知ってた
「俺は普通に手紙配達にナンナに来ただけだ。たまたま名無したちと場所が被ったんだな」
「右に同じく、よ」
メールと手紙屋一同は村長の家へと入った。ナンナもリリアーヌと同じく宿屋のない小さな村なので、訪れた手紙屋は村長の家の一部を借りることになっているらしい。
手紙屋の名無し、フーリエ、ハイネがその一室で深刻な面もちをしていた。
メールはあれからもハイネに抱きつきながら泣き続け、やがて泣き疲れて眠るように気を失った、今は隣の寝室で眠っている。
名無しとハイネは村長に連れられてメールを運び、フーリエは殺害された手紙屋の検証を行っていた。
まずはフーリエが口を開く。
「ついさっき殺された手紙屋は、おそらくエドワード・オーエンよ」
「オーエン……。確かアンドルフさんの息子だったか」
「ええ、親子揃って手紙屋の、ね」
「くそっ!」
椅子に座っていたハイネが、机を思いっきり叩いた。鈍い音があたりに響く。
「なんで手紙屋が次々と! しかもよりによって、アランさんとシゼルさんまで! 許せねえ……」
怒りをむき出しにするハイネ。
名無しが確認の質問を投げかけた。
「今回も『手紙屋殺し』の仕業なのか」
「そうでしょうね。私はロウェナでも殺された手紙屋の死体を見たけど、それも今回のエドワードも切り裂かれたような傷跡があった。まず間違いなく同一犯。父さんと母さんが同一犯に殺されたかは分からないけど……。二人が手紙屋である以上、彼らだけ事故にあったとか、魔物にやられたとか、事件とは無関係だと考える方が不自然じゃない?」
「名無し、お前は知っていたのか? その、メールの両親が殺されてたことを」
ハイネは引き続き怒りを保ちながら、しかしその矛先を名無しに向けないよう、最大限取り繕いつつ訊ねた。名無しはゆっくりと口を開いた。
「ああ、知ってた」
「そうか……知ってたんだな。悪いこと訊いちまった」
気にするな、名無しはそう短く答えた。
「けど、こうして殺人現場に行るのは不幸中の幸いかもしれない。手紙屋殺しがまだ近くにいるかもしれない。いやいるはずだ! 俺は捜す。見つけだしてカタをつけてやる」
「あんた、相手がどういう奴かわかってるの? 父さんと母さん、そしてマーカス——今の手紙屋の中で最強と言われてる三人を手にかけたかもしれないのよ。実力が計り知れない」
だから、とフーリエは座っていた椅子から腰を上げる。
「私も行くわ。さすがに私も黙って見過ごせないわ」
「名無し、お前はどうする?」
「俺はパスだ」
名無しはちらりとメールが寝ている部屋の方に目を向けた。
「そっか、わかった。心配だもんな。手紙屋殺しは俺たちに任せとけ。メールを頼んだぜ」
「メールとあんたを二人きりにさせるのはなんか癪だけど、今回は非常事態だから特別にお咎めなしにしてあげるわ。 ……メールをよろしくね」
ハイネとフーリエは自身の装備を整え、雪が地面を覆い尽くす家の外へと繰り出した。




