった。



「くっそ、なんでこうなったんだっ!」


 少年は暁を捜しているのだが、一向に姿を確認出来ずにいた。

 そんな中、街の様子がだんだんと酷くなっている。

瓦礫に埋もれて死んでいる者もいれば、焼け死んでいる者もいる。

 死臭が凄く蒸せ返るが、足を止める事はなくあの子の元へ向かう。


「酷い状態だが……暁が側にいるという事なのか?」


 そう呟きながら奥へと走って行くと……。


「で……何でっ!! こんな事をするの!!」


 聞きなれた少女の声が聞こえてきた。

 その声の方向に行くと、銀髪の少女と赤紫の羽根を持つ者がいた。

 少年は吃驚した。

 本当に封印が解けて、そこに暁がいたと。

だが暁の姿は霞み、どんな服装かどんな髪型なのか確認する事が到底出来ない。

 だが、早く助けに入らなくては。

 慌てて少女の方へと駆け寄るが。


「来ちゃだめーー!!」

「っ……!」


 突然の少女のその声に反応し、身体が硬直した。

 その後、急いで後ずさりしようとしたが……。


「がはっ……!!」


 勢いよく鮮血が噴き出す。

 それは心臓のすぐ横に、紅く光る剣が突き刺さったからだ。

 その剣を突き刺したのは、暁だと直感で分かった。

 スゥっと剣が空気中に消え、少女が泣き叫ぶ中、自分でも驚くほど冷静にこのまま死ぬんだなと崩れ落ちたその時。

 誰かが黄金に輝く光と共に現れた。


「……また駄目だったのね」

「……傍観者か」


 傍観者と呼ばれた者はクリーム色の髪をした幼い顔立ちの少女で、腰まである髪はところどころカールしている。

 傍観者は暁を見ると、フフッと笑みを浮かべた。

 一方荒い呼吸の中、少年は消えそうな生命を何とか繋いでいた。


 生き……て、る?

何とかして……起き、上がらないと。


 少年は生きている事に驚きつつ、何とか起き上がろとするが、足腰だけではなく、体全体が力が入らず倒れ込んでいることしか出来ずにいた。

 相変わらず銀髪の少女は泣き崩れ、暁と傍観者と呼ばれた少女は何やら睨み合っている。


「何故、お前が出てくるんだ」

「それは私のセリフよ。何故あなたが、今“この世界に出てくる”のかしら?」


 それに、貴方にしては汚い口の聞き方ねと、傍観者は言う。


 この世界に出てくる。

 なんの事か分からない言葉が幾つも二人の口から出てくる。

 暁と傍観者は言い争っている中、少年は意識を保っていることが段々限界になってきた。

 ドクドクと血が流れ、血の気が引いていく。

 あの子の傍に行きたい。

 いつもの様に声をかけたい。

 けれど、身体がもう動かない。

 息苦しい。


 少年が何とか意識を保ってる時、あの二人は戦闘態勢へと入る。


「貴様は傍観者の立場だろうが!!

そんなお前が出てきていい訳がない!!」


 暁はボウッと手から炎を出し、それを傍観者に投げつける。

が、それを傍観者はひらりと躱す。

 そして黒い傘を出し、開いた。


「はぁ……あなたは私の事をなめているのかしら?

わざわざ第一詠音(初級魔術)を使うなんてバカの事をするのね」


 また、はぁ……と溜め息をつく。


「わざと初級魔術を使ったんだ。

さあどうする? 今ならまだ逃げてもいいが」


 そう暁が述べると、傍観者は鼻で笑った。


「私が逃げるとでも? 笑わせないで。

私はあなたを、足止めするだけなのだから」

「そうか……出来るもんなら、やってみろ。爆炎焼ばくえんしょう!!」


 暁は炎を手に纏わし、そのまま傍観者の方へと突っ込む。

 だが傍観者はまたしても躱し、暁の後ろに回り込む。

 そして傘に風を纏わし、鋭い風のスパイラルエアーを暁の背中に突き立てようとしたが……。

 暁は傘を手で掴み、そして傍観者を瓦礫へと投げる。

 傍観者はきゃあっ! と小さく叫ぶと、そのまま瓦礫の上に崩れ落ちた。

 それを見た暁は


「そんなもんなのか? お前の実力は」


と、傍観者に向かって嘲笑っている。

 そしてついに倒れていた少年は意識を手放した。

 その様子を見た傍観者はニコッと笑った。


「足止め成功」


 暁はハッとし少年が倒れていた所を見たが、既に跡形なく消えていた。

 そして暁がよそ見した隙に、傍観者さえもその姿を消した。

 その事に対し暁は、小さくチッっと舌打ちをした。


「そうか、あいつが……」



「っーーー!!!」


 少年はガバッと起き上がる。

息苦しく、胸が苦しい。

 何とも言えない何かが胸の奥で渦巻く。

手で汗を拭うと、深呼吸をした。

 頭がボーッとする。

何か長い夢を見ていた様な……そんな気がしていた。


「どんな……夢、だったかな」


 思い出そうとしても思い出せない。

 それに加え、何故だが胸が締め付けられる。

何かとても大切なことを忘れているような……。

 そんな時、ある事に気がついた。


「明日テスト……。

やばいっ全然勉強していないっ!!」


 そう、ある事とはテストの事だった。

 外を見るとすっかり夜が深くなっていた。慌てて教科書を開くと……

 ピンポーン

と、インターホンが鳴る。


「……一体誰だ?」


 椅子から立ち上がり、自室の扉へと手をかけ、部屋を後にした。


「親……ということはなさそうだしな。

んー?」


 足元は暗く、ゆっくりと階段を下りながらそう呟いていた。


 ーーこの少年……萩原俊弥は、どこにでもいるごく普通の高校だ。

 普通に学校に通い。

 普通に授業を受け。

 普通に暮らしている。

 ……だが、それもこの時までであったが。


 玄関のドアを恐る恐る開けると、そこにいたのは黒いシルクハットであろう帽子を深々と被っている人物がいた。

 あまりにも不自然な格好で、俊弥は絶句してしまった。

 俊弥はその人物を不審者だとか、新手のセールスか何かと思いながら、恐る恐る話かける。


「あの、どなたでーー」

「ーー行こう。君が来るのを待っている」


 俊弥の言葉が言い終わる前に、目の前の人物は喋った。

 その言葉に不信感を覚えた俊弥は、目の前にいる人物に問いただそうとした時ーー

 視界一面に黄金に輝く光が広がる。

 その光は輝きを増し、俊弥自身を包み込んだ。

 少しして、その光の眩しさが消え、目を開けると……。


「何処だ……ここ」


 現在、俊弥がいる場所は自宅前ではなかった。

 前も後ろも石で出来た建物の中。

 それはまるで、どこかの遺跡の様な場所にいた。

 そして、気がついたかの様に周りを見渡すとあの不審人物もいなかった。


「……一体、どういうことなんだよっ……」


 俊弥が不思議がっている様子を、別の場所で視ているあの傍観者の少女が紅茶を飲み、こう呟いた。


「“また”この世界へようこそ。

ーー萩原俊弥」


 傍観者はうっすらと笑みを浮かべた。

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