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恋する香水はその手に想い人を手繰り寄せられるのか〜あなたはとりあえず落ち着いてほしい、焦れば焦るほど自爆していくから〜

作者: リーシャ
掲載日:2024/12/24

恋をテーマにしている香水を作り始めた時は、そのネーミングの良さに自画自賛していた。


しかし、噂が噂を呼び、なぜか「恋を叶える」香水という触れ込みに変貌していたのはびっくりしたものだ。


誇大広告過ぎる。


あまりにも、言い過ぎ、過言にも程がある。


その噂を楽しげに言いに来る男は王都で同じく薬屋をしている者で、辺境の地へわざわざ来ていた。


知れば王宮で働けるほどの力を持っている。


有り余る魔力を使い、こんな田舎にせっせと通ってきているのは多分自分しか友達が居ないからであろう。


可哀想だし、ロアマリヤも友達だと思っているのでなにも言わないけど。


「どう思う」


「どうもこうも、酷いような、酷くないような?」


男に聞かれたが、あまりロアマリヤに関係のない話な気がする。


勝手に一人歩きしているだけだ。


この辺境では、遠すぎて遠い国のお話レベルだ。


「お前の香水でボロ儲けできるチャンスだ。というわけで。くれ」


「買ってくれるんならいいよ。お金落とすのならなんでもね」


次のテーマは小さな恋だ。


他のものも作りたくて、すでに制作の終わった香水のことに割く時間はない。


「ただの甘ったるい香水なんだろ?なにがそんなにあいつらに流行った?」


「うーん。多分香水を買った時についてくるメッセージカードがなにか関係してるのかも」


「メッセージカード?」


メッセージカードには、ラッキーカラーとか、恋に関するエピソード。


恋は云々の文章が添付しているのだ。


彼は話を聞くと、そんなものあったか?と言うので、あったんだよと言う。


占いも商売には密接に関わっている。


そういった意味では、香水に付加価値がついてしまったのだろう。


なにかあったとて、値をあげる真似もするつもりはない。


とにかく己はなにか作りたいだけなので、お金などにはあまり頓着しなかった。


あれは、お前が考えたのかと聞かれた。


「え?当たり前じゃん。この店は私だけしか居ないし」


「それにしては恋心に詳しすぎないか?」


「あー……ま、コツがあるの、コツが」


誤魔化しが下手だけど、言えることはないんでね。


無作法に、顔を横に向ける。


ナグレスはムスッとした顔で、また聞こうとする。


「もう、聞かないでってば。女には秘密にしたいものが一個や百個はあるんだから」


「お前にそんなものがあるのか?」


顔を近づけてくるナグレスは、グイッとこちらへ寄ることに、ビクッとなる。


「たく!もう、邪魔っ」


ロアマリヤは男の顔を魔法のスティックで当てて、遠ざける。


「やめろ、おれの顔に跡が付くだろうが」


「つけばいいんじゃない?それより、さっさと香水買っていって、帰れば」


ロアマリヤは香水を用意して、彼へ押し付ける。


押し付けられたものを手にして、男はそこから動こうとしない。


「なぁ。聞きたいことがあるんだが」


「ん?」


ナグレスは手に香水を持ったまま、椅子を出して勝手に座る。


いや、帰って欲しすぎて座らないで欲しいんだけど。


ロアマリヤは帰って欲しいという顔を浮かべているにも関わらず、全く動じない鋼のメンタルの持ち主。


凄いっていうか、無駄なメンタルである。


「男用の香水も作れよ。女だけは不公平だろうが」


「うーん。自分で作ればいいんじゃない?」


彼も薬屋として経営しているというのに。


己の手で掴み取れる筈。


手で顔を支えて、頬を持ち上げる仕草をしながら、告げた。


「男に男の香水作るのは、やる気が違う。喜ばれてもなぁ。女落とすのに使うってわかったら作りたくなくなる」


「それは女も同じ条件じゃ」


「女は違うだろ。いじらしく思う」


それは、彼の心の中の女性像が凝り固まってるのではないか。


「夢見すぎ」


何度も言うが、彼は幻想を抱き過ぎている。


「夢くらい見させて欲しい。だろ?想像ぐらいは、自分を思う女がせっせと香水を手に鏡の前にいると思うと、最高だ」


「へえええ」


棒読み。


「それで、おれの予定を聞きにきたりしてな」


「ほほお」


目を閉じて、聞き流す。


「で、何々で、何々な」


段々言葉を変換出来なくなってきた。


「いや、寝るなよ」


意識は暗く、沈む。


まるで木々に優しく引き込まれている感覚に、目を開ける。


そこは部屋だ。


一目でわかる。


もう何度も敬遠しているから。


ロアマリヤにはいつからか知らないが、いろんな世界を夢を通じて垣間見れるようになっていた。


トリガーは夢、寝る、意識。


本当にさまざまな世界を俯瞰でき、世界も場所も選べない。


上から目線という言葉があるが、本当にその目線だ。


今のところ女性ばかりだ。


そして、今も女性の部屋で散らかった中、服を選んでいた。


「遅刻遅刻、遅刻するっ」


四角いもの、スマホと呼ぶそれらによると、その媒体は時間や情報を瞬時に知れる便利なものだ。


ロアマリヤもなんとか魔法で再現しようと試みているが、まずは世界を回って色々設置しなければならないという厄介なクエストがあるので、今の所そうしなくてもいいところだけ試みている。


出たくなくて店に引きこもっているのに、出なくては完成しないものなど、作る気が失せる。


かなり偏屈だと自覚はしてるけどね。


遅刻と言って走る女の子の恋する姿をちゃんと記憶しておき、後々自身の商品へ転嫁させる。


取るわけじゃない、コピーさせてもらうだけ。


日記やポエムも、参考にさせてもらっている。


この世界の気持ちの表し方が、異世界ではかなり好評なだけだ。


別に盗作ではない。


ないったらない。


ただ、ただ単に参考というか、とにかくお手本にさせてもらっているだけなのである。


夢から覚めて早速フレグランスを調合して、メッセージカードを書く。


書けば書くほど量も増える。


それはそれでやる気もちょっとは違う。


薬師の彼は大人気と言っていたから、また買いに来るのだろう。


それを待つだけだ。


いつも受け身だけど、自分にはそういうのは肌に合わないし、都会に行く気はさらさら無い。


彼に精々売りに行ってもらうのが、関の山。


「恋の香水は恋を叶えるものじゃなくて、恋する人がつけて勇気をもらうってのがコンセプトなのに、たいそうな噂が触れ回ってるんだなぁ」


因みに起きている時にはいた男は、いつの間にか帰っていた。


いつものことなので、気にしたことはない。


いつも勝手に、来たり帰ったりする人だから。


ネリネリ練ったり、鼻で香りを調節している間にまたまた日を跨ぎ薬師が再来。


ナグレスは非常に上機嫌で挨拶してきた。


また買いに来たんだろうと、気だるげに迎える。


作っておいたよと言い、商品を指差す。


ロアマリヤの言葉に彼は商品棚を見て、増えたなと驚く。


まぁね。


しかも、瓶も瓶で可愛くした。


向こうの世界の雑貨屋を参考にしたのだ。


棚を見て回るナグレスを横目に、カードを作成。


見終わった漢がカードを見て、これがあのおまけかという。


首都ではオマケではなく、なぜかラッキーアイテムっぽく、扱われているというではないか。


「売れた?」


「売れた。すっげえ売れた」


「よかったね。新作作ったから好きに買ってって」


「それも買う。買うが。お前を誘いにきた」


「誘いに?どこに?」


「最近有名な黒糖を使ったお菓子の店」


「あー、黒糖ね。あれ、うちから出してる商品なんだよね」


思い出したことをいう。


「……はぁ??お前の店に黒糖なんかねえじゃねぇか」


と、指摘されるものの違うのだよそれが。


「裏メニュー的なやつ?」


あやふやな表現になるが。


肩を掴まれる。


「おれにも売れ!買う!高値で!」


「独占販売結んでるからしばらく無理」


「どこのやつだ!?あそこか?菓子売り出してるあそこなのか?」


鬼気迫る顔で問うから、頷く。


別に、言ってはいけないとかではないし。


「くっそー!おれが結びたかったっ」


「食べに行けば?いけば食べられるじゃん」


「お前と食いに行く」


立ち直ったナグレスが上を向く。


「あ、そういえばうちの保冷庫にあるよ。いくつもあるから食べていきなよ」


「……考えたらわかることだった。あるよな。独占販売先は大切にされるだろうよ」


肩を落とす。


多種多様な顔が見られて飽きない人だ。


「食う。お前はもう食ったよな」


「まぁね、というか、そのお菓子の監修私なんだよねぇ」


「はぁああ??」


もう頭が働かないのか、固まってしまう。


その後きっちり菓子を食べた彼は、美味い美味いと夢中で食べた。


「お前を連れて、男のおれでも入れるようにと画策したんだが」


「コンセプト的に男女入れるようにしたんだけど、まだ入りにくい?」


「甘いって時点でなぁ。ちょっとなあ」


「ふーん。じゃあ食べたくなったら私のうちに置いて行ったりして、お土産風にすれば?」


「土産!そうだな。お前そういや女だったな」


「中型瓶と大型瓶どっちで殴られたい」


そういやってなんだ。


生まれた時から女である。


魔法で仕上げた香水を全部購入したナグレスは、ロアマリヤにやっぱりどこか歩きたかったなと残念そうに最後呟いていた。



それから一ヶ月後、ナグレスが来るのが遅いと思って待っていた。


けれど、来ない。


安否が心配になってかなり久々に首都へ向かうことにした。


彼みたいに転移で移動できるわけがないので、馬車で地道に進む。


行き方が途中わからなくなって、迷ったりしたけどぐったりなりながら、なんとか辿り着く。


「ナグレス。薬師。えーっとお店の名前は」


思い出しながら人に聞く。


辿り着いた先で見たものは、女性や女子達の集団だった。


「いつになれば予約できるのよ」


「早く作ってよ」


「ですから製作者は私ではなくてですね」


見たことのない顔をする男が、女達に四苦八苦していた。


その普通ではない様子に驚きながら、そーっと見る。


彼が忙しそうならば、このまま会わずに帰るのも考えた方がいいかもしれない。


なんとか追い払われていく彼女達。


落ち着いたあとにすぐ店へ滑り込む。


このままでは閉店しかねない。


クローズにされる前にと彼へ向かう。


「すみません!本当にないですっ―え?」


追い払おうとするセリフは、驚きに変わる。


「ロアマリヤ!?」


「ナグレス。音信不通だから探しに来た。なにかトラブルにあってないかと思って」


「おれの、ため?か?」


ジーンと感動しているらしい男。


それよりも、と問いただす。


「さっき見たよ。あれ、なに?なんであんなにみんな騒いでるの?」


「……なんでもねえ」


「手伝うよ。私も薬師だし」


「いや、いい。近々行くけど今は折角物理的に苦労して来たんだし、ゆっくり過ごせ」


途端に、ぴしゃりと否定して謝絶する態度を取る。


「うーん、客層的に……私の香水が目当てだったりするの?」


「いやいや、本当になんの関係もない。気にするな」


「なんでそんなに嫌がるの?制作する場所を貸してくれたら作るのに」


「……まぁ、気にするなって。それよりも首都にせっかく来たしな。どっか案内してやる」


なにがなんでも作らせたくないみたい。


「困ってるでしょナグレス。作るってば」


「いらない」


「じゃあ、レンタルして制作するから、買ってよ」


「やめろ!」


怒鳴られてクビをかしげる。


別に怖くないし、彼が自分を嫌って言っているとは思えなかった。


異世界で色んな人を見てきた。


彼はいわゆるツンデレ状態に入ってそう。


「なんかごめん。でも力になりたいだけだし」


「メンタル強すぎて、こっちが泣きたくなったんだが?」


やめろ、の言葉でロアマリヤが出ていくと思っていたらしい。


問答の結果、彼は白状した。


都会に来たくないと言っていたロアマリヤを都会に来させてしまっただけではなく、薬を作らせるという負担をかけたくなかったという。


「やさしいね。ありがとう。でも友人のために人肌脱がしてよ」


「今はその友人っつーフレーズが、心に刺さる」


落ち込んでいたが、彼の作業する部屋を貸してもらい早速薬を作る。


恋の香水を。


大量増産のちに、メッセージカードを付与。


女性達は次の日も来たので、並ぶ香水に黄色い声をあげた。


「きゃあー!できてるわ!」


「昨日あんなに勿体ぶってたのに」


「製作者が昨日の騒動を見て、みなさんに作ってくれたんですよ」


「なんて優しい人なの?」


「ますます、ファンになってしまったわねえ」


「いい香り」


メッセージカードもちゃんと付属していることに、さらに騒ぐ面々。


滞在している間にも、せっせと作っては棚に並べて完売をさせる。


他の雑貨屋もうちに欲しいと望まれて、彼が相談しに来たので、通常の半分の量ならば下ろせると伝える。


こういうのを向こうでも、半ライスとか半チャーハンというらしいので、真似してみた。


小さな香水も、それはそれで小さくて可愛いと爆発的に売れているらしい。


可愛さに、どの世界の人も夢中になるのは変わらないなぁ。


「悪いな。奢るから好きなもんなんでも言えよ」


ナグレスは申し訳なさそうに言う。


「気にしないで。あのままだったら気になって仕方なかったし」


それでも、なにか言いたそうな顔をしている彼へ鞄に入れていたものを渡す。


「前に男用の香水をリクエストしてたでしょ。試しに作ってみた。でも、男性の恋心なんてわかんないから割とテキトー」


「え?おれの、ため?」


また感動に震える男は香水をかぐ。


「色んな香りがする」


「とある人が言っていた。男ゴコロは複雑なのだってさ」


「なんで知ってんの?すごくないかお前。恋心の全ての始祖なのか」


「始祖なら、私とっくに結婚してると思わない?」


その設定は今の状態に矛盾が生じるぞ。


「いい香りだ。おれのための配合だな」


「うん。さっぱりした香りで甘くないようにした。ナグレスは甘いの好きだけど普段使う時は身に纏いたいってわけじゃないでしょ?」


「ああ。食べるので間に合ってる」


彼は軽くそれを吹きつける。


目を閉じて、こちらを見やった。


「好きだ」


と、言われて目をぱちりとさせる。


「……え?わ、わたし?」


他にいるかもしれないと周りを見たけど二人きりで、部屋にいそうななにかもいない。


「おれの部屋に今の所虫はいない。虫だとしても告白しないぞ」


回り込まれて封じられてしまう。


さすが、こちらの思考を透かしてみせた。


手腕に顔を左右に動かして、指を己の方に向ける。


「お前だお前。恋の香水をもらっちゃ、男が廃る」


「渋い」


「しぶ?で、返事は?」


「返事?告白の?必要なの?」


言いっぱなしでおしまいな結末も、悪くないと思うんですがね。


「おれが毎回お前のところに行ってたのは、お前に会いに通ってた。下心大有りで薬師としての仕事なんて後回しだ」


「そうだったんだ?」


びっくりだ。


「ごめん」


「振られてるのかおれは」


勘違いした男は、テーブルに頭を打ちつける。


「違うよ。友達いないから寂しくて通ってると思い込んでて悪かったなって意味で、ごめんって意味」


「解説する必要どこにあったんだよ。返事しろよ返事。はー、焦った」


「う、うん。うーん。ううん?」


考えたけどやっぱりわからない。


わからないから、恋について知るために異世界で研修してるんだし。


「迷うならおれにしろよ。おれはお得だぞ。今なら時間内に受けたらお前の薬1.5倍で買取する。してやるよっ」


1.5は自腹切りすぎでは?


「落ち着いて。ダメとは言ってないしまだなにも言ってない。焦りすぎて変なこと言い出してるし」


「慰めるなよ。慰めるなら恋をくれ!」


もっともなことを言われてしまうと、困る。


「は!もしやこの香水が足りないのか」


「足りなくない足りなくない。それ以上したら酷い匂いになるからやめて」


近寄れなくなって、恋とかの前に風呂へ行ってもらうことになる。


とにかく落ち着いてと、代わりに茶を入れる。


「ほら、飲んで」


「ああ……いや、入れるよりも返事くれよ」


「答えを求めるのは早すぎ。こういうときって、返事いつでもいいからってのが普通じゃない?」


「無理。毎回店行く時も話す時も、返事くるかもって気になって、眠れなくなりそうで日常生活に支障をきたすから」


「正直だなぁ……本当に今がいいの?」


ファイナルな答えを聞くと、彼はごくりと茶を飲み込む。


「い、いいぞ。こい」


「わかった。いうね」


一呼吸置き、彼に向き合う。


「私には恋とか愛とかわからないけど、ナグレスは知ってるってことだよね?私のこと好きって、それは恋ってことでしょ。なら、私に教えて欲しい」


「いいのか?今のままを永続なのか」


「告白受けるよ」


言い放つと彼は五秒固まり、椅子を向こう側に弾き飛ばす勢いで立ち上がる。


ダーッと走って外へ出たと思えば、人の悲鳴が聞こえた。


「誰か噴水に飛び込んだぞおおおお!!」


「キャアアアアア!?」


人のざわめきが耳に到達した。


色々察したロアマリヤは、熱いお茶を用意するためにキッチンへ向かうことにした。

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