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【連載版】悪役令嬢の取り巻きAですが、断罪イベントの段取りを完璧にこなしたら、なぜか俺様王子に引き抜かれました  作者: 天地サユウ
第六章

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【番外編】東の国のヒナ祭り

夜中に間違えて【登場人物紹介】を投稿ミスしてしまいました。

こちら、お詫び投稿でございます。

※明日から第七章ですm(__)m

 大陸暦2026年、3月3日。

 王宮に春の足音が近付く頃。

 春の行事に向けた準備で、私と殿下は馬車馬のように働いていた。

 

「リリアナ、東部辺境伯からの定期報告だが……」

「すでに確認済みです。例の国境付近の街道整備の件でしたら、工事の追加費用は、昨年度の予備費から割り当てておきました」

「妥当な判断だ。しかし、次から次へと金のかかる事案ばかりだな」

「はい。イザベラ様が何度も扉を壊さなければ、多少の修理費を――」

 

 バンッ! 執務室の重厚で高価なマホガニー柄の鉄扉が、親の仇のように破壊された。

 

「リリアナ! 愛しすぎる、あなた! ヒナ祭りですわ!」

 

 砂煙と、むせ返るような高級香水の匂い。

 そして視界を暴力的に埋め尽くすほどのピンク色が飛び込んできた。 


 噂をしてもしなくても現れたのは、イザベラ様だ。

 今日のイザベラ様の装いは、春の陽気を凝縮したような、桃色の十二単風ドレス。

 幾重にも重なった極上のシルクには、金糸で満開の桃の花が刺繍され、歩くたびにジャラジャラと無数のルビーの髪飾りが揺れる。

 

 そして背後には、お揃いのピンク色のドレスを着た『取り巻き軍団』が、いつも通りさえずる。

 

「イザベラ様のおなーりーですわ!」(取り巻きB・C・D)

「春の女神が降臨されましたのよ!」(取り巻きE・F・G)

「愛の結晶ですの!」(取り巻きH・I・J・K)


 執務室の空気が一瞬にしてピンク色に染まり、酸素濃度が低下した気がする。

 

「……イザベラ、扉を破壊するなと何度言えば分かる」

 

 殿下が深くため息をついた。

 その瞳には、すでに疲労の色が濃い。

 

「それに、なんだ、その『ヒナ祭り』とは? 鳥の祭りか?」

「あなた、ヒナ祭りを御存知ないのですか!?」

 

 イザベラ様が信じられないわという顔で、両手で口元を覆う。

 

「愛する未来の妻が、こんなにも美しい桃の精霊のような出立ちで現れたというのに!」

「精霊というよりは歩く宝石箱だろう。リリアナ、ヒナ祭りを説明しろ」

 

 いつもの丸投げである。

 私は静かに手元の資料を置き、眼鏡を中指で押し上げた。

 

「『ヒナ祭り』とは、はるか東の国に伝わる伝統行事です。女の子の健やかな成長と幸せを願う日であり、正式には「上巳の節句」と呼ばれます。春の訪れと共に、各家庭では『お雛様』と呼ばれる、王と王妃を模した人形を壇に飾り、桃の花や三色の甘い餅を供えて祝うと、書物で見たことがあります」

「ほう、それは平和で微笑ましい行事だな」

「はい。ただし、それは平民にとってはの話です」

「平民にとっては……?」

「はい。貴族社会においては全く意味合いが異なります。『誰が一番豪華で、巨大で、価値のある雛壇を飾れるか』。すなわち、家門の財力と権力を誇示する、女たちの血で血を洗う代理戦争の場なのです」


 「代理戦争だと……」と、殿下の顔が引きつる。

 

「その通りですわ、リリアナ!」


 イザベラ様が、純金の骨組みにルビー(桃)、真珠(白)、エメラルド(緑)の三種の宝石で『菱餅(ひしもち)』が象られた特注の扇子を、バサァと広げた。


「ただの人形遊びではありませんの! 未来の王太子妃となる私が、誰よりも豪華絢爛な『お雛様』を飾ることで、我がローゼンバーグ家の威光を、国中に知らしめる絶好の機会ですわ!」

「ちなみにですが、イザベラ様。今年はどのような『お雛様』をご用意されたのですか?」


 私が尋ねると、イザベラ様は得意げに胸を張った。

 

「よくぞ聞いてくれたわ! 今年は純金で鋳造した、等身大の『殿下』と『私』のペア人形を特注しましたの!」

「等身大の純金ペア人形だと……」

「ええ! もちろん、費用はすべてパパに請求しておきましたわ! パパったら、我が愛娘と王太子の愛の結晶ならば、金山を一つ切り崩してでも用意しよう! と大喜びでしたのよ!」

 

 相変わらず、公爵の財布の紐は、愛娘に対してはガバガバのようだ。

 

「これを王宮の正面広場に飾るわよ! あの青魚の匂いがする泥水女カトレアが来る前に、王都の視線を独占するのよ!」

「イザベラ様、王宮広場は私有地ではありません。無許可の等身大純金像の設置は、景観法違反、及び民衆の目を眩ませる傷害罪に問われる可能性があります」

「なんですって!? 私の美しさが罪だと言うの!?」

「はい(物理的な光量として)」

 

 私が即座に却下すると、イザベラ様は「むきぃ!」と扇子を振り回した。

 

「リリアナの分からず屋! いいこと? 私とあのカトレアの因縁は、この『ヒナ祭り』から始まっているのよ! 絶対に負けられないの!」

「因縁ですか?」

 

 私が電卓を叩く手を止めると、イザベラ様はドヤ顔で語り始める。

 

「そうよ! あれはまだ、私たちが7歳の頃よ……」

 

 ◇

 

 イザベラ様の幼少期時代を長々と聞いた私は、脳内で改めて整理する。


 何でも、ローゼンバーグ公爵邸の巨大なメインサロンは、見渡す限りの赤と金で装飾されていた。


 中央に聳え立つのは、通常の七段飾りを遥かに凌駕する『純金製・二十一段飾り』。

 飾られている人形は、全て有名彫刻家の手によるもので、衣装は本物のシルク、そして冠にはピンクダイヤモンドが埋め込まれていたらしい。


 今の物価で計算すると、総工費は、およそ地方都市の年間予算が吹き飛ぶ額だ。

 

「おお、我が愛娘イザベラ! 今日も世界で一番可愛いぞ! パパが用意したお雛様、気に入ってくれたかな?」

 

 でっぷりとしたローゼンバーグ公爵が、幼いイザベラ様(当時7歳)を抱き上げ、頬ずりをする。

 真っ赤なフリフリのドレスを着た、生意気だが天使のように愛らしい少女のイザベラ様。

 

「ええ、パパ! とっても素敵だわ! でも、お内裏様の顔が、パパに似ていて少し暑苦しいわね。将来はもっと、シュッとした王子様みたいな人がいいわ!」

「がははは! パパは傷つくが、イザベラが望むなら本物の王子を連れてきてやろう!」

 

 親馬鹿の公爵の言葉に、サロンに集まっていた貴族の娘たち――『ミニ取り巻き軍団』が、一斉にさえずっていたと思う。

 

「さすが、おじょうさまですわ!」(ミニ取り巻きAこと、現取り巻きB)

「おひなさまのピンクダイヤより、イザベラさまの瞳の方がキレイよ!」(ミニ取り巻きB)

「世界一ですの!」(ミニ取り巻きC)


 幼い頃から、この『肯定と賛美のシステム』は完成されていたらしい。

 イザベラ様がふんぞり返り、高笑いを上げようとしたその時だ。

 

「おーほっほ! 暑苦しいと思ったら、やっぱり、あなただったのね、イザベラちゃん!」

 

 現れたのは、シュトゥルツフルート侯爵家の令嬢、カトレア様(当時7歳)

 艷やかな青髪のツインドリルを揺らし、水色のドレスを纏った彼女の背後には、『ミニ太鼓持ち軍団』が控えていたはずだ。

 

「みなさま、道を開けてください。すごい湿度の入場ですよ」(ミニ太鼓持ちAこと、エステナ)

「うるおいたっぷりですわ!」(ミニ太鼓持ちB)

「きれいなお水で洗い流してあげますの!」(ミニ太鼓持ちC)

 

 カトレア様は扇子をパチリと小さく鳴らし、イザベラ様の二十一段飾りを鼻で笑った、多分。

 

「ふっふん、なんて悪趣味な金ピカの山かしら。ただ上につみ上げればいいってものじゃないわよ! かわいさとは、すなわち、『うるおい』と『流れ』。あなたのおヒナさまなんて、ただの置物だわ!」

「なんですって!? カトレアちゃん! 招待もしていないのに、よくもノコノコと泥水をまきちらしに来たわね!」

 

 カトレア様が持ち込んだのは、シュトゥルツフルート侯爵領の特産である、希少な最高級クリスタルを削り出して作られた『氷結のクリスタル雛壇』。


 純金の財力で圧倒する公爵家に対し、侯爵家は、芸術性と希少性で真っ向から対抗したらしい。


 結果、両陣営の取り巻きたちが小競り合いを起こした拍子に、イザベラ様の純金の人形が倒れ、カトレア様のクリスタル雛壇を粉砕。


 激怒した両家の当主が国会で真っ向から対立し、一時的に両領地間の貿易が凍結されるという、国家経済を揺るがす深刻な事態に発展した。


 それが世に言う『クリスタル雛壇砕け散り事件』。


 東の国の雅な伝統行事――その本質は、誇り高き幼女たちのプライドを懸けた、仁義なき派閥争いの幕開けであった、とのことだ。

 

 ◇


 私の脳内整理が終わった。

 執務室の窓から見下ろす王宮の正面広場は、一触即発の戦場と化していた。


 問題は、今日が『東の国からの外交特使』を王宮に迎える日だということだ。

 このままでは国際問題に発展しかねない、極めてシリアスな状況である。


 右陣には、イザベラ様の私兵が担ぎ込んだ、太陽の光を反射する『等身大・純金ペア像』。

 左陣には、カトレア様の指示のもと、王宮の景観水路を、勝手にせき止めて造り上げられた『人工清流・クリスタル雛壇』。

 

「さあ、カトレア! 今年こそ決着をつけるわよ! 特使殿の目を、私の黄金の輝きで独占して差し上げるわ!」

「おーほっほ! イザベラ! 東の国の文化である『清流』を再現したわたくしの雛壇こそが、外交の懸け橋となるのよ!」

 

 二大公侯爵令嬢が、扇子と扇子風のバチを突きつけ合う。

 すかさず、両陣営の取り巻き軍団と太鼓持ち軍団がフォーメーションを組んだ。

 

「イザベラ様の黄金こそ、我が国の絶対的な国力ですわ!」(取り巻き軍団)

「いいえ、カトレア様のクリスタルこそが洗練された文化の象徴ですわ!」(太鼓持ち軍団)

 

 過去の『クリスタル事件』の再来である。

 あの時は両家の当主が貿易を凍結させたが、今回は当主不在。しかし、財力と実行力を身につけた令嬢たちの暴走は、一歩間違えれば通商条約の決裂という外交問題を引き起こしかねない。


 水路の脇で、バインダーを抱えたエステナが眼鏡を押し上げながら口を開いた。


「カトレア様、王宮のインフラを無断で改修することは法に触れます。また、東の国の特使がこの過剰な装飾を見れば、自国の伝統文化を侮辱されたと受け取り、通商条約の締結が破棄される確率が98%です」

「エステナ、細かいことは後回だわ! 今は、あの金ピカ女の鼻をへし折るのが先なのよ!」

 

 エステナの的確なリスクヘッジも、ヒートアップしたカトレア様には届かない。

 イザベラ様も「ふふん、黄金の輝きを見せつけるのよ!」と謎の号令をかけている。

 

 このままでは、王国の外交と広場の景観が崩壊する。

 私は深くため息をつき、隣でこめかみを抑えているアレクセイ殿下を見上げる。

 さらにその隣には、騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた第二王子、ミハイル殿下の姿があった。


「何か大変なことになっているみたいだね」 

「ミハイル殿下、アレクセイ殿下、お二方の出番です」

「僕と兄上が特使の到着前に、あの猛獣二匹……二人を止めろと言うんだね?」

「はい。ヒナ祭りの主役は、お内裏様とお雛様です。未来の王国を背負うお二人の言葉で、この不毛な代理戦争と外交危機を終わらせるのです」

 

 私は半ば強引に二人の背中を押し、バルコニーへと連れ出す。

 二人が姿を現すと、広場の喧騒がピタリと止んだ。

 

「愛しのあなた! ご覧くださいませ! あなたと私の、永遠に変わらぬ愛を形にした純金像ですわ! 特使殿もこれを見れば、王国の威光にひれ伏すはずですわ!」

「ミハイル様! あのような冷たい金属の塊より、常に形を変え、大地を潤す、わたくしのクリスタル雛壇こそ、ミハイル様の寛大さを他国へ示すに相応しいと思いませんこと!?」

 

 広場中の視線が、バルコニーの二人の王子に集中する。

 アレクセイ殿下は手すりに手をつき、純金像を見下ろして低く告げる。

 

「……即刻撤去しろ、イザベラ。俺はお前との未来を、そのような動かぬ金属の塊に仮託するつもりはない。第一、他国の文化を力任せに塗り潰すような真似は、王家の品位に関わる」

 

 冷ややかな一言だった。

 イザベラ様が、ハッと息を呑む。

 普段ならここで「むきぃ!」と反発するところだが、私はすかさずイザベラ様のポジティブシンキングスイッチを押すべく、バルコニーから声を張る。

 

「イザベラ様、殿下は変わらぬ金属の塊よりも、常に変わりゆく生身のイザベラ様自身を見つめていたいと仰っているのです。外交の場において、最も誇るべき王国の華は、純金ではなくイザベラ様ご自身であると」

 

 ピクリと、イザベラ様の肩が震えた。

 殿下が「そこまでは言ってないぞ……」と小声で抗議してきたが、私は聞こえないフリでやり過ごす。

 

 一方のイザベラ様は、うっとりとした表情で、両手で頬を包み込んだ。


「生身の私ですって……!? 純金よりも、私自身が一番外交価値があると!? ああ……なんて情熱的な愛の告白ですの!」


 ポジティブ・スパイラルへの突入である。

 一方、ミハイル殿下も苦笑いを浮かべながら、カトレア様に優しく語りかけた。

 

「カトレア、君のその情熱は嬉しいけど、王宮の景観を変えてまで飾る水は、少し荒々しすぎるかな。特使殿を敬う気持ちは、他者の迷惑の上に成り立つものではないはずだよ。僕は、君と穏やかな本来の川辺を歩く方が好きだよ」

 

 ミハイル殿下の誠実な言葉に、カトレア様も顔を真っ赤にした。

 その機を逃さないと、すかさず待機していたエステナが動く。

 

「カトレア様、ミハイル殿下の仰る通りです。東の国の『ヒナ祭り』は、本来、水辺で身の穢れを払い、人形に厄を移して川に流す『流し雛』が起源。外交使節へ示すべき真の美しさは、規模ではなく『洗練と静寂』にあります。即刻撤収し、設計を見直すべきです」

 

 カトレア様は悔しそうに唇を噛んだが、やがてパチンと扇子風のバチを閉じた。


「……仕方ないわね。ミハイル様が穏やかな川辺をご所望なら、王家のお膝元でインフラを乱すのは、シュトゥルツフルート家の美学に反するわ。今日はこの辺りで引いて差し上げるわ」

 

 こうして、王国の外交危機を招きかねなかった代理戦争は、一滴の血も流れることなく幕を閉じたのである。


 ◇

 

 その日の夕刻。

 静寂を取り戻した王太子執務室。

 

「……終わったな、嵐が」


 ソファに深く腰掛けたアレクセイ殿下が、疲労困憊といった様子で、紅茶のカップに手を伸ばす。


「お疲れ様でした。等身大の純金像は、ひとまず国庫の地下金庫に『非常時の予備財源』として、丁重に保管しておきました。いずれ辺境のインフラ整備の足しになるでしょう」

「俺とイザベラの顔が刻印された金貨が流通するのか……まあ、悪くはない」

 

 殿下が自嘲気味に笑った時、控えめなノックの音が響いた。

 扉の向こうに立っていたのは、イザベラ様だ。

 

「珍しいですね、イザベラ様、お一人とは」

「リリアナがいじ悪を言うものだから、少し頭を冷やしてきただけですの」

 

 イザベラ様は少しバツが悪そうに目を伏せると、持っていた小さな桐の箱を、殿下のデスクの上にそっと置いた。

 

「それは?」

「本物の『お雛様』ですわ」

 

 箱を開けると、そこには手のひらサイズの可愛らしい木彫りの人形が二体、並んで収まっていた。

 豪華なシルクでも、純金でもない。素朴だが、どこか温かみのある彩色が施された東の国の人形だ。

 

「あの金ピカの像は、パパが勝手に作らせたものですの。……でも、これは私が探してきたのよ」


 イザベラ様は顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。


「東の国の商人に聞いたわ。ヒナ祭りは見栄を張るお祭りじゃない。女の子が将来素敵な旦那様と結ばれて、一生幸せに添い遂げられるようにって、祈りを込めて飾るものだって」

 

 いつもは自信過剰で、傲慢なまでに堂々としている彼女の等身大の女性としての本音。

 

 幼少期、カトレア様に純金のお雛様を馬鹿にされた時、イザベラ様が本当に怒っていたのは、高価なものを倒されたからではなく、自分の将来の幸せを願う祈りの形を否定されたからだったのだろう。

 

 殿下は箱の中の小さな人形を見つめ、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。

 

「……これは執務室に飾っておこう。イザベラ、お前のその祈りが無駄にならないようにな」

「あなた……きょ、今日は帰りますわ! リリアナ、殿下のサポートをしっかりなさい!」


 イザベラ様は耳まで赤く染まった顔を誤魔化すように、勢いよく鉄扉を開け放つ。

 私は嵐のように去ろうとするイザベラ様へ、わざとらしく話しかけた。

 

「イザベラ様、お帰りですか。それは残念です」

「……え?」

「東の国の伝統的な『三色の甘いお餅』と桃の紅茶を用意したのですが。殿下、イザベラ様の分は私たちが頂きましょうか」

 

 廊下に向かっていたヒールの足音が、不自然に止まった。

 

「ひな祭りのお菓子……一緒に……誰が帰ると言いましたの!? 愛する夫と過ごすひな祭りのティータイムを、この私が逃すわけないわ!」

「……たった今、帰ると叫んで、取り替えたばかりの鉄扉を壊したが?」

「細かいことは気にしないでくださいませ! それより、美味しいですわよ、あなた! はい、あーんですわ!」

「や、やめろ、イザベラ。口の中に強引に突っ込むの……」


 相変わらず騒がしい未来の王太子妃様と、それに付き合わされる不器用な王太子殿下。


 春の夜の執務室には、心地よい夜風と共に、二人の甘い声と悲鳴が響き渡っていた。

新作投稿しました。

タイトル:恋も奇跡も信じない私が、なぜか聖女になって王太子妃になるまで

https://ncode.syosetu.com/n4745lv/

一に金、二に金、三、四から金の主人公へ、勝手に筆が進みます。

よろしければ、こちらも見てやってくださいませm(__)m

次回更新は、明日でございます。

それではまた( ´∀`)ノ

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