12月24日(2) キカイ
朝、メールはぱちりと目を覚ました。窓からはカーテン越しに優しい陽光が部屋の中へ伸びている。
メールは小さく伸びをした。そして昨日、彼女が寝る前と変わらずソファに座っていた名無しに目が向いた。
「あ、名無しさん、おはようございます」
「ああ」返事は素っ気ない。
メールは一旦名無しから視界を外し、ベッドのすぐ横にあるカーテンを開け放った。
昨日までは、そこにはひもに吊るされたサンタへの手紙があった。
しかし、今日は手紙がなくなっていて、ひもだけが垂れ下がっていた。
メールは目を見開いた。
「名無しさん、名無しさん! ほら見てください! サンタさんへの手紙がなくなってます! 取りに来てくれましたよ!」
「そうか、よかったな」
相変わらずの淡白な反応だった。しかしその生返事をしながら、名無しが手に持っていたものをそっとポケットにしまうのを、メールは見逃さなかった。
「今ポケットに入れたもの、なんですか?」
すかさずメールが問うと、名無しはあからさまにめんどくさそうな顔をした。見せるつもりはないようだ。しかしそういうものほど見たくなってしまうものだ。
メールはベッドの近くから、名無しの方へ向かう。彼の手に遮られながらもポケットに手を伸ばす」
「いーじゃないですか、見せてくださいよ。見るだけですから、お願いします」
手を合わせてお願いのポーズ。
「…………」
名無しは溜息を一つ漏らし、渋々ポケットから『何か』を取り出した。よく見えるように目の前に差し出してくれた。
「これは……金属?」
外見は、リリアーヌの船や錨に使われていた金属に見た目はよく似ていた。しかし所々錆ついてしまっている。元々は全体的に光沢があったのかもしれない。
「ううん、違う。ただの金属じゃない」
メールは直前の自分の予想を否定した。『何か』は天然物の塊ではなかったのだ。箱のように蓋と容器があるように見える。蓋と容器は小さな丸い物でしっかりと固定されていて手ではあけられそうもない。蓋には無数の小さな穴があけられている。明らかな人工物だった。
もっとよく調べてみたい。メールは金属の塊へ手を伸ばすが、あと少しのところで名無しが後ろへ手を引き、メールの手は空を掻いた。
「見るだけ、って約束だ」
(……けち)
メールは内心そう思いながらも、言い出しっぺだから言い出せない。
寝ぼけ眼ながらも必死に目を凝らして『何か』を見ていたが、結局なんなのかわからず、メールは音を上げた。
「わかんないです。なんですか、これ」
「機械だ」
「キカイ?」
聞き慣れない言葉にメールは顔をしかめる。
「その、キカイってどういうものなんですか?」
「さあな」
名無しはさらさら答える気がない様子だった。メールがむーっとほおを膨らませていると一言、
「……フーリエにでも訊いてみるんだな」
「? お姉ちゃんに?」
それ以上、名無しは何を聞いてもまともな答えを返してくれなかった。機械もポケットの中にしまい込んだ。メールは名無しに問うことを諦めて、寝具の整頓を行うことにした。




