12月22日(4) サンタさんへの手紙
名無したちはほどなく宿屋へと向かった。
手紙屋は定住する場所を持たず、町から町への根無し草である。魔物などの危険を顧みることなく、国民が書いた手紙を配達することが義務づけられている。
その代わり、国から各々の町村へ、手紙屋へのサポートを怠ることがないようにとの通達がでており、町の中にいる限りは、手紙屋の基本的な生活は保証されている。宿や食事が無償で利用できることもその一環となっている。
手紙屋の証の鞄を受付に見せると、すぐに部屋へ案内してくれた。二階に上がり、絨毯が敷かれた廊下を歩いた先にあるその部屋は、この宿屋の数ある部屋の中でもおそらくトップレベルのものであることが容易にわかるような豪華さだった。広さはもとより、床に敷かれたカーペットやランプ、机などのインテリアなど、驚くほど充実していた。
名無したちは夕飯を食べ、町の最高級スイートルームを満喫した。メールは暖炉のそばにじっと居座り、ひたすら冷えた体を暖め、フーリエはふわふわのベッドに倒れ込み、あまりの気持ちよさに恍惚の表情を浮かべていた。
名無しはというと、暖炉のすぐそばにあるソファに座り込み、ぼんやりと暖をとるメールを眺めていた。
やがて夜も深まり、名無しは風呂へ入った。上がってくると、メールは部屋に置かれた机の上で、フーリエに見守られながら、何かに取り組んでいた。
「何やってんだ」
「サンタさんへ手紙を書いているんですよ」
名無しの方を振り向いたメールはニッコリ笑って書きかけの手紙を見せてきた。『サンタさんへ』とだけ書かれていて、続きはまだ書かれていない。
「便箋はお姉ちゃんからもらったんですよ」
「メールはサンタクロースに何をお願いするのかなー?」
フーリエは優しい口調でメールに問いかける。
「えっとね、コートを頼もうかなって思ってるんだ。ほら、冬って寒いのが普通なんだったら、コートあったほうがいいでしょ?」
「そうね、それはあったほうがいいわ。もらえるといいわね」
メールはフーリエに協力してもらいながら、宿屋の窓の外側につり下げた。三人の部屋が二階にある以上、こうなると普通の人は取ることができない。部屋の中にいる三人が内側から取るか、トナカイを使って空を飛べるサンタクロースが宿の外から取るか、どちらかだ。
「さ、もう寝なさい」
「うん。 ……あ、お姉ちゃん」
メールは思いついたように提案した。
「もし、このまま起きてたらサンタさんを見れるのかな? 誰も姿を見たことないんだよね? ちょっと見てみたいかも――」
「そういえば知ってるメール?」
メールの言葉を途中で遮ってフーリエは話しかけた。顔は意地悪く笑っている。
「どうしてサンタクロースを見た人がいないか知ってる? 夜更かししてサンタを見ようなんて考えている悪い子どもには、サンタは来なくてプレゼントをあげないからなんだって――」
「おやすみなさい!」
聞くや否や、ベッドに飛び込み目を閉じたメールを見ながら、フーリエはゲラゲラと笑っていた。




