カミサマ君
「ねぇ、カミサマ君。この問題教えて」
「うん、これはねーー」
僕が通う小学校には神様がいる。と言っても、本物の神様ではない。
平神。
同じ六年C組の男子だ。
読み方は「じん」だが、同じ小学生とは思えないほどの博識っぷりで、彼に聞いて分からないことはないというほど頭が良かった。それだけではなく、どうしてそんなことまで分かるのかということまで彼は答えてみせた。
明日の体育、雨でなくなる?
次のテスト、何点取れる?
俺、今日宿題忘れてもバレない?
明日の席替え、私の席どこになる?
どこにでもいるような地味で目立たない見た目だが、いつも穏やかな空気と微笑みを絶やさず皆の質問に何でも答える様から、親しみと尊敬の意味を込めて、”カミサマ君”と呼ばれている。
「ねぇ、カミサマ君」
「どうしたの坂下さん?」
「あの……放課後ちょっと時間あるかな?」
「うん、いいよ」
「やった! ありがとう!」
毎日のように頼られて大変そうなのに、カミサマ君は嫌な顔一つ見せない。そんなところも神様たる所以だ。
*
「困っちゃうよ」
「どうしたの?」
「坂下さんに呼び出されてさ、何て言われたと思う?」
「もしかして、告白?」
「半分正解。相手は僕じゃなくて深山君だ」
「へーそうなんだ。でも、何が困るの?」
「深山君のことが好きなんだけど、告白したら成功するかって」
「あー、なるほど」
「参ったね。答えを知ってるってのも残酷なもんだよ」
どうやら坂下さんの告白は失敗するらしい。深山に他に好きな人がいるか、単純に深山が坂下のことを好きじゃないか、どちらかは分からない。そんな当人しか知るよしのない気持ちまで、カミサマ君はなぜか知っている。だがもう驚きはしない。なにせ彼はカミサマ君なのだから。
「何て答えたの?」
「その答えは僕からじゃなく、深山君から聞くべきだよって」
「なんかずるい」
「カミサマだってずるぐらいするさ」
そう言って彼はイタズラっぽく笑った。いつも浮かべる仏のような笑顔とは違う、年相応の少年の笑顔だった。
*
「カミサマやるのも疲れるもんだね」
そんな驚きの言葉を聞かされたのは、神の気まぐれだったのだろうか。
ある日、忘れ物を取りに教室に戻ると彼がいた。机に座って窓から夕日を眺める姿は光の加減もあって僕の目に神々しく映った。
目が合うと、「やあ八神君」といつもの笑顔を向けられた。そして僕に言ったのだ。神は疲れると。
最初、嫌味なのかと一瞬思った。
平 神。
八神 真。
名字と名前、場所は違えど偶然神の名を持っている者同士だった。でも僕は普通の小学生で彼と違って何も知らない。神様には程遠い存在だ。
正直、最初僕は彼を避けていた。八神だなんて大層な名字を持ちながら凡人の自分と違って、本物の神様然とした彼の存在を鬱陶しく感じていた。実際、周りから冗談交じりで神いじりをされたこともあった。だからはじめ、僕は彼が嫌いだった。
「じゃあやめればいいじゃん」
彼から目を逸らし、机の中に忘れた教科書を漁って取り出し、急いでランドセルに放り込み、さっさとその場を後にしようとした。
「じゃあ練習させてよ」
その声で僕は止まった。思わず彼に視線を向けた。
「練習?」
「人間に戻る練習」
その時の笑顔は、教室で皆に見せるあの仏のような笑顔ではなく、僕にだけ見せる人間の子供の笑顔だった。
「君の前だけ、僕はカミサマをやめてみるよ」
このやり取りで、なんだか僕は彼を嫌うことが馬鹿らしくなって、まんまと彼の練習につきあうという形で普通の友達になった。今までの気持ちは反転し、唯一人間の顔を知るという立ち位置にひっそりと優越感を抱くほどに、僕はすっかり彼の存在を許すようになった。
*
「坂下さん、泣いてたね」
「見事玉砕か。まあ僕があの時答えを教えていたらその場で泣いてただろうし、面倒を避けれて良かったよ」
「ひどい神様だなー」
本当は全く帰り道が別なのに、彼はわざわざ逆方向の僕と一緒に帰っている。倍の距離歩くことになって大変じゃないかと聞くと、「練習に付き合ってもらってる身だから」と言われ、じゃあいいかとそれ以上僕は何も言わなかった。そのおかげでお互い普通に喋って笑い合う関係になれたのだから良しとしよう。
「ねぇ、どうして何でも分かっちゃうの?」
「カミサマだからね」
「坂下がどうしてフラれるって知ってたの?」
「深山には好きな人がいるから」
「誰?」
「秘密」
「ずるいよ。じゃあなんで深山に好きな人がいるって知ってるの? そんな話聞いたことないよ」
「カミサマだからね」
「もーずるいってー。僕の前では人間でしょ?」
「人間はずるいものでしょ?」
「うわーほんとにずるい。こんなカミサマなら皆に嫌われるよ」
「はは、それはそれで見物かもね」
ーーこっちの方がいいと思うけどな。
普段の彼を知ると、教室で神として完璧に振る舞う彼の姿の方が不自然に感じた。こっちの方が人間味があって喋ってて楽しいのに。
「ねぇ、神様やめたら?」
「へ?」
「そもそも、なんで神様やってるのさ?」
「成り行きだよ。一人の質問に答えたら、それが広まって色んな人から質問されるようになって。そして僕はその全ての答えを知っているから答えられてしまう。そこに答えがあると、人ってのは考えることをやめて答えだけ知ろうとする。僕はただ、聞かれたことに答えているだけなんだけどね」
なんだか、とても大事なことを言われた気がする。確かにみんなすぐにカミサマ君に答えをねだる。
この問題の答えは?
次のサッカーの試合は勝てるか?
なんでもかんでも。自分で考えて、行動して導きだすべき答えを簡単に得てしまう。
僕は彼が苦手だったこともあってあまり喋る機会がそもそもなかったというところもあるが、彼を頼らなかったのは簡単に答えを得ようとする皆の姿が嫌だったという部分もあったからだ。
「八神君は僕の力を利用しない。だからこそ君にだけ素でいられるのかもね」
そして彼はふいにまたこんなずるいことを言って僕の心を掴んでしまう。
「特別にさ、すごいこと一つ教えてあげるよ」
そう言って彼は僕の耳元に顔を近づけた。
そして彼は、僕が全く求めていない答えを呟いた。
「答え合わせは明日にね」
彼はくるっと振り返り自分の家の方向へと歩いて行った。
でも僕はまだ、今しがた言われた言葉が頭の中でぐるぐると巡り、しばらく歩き出すことが出来なかった。
*
「はい皆席に着いてー」
教室に入ってきたのは担任の武部先生ではなく、隣のクラスの担任の小島先生だった。いつもと違う流れにざわつくクラスを小島先生は手慣れた調子でぱんぱんと両手を叩いて制した。
「武部先生ね、今日学校に来る途中に事故にあって怪我しちゃったの。武部先生はしばらく学校来れないけど、その間は私や他の先生でカバーするから心配しないでね」
再びざわつく教室の中、僕と彼だけはきっと違った。
一番後ろの席に座っている彼が、今どんな顔をしているのか。いつものように笑っているのだろうか。
気になったが、結局怖くて振り返ることはできなかった。
*
「ね、当たったでしょ?」
一人で帰ろうとした僕の背中に、彼はいつものように意気揚々と声を掛けてきた。
『明日武部先生、車の事故で大怪我してしばらく学校来れなくなるよ』
思わずぞくっと背筋が震えた。彼の言う通りになった。
どうして、どうしてそんなことまで分かるんだ。
「どうしたの? 怖くなった?」
「そりゃ、怖いよ……」
「どうしてさ、カミサマなんだからこれぐらい余裕だよ」
「ぼ、僕の前では、人間でいるんじゃなかったの?」
「あ、ごめんごめん。カミサマでいる時間が長いとそっちが染みついちゃって。君の前だと素でいられるからついね」
気分が悪かった。先生の不幸を言い当てたからって何もすごくなんてない。嫌いな先生でもないし事故にあって来なくなっても嬉しくない。嫌いな先生だとしてもこんなのは嫌だ。
「ま、これも僕が人間に近付く練習の為だと思って」
「これのどこが練習なんだよ」
「じゃあ練習ついでに、今日もいいこと教えてあげる」
言うやいなや、彼がまたさっと顔を近づける。不意を突かれて僕は避けることも出来ず、また彼の言葉を聞いてしまった。
「お楽しみに」
彼の楽しそうな笑顔は、僕には悪意に満ちているように見えた。
*
それから不幸の予言が続いた。
宮野麻里の手のひらにカッターが刺さる。
岡下元が階段で転んで両手両足の骨を折る。
井上京子の親が不倫をする。
馬場園博美の祖父が脳の病気で急死する。
予言はどれも一週間以内に現実となった。
もう僕は彼と一緒に帰らなかった。それでもいつの間にいれられたのか、鞄やポケットの中に予言の書かれた小さな紙が入れられていた。彼の名前が書いてあったわけではないが、彼以外にこんなことをする人間はいない。彼はどうしても僕に自分の予言を聞かせたいようだった。
僕はとうとう学校を休んだ。
彼に会うのが怖かった。彼の予言に触れたくなかった。
布団にくるまり不幸に見舞われていく人間の姿を想像して震えた。
どうして彼は急にこんな力を見せつけてきたのか。
今更なぜ、神の力を誇示するような予言を繰り返すのか。
「真、東雲さんがこれ届けてくれたわよ」
ノックと共にお母さんの声が聞こえ扉が開く音がした。
「机の上に置いとくわよ」
授業や宿題のプリント類だろう。前に風邪で休んだ時も一番近くに住んでる東雲さんが色々と届けてくれた。小二の頃から既に眼鏡をかけていて、さぞ勉強熱心なのかと思ったらゲームのし過ぎというのは彼女の鉄板エピソードだった。
お母さんが部屋から出たのを確認し、もぞもぞと布団から這い出る。予想通り机の上にはプリントが数枚重ねて置かれていた。しかし、ぺらぺらとプリントをめくった三枚目、僕の手は止まった。
【東雲あずさの眼鏡が壊れ、破片が目に刺さって左目を失明する】
身体の中身が凍りつくように冷えていった。僕にしか見せない彼の無邪気な笑顔が頭に浮かび、急に胃液がこみ上げトイレへ駆け込んだ。
あいつは一体、何がしたいんだ。
どうしてこんなことをするんだ。
涙目になりながらぜえぜえと息を切らしながらはっとした。
ーー東雲さん。
プリントを届けにきたのはついさっきのことだ。まだ彼女の予言は発現していない。
ーー止めなきゃ。
僕は足が絡まりそうになりながら慌てて階段を下りて玄関を飛び出す。
まだ近くにいるはずだ。東雲さんの家は知っている。
寝間着であることなど気にせず僕は走った。そして幸いにもすぐに東雲さんの背中を見つけた。
「東雲さん!」
突然大声で呼びかけられ、東雲さんの背中が大きくびくっと震えた。
「え、八神君!?」
驚いた顔の東雲さんがこちらを振り向く。
ーー伝えなきゃ、伝えなきゃ。
そう思うのに息が切れてすぐに言葉が出ない。
「八神君、大丈夫なの!?」
逆に彼女から心配の声を掛けられてしまう。
僕なんかどうでもいい。彼女を助けなきゃ。このままだと、彼女の視力が一生奪われてしまう。
「し、東雲さん! あ、あの……」
そこで僕は愕然とした。当たり前のことに今になって気付いてしまった。
ーー僕は今、何を言おうとしている?
”眼鏡が壊れて失明するから気を付けて”
その内容は神様である彼ならば成立する。
でも、人間の僕では成立しない。何を言ってるんだと馬鹿にされるだけだ。
何てことだ。彼はもしかしてそこまで分かったうえでこんなことを仕掛けたのか。
絶望した。僕に彼女は救えない。
「どうしたの八神君?」
東雲さんが優しく声を掛けてくれる。
ーーそうだ。関係ない。
僕は彼女を助けようと思ってここに来た。
神も人も関係ない。同じクラスメイトとして、友達として、僕は彼女を助けたい。どう思われようが、ここで伝えなきゃ彼女は危機を回避できない。
「東雲さん、眼鏡に気を付けて!」
「え? 眼鏡?」
「う、うん。一週間以内に眼鏡が壊れて、目が見えなくなっちゃうから!」
そこまで言い切ると、予想通り東雲さんの顔が曇った。
「……八神君、何言ってるの?」
「ごめん、変なこと言ってるだろうと思う。けど、お願いだから一週間だけでも気を付けてくれないかな?」
「気を付けてって……でも、眼鏡ないと生活できないし」
「お願い!」
僕は深く頭を下げた。
確かに無茶なお願いだ。気をつけろと言われて具体的にどうすればいいかもわからない。あまりにも無責任な言葉だ。それでも伝えないよりかはましだ。そう信じるしかなかった。
「まるでカミサマ君みたい」
しばらくの沈黙の後、東雲さんは少し笑いながら言った。
「もしかして、八神君もカミサマ君なの?」
「え、いや、僕は……」
「分かった。なんかよくわかんないけど、できるだけ気をつけてみる」
東雲さんはグッと僕に向かって親指を立てた。
「あ、ありがとう!」
「分かったから、早く家戻りなよ。病人なんだから」
「あ、う、うん」
じゃあねと東雲さんは笑顔で手を振って帰って行った。
ーーお願い。お願いだから。
僕は強く祈りながら家へと戻った。
*
二日後、僕はおそるおそる登校した。
「おはよう、八神君。大丈夫?」
どこまでも普段通りの穏やかな笑顔を浮かべた、カミサマ君に迎えられた。
「……おはよう」
僕はなるべく目を合わさず、震える身体を抑えながら自分の席に座った。
ふと東雲さんの席に視線を向けた。
彼女の席は空いていた。そして授業が始まっても彼女は来なかった。
その翌日、彼女が怪我で両目を失明したと小島先生から知らされた。
*
「どうしてこんなことするんだよ」
放課後、僕は席に座っている彼に話しかけた。
「ん? 何が?」
「何がって……予言だよ! ひどい予言ばかりして、一体どういうつもりなんだよ! 神様気取りもいい加減にしろよ!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。だが彼は全く怖がりも怯えもせず、にやにやと笑っていた。
「何がおかしいんだよ!」
彼がゆっくりと立ちあがり、僕を真正面から捉えた。
「カミサマが羨ましい?」
「は?」
「カミサマだから全部知ってるよ。僕のこと嫌って妬んでたんでしょ? おなじ”神”なのにって」
「そ、それは……」
「じゃあさ、代わりにやってよ、カミサマ」
「え?」
「八神の方がさ、名前的にカミサマに近いよね。僕は神と書いても読み方はジンだからね。全然カミサマっぽくないし」
「何、言ってるんだよ」
はははとわざとらしく彼は笑った。
「カミサマってね、全知全能なんだよ」
「何が言いたいの……?」
「単なる予言だと思ってる? 全部」
彼はそこで言葉を区切った。
僕が正解を自分の言葉で口にするのを待っているようだった。
ーー全知全能? 単なる予言じゃない?
彼の言葉の意味を考える。
『明日武部先生、車の事故で大怪我してしばらく学校来れなくなるよ』
彼が僕にしたいくつかの予言。これが予言じゃないのだとしたら。
その意味に気付き、僕は愕然とした。
「……全部、君がやったの?」
彼はにたっと笑った。
全部、予言じゃなかった。
彼が現実にしたんだ。
全知全能。
彼は全てを知っていただけじゃない。
全てが彼の思い通りだったんだ。
“そこに答えがあると、人ってのは考えることをやめて答えだけ知ろうとする。僕はただ、聞かれたことに答えているだけなんだけどね”
決まった未来を語っていたわけじゃない。
全部、彼が口にしたことで現実になっているだけだったのだ。
テストの答えも、試合の結果も。皆の不幸も、全部、全部。
「坂下さんの恋だってほんとはいくらでも叶えてあげられるんだけどね。でも、全部僕の言葉通りになるだけじゃつまらないから」
その結果、彼女は傷ついた。全知でもある彼なら、結果がどうなるかも分かっていたはずなのに。
「なんで、こんなことするんだよ……」
涙がぼとぼと零れた。
怒り、怖い、悲しい、辛い。色んな感情で心の中はぐちゃぐちゃだった。
「君にカミサマってのはどういうものかを分かってもらう為だよ」
「意味が分からないよ」
「やめてもいいって言ったのは君だからね」
「それが何なんだよ」
「人間に近付く為の練習だって」
「だから意味分かんないって!」
「八神君は僕の力を利用しなかった。カミサマに頼らなかった。名前も、素質も十分だよ」
「ずっと何言ってるか分からないよ」
「君に全部あげる。僕の力」
「……え?」
「カミサマの力。僕は人間になるから、君が次のカミサマだよ」
何を言っているんだ?
どういう意味だ?
僕が、次の、神様?
「八神の方がよっぽどカミサマっぽいからね」
じゃあ、頼んだよ。そう言い残して、彼は教室を立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「何?」
「僕が、神様になんて、なれるわけないだろ。なるわけないだろ。こんな力いらないよ!」
ははは、と彼がまた笑った。
「なんでさ。もうしっかりカミサマの力使ったくせに」
「……使った? 使ってないよ、そんな力!」
「使ったよ、君は間違いなく。よく思い出してごらん」
そして今度こそ彼は教室から出ていった。待てと叫んだが、彼の足は止まらなかった。
ーー使った? 神様の力を? いつ?
必死に思い返した。
そんなわけない。そんな力、使っているはずがない。
僕の力で現実にしたものなんて一つもーー。
ーー……まさか……。
心臓が急激に鼓動を速めた。
一つの記憶に僕の意識は一気に集中した。
ーー嘘だ。嘘だ。
僕は記憶の中でその場面に立ち戻る。
学校を休んだあの日の時間に。
「あ……あぁ……あぁあああ」
“東雲さん、眼鏡に気を付けて!”
“え? 眼鏡?”
“う、うん。一週間以内に眼鏡が壊れて、目が見えなくなっちゃうから!”
そして数日後、東雲さんは両目を失明した。
【東雲あずさの眼鏡が壊れ、破片が目に刺さって左目を失明する】
彼が残した予言では、東雲さんの失明は左目だけだ。なのに、彼女は両目を失明した。
慌てて僕が口にした、神様の力を持った僕の言葉が現実になったからだ。
“八神君は僕の力を利用しない。だからこそ君にだけ素でいられるのかもね”
ひょっとしたら、最初から僕は力の器として目をつけられていたのかもしれない。神様なのだから、きっと全ては容易いことだっただろう。
翌日から、彼は学校から姿を消した。
「カミサマ君? 誰それ?」
そして誰一人、平神ことカミサマ君のことを覚えていなかった。
なぜ彼はカミサマをやっていたんだろう。
なぜ彼は全ての力を僕に渡したんだろう。
“僕は人間になるから、君が次のカミサマだよ”
「ねぇ八神君、明日のテストなんだけどさ」
クラスメイトから声をかけられる。答えを求める人間からの声。
そして僕というカミサマには、その答えが既に頭の中に浮かんでいた。




