表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

弐実  ~胸騒ぎへの観覧車~

結局、まだ導入部分です、すいません。

 囚われって言葉、知ってるかい?

 君は知ってるって唯、肯くだろう肯定するだろう。

 でも君は知らない。

 囚われという言葉の真意を。

 囚われ、それは 見ているよ そういう意味さ。

 だって、もう一人 いるからね。



 もう嫌だって、私はそうやってどうやって?

 糸を断ち切って意図を断ち切って貴方を隔絶したい。

 今にも今すぐにでも。

 でも無理だった、どうしてもこうしても、無理だった。

 切っても切っても糸はほつれ意図は絡まり、脈絡は為り無くなる。

 そんな私の、もう二度と解けることのない想いなんて。

 どうせ貴方は知らないだろうけれど。


 


 窓を開けると、さんさんと太陽が照っていて気持ちの良い風が部屋を通り過ぎていく。

 

 「最悪……」


 一言、誰にも聞こえるように皆目大っぴらにぼやく。

 間も開けず途端窓を閉める。

 クローゼットから、一瞬の逡巡もなく照準を合わせ一式選び着込んでいく。

 朝食は、アセロラヨーグルトに冷凍バナナ 

 冷え冷えの爽快感が鼻まで突きぬけてまたとない清涼感が全体まで染み渡る。

 往々の事がどうでもよくなっていく。

 

 「最高……」


 朝からアベコベな私は、いつだってベコベコ 

 今日だってわざわざむざむざ自分の気に入らないところへ着地しようと

 準備してる、傍からみれば私は結構面白い。

 其れは確固たる自信がある、本当に。 

 このバナナの皮を四等程に切り分ける様に剥いていくところとか。

 最高にインタレスティング!!!!!

 バナナの皮の剥き方と向き合うことは、結構私の人生の趣向でもある。

 持論としては、バナナの皮の剥き方一つとっても人間性が現れる。

 うつつを抜かす、というもの。

 例えば、豪快に一回で向いてしまい結果、果実がよじれ残念な結果に終わる

 人は、どう考えてもせっかちで。

 例えば、その豪快さを学習し次は次はと本来ならば出来ない人間が

 無理をして丁重丁寧に半端に力を入れてしまい皮を剥き

 結果2等分程となり今度は皮が果実を邪魔しまたしても残念な結果となる。

 学習した先の末路が、其れだと私なら生きては往けまい…。

 アセロラヨーグルトを一匙一匙と小匙程しか掬えない

 百円ショップで大きさをうっかりきっかり相違してしまったスプーンで

 口に漂流して運搬していく、流れ出る白黄色雑じりの固形物。

 

 「さわやか」


 一言つぶやき台所へ食べたものの亡骸をほかしていく、ぽいぽい。

 キッ っと下から上へ上げる式の蛇口をその方向へと導き水を出して

 そのままヨーグルトの容器を浸け、さらり と浸けた後、ゴミ置きへと放る。

 それから冷蔵庫を開けて

 【貴方はもう逃れらない この永遠の問題から『問う乳』】

 とおどろおどろしいフォントで商品名が記載された豆乳を無造作に取り出す。

 他の商品の風味とは、どこか異色な物を感じさせてくれそうな此れは。

 おおよそ一年前に近所のスーパーで見つけたもので、推測のみならず

 実際に賞味した感想を述べれば、ユージュアリィと答えておけば差し障りない。

 それほど美味しい訳ではない。

 私はこういうユニークな遊び心に満ちたものが好きだ。

 なんともいえない毎日に潤滑剤を与えてくれる気がする。

 今日も【問う乳】をおもむろに唇へと運ぶ。

 今日も今日とて、それほど美味しい訳じゃない。

 安定した微妙さ? うーん、哲学。

 ピピピー

 自分を蔑にするなといわんばかりにけたたましく冷蔵庫が叫喚するので

 呼応するように思い切り閉めてやる。

 ふと、頭上を見上げて冷蔵庫、上に掛けられてある時計に目をやる。

 時刻は、あまり嬉しくない予定、【彼との遊園地デート】の約束の時間

 ≪12:00≫にあと一時間ほどで差し掛かるだろうというくらいを差している。


 「どうしようかな……」


 人は、どうしようもないのに悩んでしまう時がある。

 今の私もまさしく其れだ。

 多分、今日のデートに行かなければ、彼はきっと怒って

 これからの関係に破綻を示す。

 ……まぁ、私は其れでもいいのだけど。

 なんとなく、そんなことを歌いながら、物見台で

 自身の姿見を確認して気持ちを改める。

 お気に入りの服を着た、いつもよりフレッシュな自分。 

 たまには泥酔、自分に溺れてみよう。

 今日の私は、絶対に外に出ないと勿体ない程の美しく可憐な

 深窓の令嬢に限りなく近い、限りなくブルーに近いお姫様だ。

 何を言っているかわからないくらい褒め殺して、重たい身体を

 玄関に這わせる、そこまで行きたくないのなら行かなきゃいいのに

 って、誰かは思うかもしれない、けどそういうものじゃないのだ。

 私はいつも、予定による不定を着想してから物事に向き合ってしまう。

 例えば、中学校の運動会の日、私は風邪を引いてしまった。

 その日、母は私をいたわって『大丈夫…? 別に休んでもいいのよ』

 という王道を往く母親言葉を幾度も数多も繰り返し唱えてくれた。

 その言葉はとても優しくて、私には勿体ないくらいの声音。 

 けど、その時の私は、母の優しさに気付かないふりをして、首を横に振った。

 だって、その時の私は知っていたから。

 人は否がおうにも属しない者に対しては嫌悪感を示してしまう。

 何時如何なる時も、自分と何かを共有しなかったものは即淘汰されてしまう。

 社会という物は、そういうものだ。

 一切合財のそういう淀んだものを私は予測推測して、

 様々な事に向き合ってしまう。

 勝手に神経をすり減らして、しんどいなと感じてしまう。

 はぁ…。

 ため息を一つ、零して、玄関の靴置場から選んだ靴を両手を使い

 片足に履かせていく。

 細長いブーツが好きな私、覆ってくれると安心感が得られる。

 もう片方の足にも似通った動作で履かせていく。

 吐き終わり、ブーツを通した足で、身体を立たせて玄関を開ける。

 玄関の柱頭部分はいつも触ると仄かな金属の香を手に残すからあまり好きじゃない。

 でも触り捻らなければ当然だけど開かないので、今日も今日とて

 私は右手を左から右へと捻じる。

 すると、重い金属製の扉は開く。

 扉が開くと、窓を開けた時と同じ風景、同じ涼風が体をそうっと横切っていく。

 すぅ~ するり

 爽やかな風、どこまでも涼を感じさせてくれる風

 朝の風は、何かを予感させてくれる。

 太陽が照っている方向へ、私は扉を鍵を駆使して閉めてから

 そうっとおぼろげな足取りで進んだ。


 

 空は、明澄/清澄でどこまでも繋がりを感じさせるくらい

 拡がり続けている蒼。

 蒼には、鳴きつづけている鳥が、壱羽弐羽と自由に滑空している。

 右往左往、上へ下へ、またくねりくねられ風に邪魔され

 それでも鳥はふらつきながらも自分の進むべき場所だと思う場所へ飛ぶ。

 アニメや映画で、どこか無意味なように鳥達が飛んでいる風景が

 ズームされるシーンがあったりするけれど。

 あれは、心をからっぽに出来て、見ていて心地良かったりする。

 そんな形容しがたい程、心地の良い風景を傍目に私の両足は

 装備品の所為で、とても蒸れている、気持ち悪い。

 一瞬の吐き気をえずきながら、私は、歩く。

 この町、私の住んでいる町の名前は、【空白】町と言うらしい。

 読みは、そらじろ。

 空っぽな空は無限の可能性を持った白と似ている。

 そういう意味で、あってほしいなぁっとモノローグ。

 けど、この町には、あまり雑然としていなくて、空然としている

 殺風景だけど風景は生きている。

 町より本来ある自然を重視したような町だと勝手に

 頭の中で色づけしている。

 

 「ま…何もないだけ、かもしれないけど」


 想像や妄想で美しい事で何かを決めつけることは、良い事だって。

 私は思う、だって自分の住んでる空間を美しい所だって思えると

 なんだって美しいって思えてくるから。


 「どうでもいっか」


 何もかもをうやむやにする言葉を、何もかもうやむやにするために呟いて

 私は先へ急ぐ。


 

 空白町の駅の名前は

 【空白駅(からはくえき)】という。

 町の駅に町の名前が付くのは結構あることだけど、読み方が違う

 のは、なかなかない。

 この町には、そもそも人口密度がそれほどじゃないので、

 駅にいる人達の数も、目で追える程で、まばら。

 今日もそう。

 駅には、二進数を使わずとも、片手そのままの本数で数えれる程しか

 人はいない。

 しかも、誰ひとり知らない人はいない。

 

 「おはようございます」


 駅に着いて、眺めていると

 誰かから、挨拶をされて、戸惑う。

 誰ひとり知らない人はいなくとも、誰ひとり声を掛けた人はいない。

 空間として、了解して認識しているだけの話なのだ。

 

 「お、おはようございます」


 半ば緊張の糸を張らせて私はその声に呼応する。

 朝の挨拶なんて、彼と駅長以来だ、あぁ一六時間ぶりくらいか。

 その挨拶に感嘆を覚えながら、チケット券売機で、電車に乗る為の

 招待状を貰う、有料。

 時刻は、≪11:30≫彼との約束の時間は≪12:00≫

 本当なら、多少の焦燥感を私は覚えないといけないのかもしれない。

 でも、彼と逢引きを交わす場所は、どうにも私の家と近すぎるので。

 あまり気にしなくていい。

 あぁ、そうそう。

 遊園地の施設名を私は、彼にもらったパンフレットで確認しておく。

 【ネバーチャイアルトランド】

 意味は、大人と子供が混じり合う場所

 得意とする遊戯は、メリーゴーランドで名前は

 【シープゴーランド】というみたい。

 ふむふむ、ほんほん。

 パンフレットをぺらぺらと捲りながらわざとらしく首を傾く。

 まぁ、至って普通の遊園地かな。

 男に言わせると、感性がないと言われる女らしさを本領発揮させていると

 構内アナウンスが鳴り、金属の高速物体がレールに

 乗ってやってきたことを知らせる。

 自動改札に券を通して、電車に乗る。

 りんりんりん

 轟音と共に発射する電車に胸騒ぎを覚えながら、私は軽い眠りへと堕ちた。

 

次からようやく本編という本編が始ります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ